《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》113.勇者、開會式でやらかす

対校戦に參加するべく、俺たちは帝都闘技場にきている。

會場は円形をしている。

中央グラウンドを見下ろすように、観客席がぐるりと囲んでいる。

「ひとがいっぱいです! ゴミのようです! 薙ぎ払ってもいいです?」

「大人しくしてような」

俺たち4校は、グラウンド中央へと向かう。

4列となって並ぶ。

「こんなに観客がいるなんて……すごい……」

エリーゼが周囲を見渡して言う。

座席はすべて埋まっていた。

「まぁね! 僕ら帝都民にとって対校戦は年中行事の一つなのだよ!」

さらっ、と前髪を払いながら、アンチがかっこつけて言う。

「強者たる帝國學園が圧倒的な力を他國に見せつける姿は、帝都の民の格好の娯楽だからね!」

ふふん、と不敵に笑うアンチ。

「まけたらどーするです? はずかしーです?」

「負ける? 馬鹿なこと言うなよ君ぃ。僕たちは誇りある帝國學園の生徒だよ? 祖國と皇帝陛下のために優勝カップを持ち帰る、それが我らの義務だ。そうだろ?」

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「「「そのとーりっす! さすがアンチさん、かっけーっす!」」」

帝國學園の代表選手がアンチに尊敬のまなざしを向ける。

だが當のアンチは膝が震えていた。

「おまえも大変だね」

ガイアスが同のまなざしを向ける。

確かに観客はみな帝國の勝利を期待している。

そのプレッシャーはかなりのものだろう。

「ほんとよく逃げなかったね。すごいよおまえさ」

「バカにしているのかね? きみぃ?」

「いや、純粋に尊敬するよ。もしボクがおまえの立場だったら、プレッシャーに押し潰されてた。なかなかできることじゃない」

「そ、そ、そうかね! ま、まぁ當然さ! なにせ僕は誇りある皇帝の息子だからね!」

とても上機嫌なアンチ。

「ガイアス君、だったね。せいぜい無様に負けないよう頑張ることだよ」

すっ、とアンチが手を差しべる。

「ありがと。そっちも、まあ死なないように頑張ってね」

弟が手を握り合う。

新しい友達が出來たこともうれしかったけど、敵にリスペクトできるようになったことが、俺はうれしかった。

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「うんうん、長したな、弟よ」

「新たな友……新たなカップリング……良きです」

右隣には、ダンタリオン率いる東部連邦の生徒たちが並んでいる。

おかしなことに、全員が仮面とマントを付けていた。

「暑くないの、それ?」

心配……無用ですわ……これがないと……みんな暴れてしまいます……し」

「ふーん、隠蔽と制の魔法かかってるんだな」

「さすが……ユリウス様……慧眼で……ございます」

ダンタリオンたち、5人の生徒。

そのなかに、俺は【見覚えのある人】をみかけた。

「え、なんでおまえ、參加しているの?」

「……!」

東部連邦の生徒の一人が、びくんっ、とを震わせる。

だっ……! と逃げ出してしまった。

「いつからあいつ、おまえんとこの學園の生徒になったわけ?」

「さぁ……【彼】とは……クラスが……違います……ので」

ジッ、とダンタリオンが俺を見やる。

「最高峰の……隠蔽式……見破るとは……お見事です」

ややああって。

「お待たせしましたぁ! これより開會式を執り行いまぁす!」

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闘技場中に、聞き覚えのある聲が響く。

「あ、舊兄上です」

「ルシフェル理事長だろ。……けど、なんでここに?」

しゃれたスーツを著込んだやせ形の男が、俺たちの前に立っている。

朝禮臺のうえにたち、聲を張っている。

「司會進行は全學園の理事長である、この私、ルシフェルが行います」

なるほど、王立だけじゃなくて、帝國や東部連邦など複數の學園を経営しているのか、あのおっさん。

「さて私の可い生徒諸君、の 対校戦、長丁場にはなるけれど、楽しんでいってほしいですねぇ」

にやついた笑みを浮かべながら、ルシフェルが俺たちを見渡す。

「対校戦はたしかに、他校との真剣勝負ですがぁ。同時に、他校と流するまたとない貴重な機會でもあります。憎しみ爭うのではなく、競い合う中で新しい何かをぜひ見つけてくださぁい」

「舊兄上が、まともなこと言ってるです。うさんくさすぎて笑えるです」

ルシフェルはうんうん、とうなずく。

「以上を持って開會の宣言は終わりまぁす。それではぁエキシビションをはじめまぁす」

ぱちん、と指を鳴らす。

グラウンド中央に魔法陣がうかび、石畳のステージができあがる。

「エキシビションは各學園1人ずつを選出し行いまぁす。し時間をあげますので、誰を出すのか、よぉく考えて選んでくださいねぇい」

俺たちは集まって、誰が出るのか決める。

「さて、じゃあ誰にする、主將(キャプテン)?」

「ユリウスはんやな」「ユリウス君だね!」「あにうえです」「兄さんだね」

「え、俺?」

うんうん、とメンバーたちがうなずく。

「なんでまた俺なんだ?」

「戦略の一つだよ。兄さんが暴れて目立ってくれれば、他のメンバーも兄さん並みに強いんじゃないか、って相手にプレッシャーをかけることができる」

「なるほどなぁ。うちらまだユリウスはんたち並みには強ないけど、他校や観客は知らんもんな」

「そういうこと。相手が勝手にびびって自滅してくれたらの字。ということで、兄さんお願い」

「ん。了解だ、キャプテン」

他校も選出が終わり、エキシビションに參加するメンバーが中央に集まる。

「やぁユリウス君! やはり君が出てきたんだね!」

神聖皇國はカズマだった。

「いいのか、皇國のキャプテンが大勢の前で手のを見せて」

「もちろん! 手札を隠しておくのはに合わないからな!」

「じゃ、おまえが連れている、火神將(アシュラ)以外の霊も、ぜひ見せてほしいな」

カズマは目を丸くする。

そして、にかっと笑う。

「なんだ、見抜いていたのか! さすがだな! しかし無理な相談だ!」

「ほー、どうして?」

「こっちの力は【封印】がなされている! おれの一存では使えないのだ! すまないな!」

思った通り、カズマは火神將以外にも、何か別の力を持っている。

封印されている、か。

そうとうやばい力のようだ。

「で、帝國はアンチか。おまえもキャプテンなのに出てきていいのか?」

「し、仕方ないだろう! ほかのメンバーは君らの化けっぷりをしらんのだよ! 何も知らずこの場に立たせたら可哀想じゃないか!」

なんだ、やっぱりいいやつっぽいなこいつ。

「で、東部連邦は……新しいやつか」

「おれはカズマだ! キミは誰だっ?」

フードでをすっぽりと覆い、そのうえ仮面をかぶっているので、素がまるでわからない。

わけでもない。

目を凝らせばその下は普通に見える。

けどをじろじろ見たら失禮だからな。

「……>$”}L#$"」

「なるほど! 外國の方だな! わかった!」

「いやいやいや! なに言ってるんだいきみぃ! 明らかに人間の発する聲じゃなかったよぉ!? この世界の人間じゃないんじゃないのきみぃ!?」

「そのとおりだな! おれもだ!」

「おう、よくわかったじゃん」

「もういやだこの大會ぃいいいいい!」

ルシフェルは俺たちの前にやって來る。

「それではエキシビションを開始しまぁす! 種目は【結晶割り】でぇす!」

魔法陣が浮かび上がり、俺たちの前に結晶の板が出現する。

高さは5メートルで、厚さは1メートルほどの板だ。

「皆さんにはこれを破壊してもらいまぁす。ただし素手です」

「いやちょっとまちたまえぇえええええええええええ!」

抗議の聲を上げたのは、アンチだけだった。

「り、理事長! 正気かねぇ!? こんなもん人間が壊せるわけないだろぉおおお!?」

「だ、そうですが……どうです君たち?」

理事長が俺らを見てくる。

「壊せるぞ!」

「え、普通じゃない?」

「……L#{"L`$"

「いつから対校戦は人外たちのお祭りになったのかねぇえええ!」

にやにや、笑いながら、學園長が言う。

「辭退はけ付けますよぉ? エキシビションです、ポイントには加算されませんしね」

「ば、バカ言っては困る! 僕が逃げたらチームや祖國に申し訳が立たないじゃないか!」

アンチが歯噛みしていう。

それでも闘志の炎はついえていなかった。

俺はこういう、頑張っているやつが好きだ。

それに彼は弟の友達だからな。

「アンチよ。右下らへん毆ってみな?」

「は? いきなりなにかねきみ?」

「まあまあ、素直に言うこと聞いておけって」

首をかしげながら、アンチは結晶の板の前に立つ。

「……逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ! 僕は、いろんなものを背負っているんだ!」

「それではまずは、帝國學園のアンチ君から! どうぞ!」

「こうなればやけだぁあああ! うぉおおおお!」

ぎり、と拳を握りしめて、俺の言った通りの場所を毆る。

……ぺちん。

「へろへろパンチです? これで終わりです?」

「いや、そこは……」

ばき、ばきばき!

「へ?」

バキバキバキバキバキバキバキバキ!

アンチが毆った場所を中心として、結晶の板に、ひびがっていく。

そして、砕け散った。

「な、なんだってぇええええ!?」

「「「うぉおおおおお!」」」

毆ったアンチが、誰よりも驚いていた。

観客たちは歓聲を上げる。

「さすがアンチさん!」「やっぱおれたちの頼れるリーダーだぜ!」

「は、はは……え、どういうこと?」

一方でカズマは、こくりとうなずく。

「見事だ! 【龍(りゅうけつ)】をつくとは!」

「な、なんだいそれは……?」

「萬には必ず、気脈の集まる中心點がある! そこをつけば壊れるという弱點、それが龍だ! しかし武の達人でなければ見えてこないはず! つまりアンチ君、君は素晴らしい武蕓家ということだろう!」

「いや、いやいやいや! 知らないよなにそれ!?」

「謙遜するな! うむ! やはり代表選手! 一筋縄ではいかないな!」

「なんか誤解されてるんだけどぉおおおお!?」

一方で、俺はルシフェルを見て言う。

「これ不正にるのか?」

「とんでもなぁい、いいですかぁ、重要なこと言いますよぉ」

にやにやと笑いながら理事長が答える。

「この大會、不正が発覚すれば敗退となりまぁす」

「な、なにを當たり前のことを言ってるのかね?」

アンチが困顔で言う。

「いや、違うぞ。アンチ、こいつはこう言っているんだ。ばれなきゃ何してもいいってな」

不正である明確な証拠を提示できなければ、それは是とされるということだ。

「しかも不正であるかどうかのジャッジは理事長様がやるときた。がばがば判定もいいところだよ」

「ま、解釈はお任せしますよぉ。さて! では次に、神聖皇國のカズマ君!」

「うむ!」

ばっ! とカズマが上著を投げ捨て、上半になる。

鍛え上げられた筋があらわになる。

「な、なんてすごい! まるで鋼じゃないかねぇ!」

カズマは拳を握り、結晶の前に立つ。

「はぁああ! ふぅんぬ!」

などを考慮しない、純粋な突き。

ドガん!

「なんだ、々に砕け散ってない……って、えええええ!? な、なんだねこれはぁ!」

分厚い結晶の中央に、こぶし大のが開いている。

それは向こうまで完全に貫通していた。

「ただ毆っただけでこの厚さの板をぶちぬくか。やるな」

「ありがとう、ユリウス君!」

「うひぃいいいいいい! 死ぬ死ぬ死ぬぅううううう! 僕、素手でやりあうとしても絶対こいつとはやらないからねえええええ!」

カズマの次に、東部連邦の生徒が結晶の前に立つ。

「続いて東部連邦、【バァル】選手!」

「バァル、ねえ。悪魔か、こいつも」

姿を隠しても、隠しきれないまがまがしさは、やはり悪魔だったか。

「ど、どうせ君も派手にぶっ壊すのだろう!? わかってるんだからねぇ!」

「……<P$"#

ぴた、とバァルが表面にれる。

それだけだった。

ドロリ、と分厚い結晶が溶けて、蒸発したのだ。

「ほげぇええええええ! 溶けたぁあああ!? ま、魔法!?」

「いや、違うな。あれは質だろう」

俺はバァルの手を指し示す。

「毒手だ。った相手を完全に消し飛ばすほどの、強力な毒が手から分泌されている」

「おお、さすがユリウス君! 見事な分析力だな!」

「え、こわっ! いや怖いよ! なに笑ってるのあんた頭おかしいんじゃないのぉおおお!?」

バァルはきびすを返し、ステージから下りて行く。

一方で、観客たちは困していた。

「おいおいなんなんだ今年は?」

「神聖皇國も東部連邦も、今年は一味違うのか?」

「お、おちつけ……どうせあの二校がやばいだけだ。王立はいつもびりっけつ。あそこは弱いはず……」

帝都民が見守る中で、最後に俺の番になった。

「兄さん、わかってるよね!」

「おう、わかってるよ」

青い顔をして、アンチが言う。

「きみ、弟君も言ってるけど、ちゃんと手加減してくれたまえよ! 歴史ある闘技場を壊すんじゃあないぞ!」

「え、何言ってるんだ? ガイアスは手加減しろって言ってるんじゃあないぞ?」

へ、とアンチが目を丸くする。

俺は拳を握りしめて、飛び上がる。

「注文通り、加減なしだ」

真上から、結晶の板に、拳をたたき込んだ。

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

結晶を完全に砕し、闘技場のグラウンドを真っ二つに割る。

地割れを起こし、衝撃波は地表だけでなく、巖盤を貫き星の中心まで達した後、逆側の巖盤と地表を貫く。

「な、なんじゃこりゃああああ!」

アンチが目をむいてぶ。

を知らぬ観客と帝國學園のメンバーたちは、腰を抜かして、気絶している人もいた。

「おお、素晴らしい! 素手でこの星を逆側までぶち抜くなんて!」

「え、この星だけじゃないぞ? 直線狀に並び立つ衛星やら恒星やらなんやら、全部ぶち抜いたけど?」

「そんな馬鹿な話が……! あるものかぁあああああ!」

だがカズマとバァルは、心したようにつぶやく。

「見事だユリウス君!」

「……<$#」

「どうもどうも。あ、魔法で治すからゆるしてな」

創生魔法を使って、壊したものを全部治す。

観客はようやく、正気を取り戻したようだ。

「な、なんだったんだいまの……?」

「ゆ、夢? 現実?」

「一つ確かなことは、今年の大會のレベル、とんでもなく高いってことだぞ!」

うぉおおおおおお! と客席が沸き上がる。

「いやぁユリウス君! 実にいいね! 盛り上げ方を知しているよぉ!」

理事長が俺の腕に肩を回す。

耳元で、ささやくようにいう。

「その調子ですべてを壊してくれることを期待してるよぉ。【破壊者】の君?」

比喩ではなく、予言のことを指して言っているのだろう。

ジッ、と東部連邦の生徒バァルが、俺と理事長を見て、ぼそっとつぶやいた。

「……ルシ×ユリ。……ユリウスけもいい。……お姉さまに報告しよ」

かくして、エキシビションは終了。

対校戦は幕を開け、本戦が始まるのだった。

【※読者の皆様へ お願いがあります】

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