《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》114.勇者、他校の生徒と流を深める

対校戦、初日はエキシビションだけで終わった。

本番は明日以降。

俺たち代表選手は、運営側が用意した、宿屋に泊まることになった。

「みんなでお泊まり! たのしみですー!」

大天使(ミカエル)がケラケラと笑う。 そこそこ大きめの宿だ。

「むっ! そこにいるのはユリウス君ではないかっ?」

「おう、カズマ」

神聖皇國のメンバー5人も、ちょうどエントランスに來たところだった。

「なんだ、おまえらもこの宿なの?」

「うむ! 奇遇だな!」

そこへまた別の団が來る。

「げぇえ!」

「よ、アンチ。なんだ帝國もここに泊まるの?」

アンチたち帝國學園も全員そろっていた。

「わたくしたち……も……ですわ……」

東部連邦の一団もちょうど來たところだった。

どうやら対校戦に參加するメンバーは、みな同じ宿に泊まるらしい。

「じゃ、じゃあ僕らはこれで失禮するよ! いこうか我が帝國のメンバー諸君」

「「「「はーい、アンチ様ぁ!」」」」

帝國は男1、4という編らしい。

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「……まったく冗談じゃないよ! あんな化けと同じ宿なんて! 部屋は離れてるんだろうね!」

ブツブツ言いながら、アンチがチェックインを済ませる。

「おれたちもチェックインしよう! ユリウス君、あとで部屋に遊びに行っていいかい!」

「おう、いいぞ」

にかっ、と爽やかに笑って、神聖皇國のメンバーが付へ。

神聖皇國は男3、2という編

俺たち王立と同じだな。

「では……ユリウス様……失禮します……」

「おう、また明日なダンタリオン」

の後ろに、マントと仮面をつけた一団が続く。

型から察するに、東部連邦は男2、3のようだ。

「まったく、兄さんは。なに敵と仲良くしてるのさっ」

やれやれ、とガイアスが首を振る。

「いいじゃん、たしかに対戦相手ではあるけど同じ學生同士なんだしよ。仲良くしようぜ」

「兄さんはほんと、いつだってお気楽なんだから」

はぁ、とガイアスがため息をつく。

「まあ逆に言えば常に余裕があるっちゅーことやん。それだけ自分の力に自信があるんやろ? さすがユリウスはんやで♡」

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「がいあすまた嫉妬してるです。あにうえが他校の男とイチャイチャしてるのが許せないです?」

「うるさいよ、ミカ!」

「否定せぇへんちゅーことはそういうことなんやな」

「ちがうから! ほらチェックインするよ!」

付嬢さんに鍵を貰う。

どうやら男で2部屋に別れてるみたいだ。

「わーい! あにうえと一緒の部屋! わーい!」

「良かったね、ミカちゃんっ」

「はいです! えりちゃんの部屋にあとで遊びに行くですー!」

男子は1階、子は2階に部屋があるそうだ。

「なんや、あんま部屋數ないんかいな?」

「パンフレットによると大部屋がいつかあるみたいだよ。でも……全校分あるのかなぁ?」

子チームが宿のパンフを広げて首をかしげる。

「そんじゃ、いったん解散な」

「そうだね。夕飯食べてから作戦會議しよう」

俺たちは別れて、部屋に向かう。

「あにうえー、カードゲームしよゲームー」

「おう、いいぜ」

「もうっ、遊びに來たわけじゃないんだぞふたりとも! ……まったく」

ぶつぶつ文句言いながら、ガイアスが先頭を歩く。

「101。この部屋、だね」

「わーい、ぼくいちばーん!」

「あ、こら。鍵開けてないんだかられないだろ」

しかし、がちゃっ、とドアが開いた。

「え?」「あれ?」

「わーい! ……って、あれ? なんで他の人いるです?」

俺たちが部屋にる。

そこは大部屋になっていた。

部屋の裝は、極東でよく見る【和室】という作り。

畳が敷いてある部屋だ。

「やぁ王立のみんな! さっきぶりだな!」

「カズマ? って、あれおまえらもこの部屋なの?」

部屋の中央でお茶を飲んでいたカズマが、立ち上がって俺たちの元へ來る。

「うむ! どうやら男で2部屋しか取ってないみたいだぞ!」

「ひぃいいい! ガイアスぅうううう! 助けてくれぇええええ!」

アンチが泣きびながら、弟の腰にしがみつく。

「ど、どうしたのアンチ?」

「こんな化けどもと數日一緒の部屋なんて死んじゃう! 殺される! 食われるぅううう!」

「ははっ! 食べないぞ! 面白い冗談だな!」

泣きわめくアンチを見て、カズマが楽しそうに言う。

「しかし全校同じ部屋って……理事長はどういう意図で? ボクらは競い合う間柄なのに……」

「まあいいじゃん。あんま深く考えなくてよ。荷置こうぜ」

部屋自はかなり広い。

この部屋には現在、9人の男がいるのだが、別に狹いとじなかった。

王立:3人。

帝國:1人。

神聖皇國:3人。

東部連邦:2人。で、9人。

「がいあす、殘念です? 人の目あるです。あにうえと一緒にお布団れなくて……痛(いふぁ)い痛(いふぁ)い痛(いふぁ)い」

ぎゅーっとガイアスは義弟のほっぺをつねる。

「ま、とりあえず數日一緒だからよ、自己紹介しとこうぜ」

「うむ! ユリウス君の言うとおりだな!」

俺たちは中央に車座になって座る。

「そんじゃ王立から。俺はユリウス。こいつらは弟のガイアスと、ミカエル。全員1年生だ。よろしくな」

ぺこっ、と弟たちが頭を下げる。

神聖皇國のカズマ達の番になった。

「おれはテンリュー・カズマ! 皇國の4年生、生徒會長もやってるぞ!」

続いて小柄な男、アルトの番になる。

「ハクバ・アルトっす。1年生で生徒會のメンバーっす。よろっす」

その隣に座っていたのは、大柄の男だった。

坊主頭。

ガタイの良いカズマよりも、さらにデカい。

「おっさんが混じってるです?」

「おい! ミカ! 失禮だろ!」

しかし彼はカカッと笑う。

「よい、気にするな。なによく老け顔とみなにもからかわれるからなぁ」

坊主の男は渋い聲で言う。

「拙僧は【ゼンコージ・タケル】と申す。気軽にタケルと呼んでくれ。皇國の6年生だ」

「おう、タケルな。よろしく」

「よし、皇國はこれで全員だな! 次はアンチくん!」

だがアンチは俺たちの近くに居なかった。

部屋に隅っこに三角座りをして、ぶるぶると座っている。

「アンチ、怖がるなよ。みんな気さくないいやつっぽいぜ?」

「君は! 化け筆頭だから気づいてないだろうけど! 全員殘らず妙なプレッシャーを常に放っているんだよ!」

俺たちは首をかしげる。

別に闘気(オーラ)も魔力も解放してないつもりなのだが?

「ふむ、仕方あるまいて。これだけの猛者どもが一堂に集まっているのだ。常人では萎してしまうのだろう」

「え、なんだアンチびびってるのか?」

むかっ、とアンチが顔をしかめる。

「だ、誰がびびってるものかね! 僕は誇り高き皇帝の息子だよ!」

立ち上がり、ずんずんとこちらにやってくるアンチ。

銀の長い髪を、さらっと手ですきながら言う。

「僕はアンチ=フォン=マデューカス! 皇帝の息子で帝國學園の唯一の男メンバーだよ! 諸君、お手らかにね」

ふっ、とかっこつけたあと、また隅っこに移して座った。

「なんだよ、こっちで一緒に座ろうぜ」

「遠慮しておくよ。命がいくつあっても足り……じゃなくて! 上流階級は庶民と同席しないのだからね!」

「アンチ、すっかりいじられ突っ込みポジションです? がいあすは解雇です?」

「何の話してるんだよミカ……」

さて。

殘りは東部連邦の2人だけとなった。

「そんじゃ、最後に東部のふたりも自己紹介してくれよ」

俺はマントの男たちに聲をかける。

「うわー…… 兄さん普通に聲かけてる……さすがの空気の読めなさ……」

「さすがあにうえ! 怖じしないすごいです!」

ふたりとも部屋の中だというのに、マントと仮面をかぶったままだしな。

「「…………」」

仮面の男達は、黙ったままだった。

「君ぃいいい! やめておきたまえよぉおお! 怒らせて皆殺しにされたらどうするのかねぇええ!」

仮面の男がアンチを見やる。

「ひぃいいい! お助けぇえええ! ディスってないですぅうう! 食わないでぇえええ!」

そして……仮面の男は、言う。

「でひゃひゃひゃひゃ! なーにびびってるんだよぉ! くわねーっつーの!」

仮面をつけたままでわかりにくいが、どうやら笑っているようだった。

「わりーな皆の衆。びびらせちまってよぉ」

ぺこっ、と仮面の男が頭を下げる。

隣に座っている、小柄な方の仮面の男はそのままだ。

「おら、おめーも謝れ」

「…………」

「っちぇー、相変わらず想のないがきんちょだぜ」

どうやら思ったよりも、軽いノリの男のようだった。

「俺らは名乗ったんだから、おまえも名前教えてくれよ」

「お、そーだったな。オレ様は【ザガン】! 東部連邦の3年生だ」

仮面をつけたまま、ザガンは自分を指で指す。

「気軽に【ザガン君♡】って呼んでいいぜ。ただし子限定だけどな、でひゃひゃひゃひゃ!」

「ザガンよ。おまえも悪魔だろ?」

「あら、なんだもーバレてるの? あとで実は悪魔なんでーす! どうだーって驚かせよーって思ったのによー」

ちぇー、っとザガンは頭の後ろで腕を組む。

「いぃいいいい今なんか聞き捨てならないことを言わなかったかいきみぃいいい!?」

アンチが震えながら言う。

「おうよ、オレ様はザガン。ソロモンの悪魔。そんでこっちのちびっ子は【アモン】。1年生で同じく悪魔な」

「…………」

アンチは白目をむいて、ぶくぶくと口から泡を吹いて、気絶した。

「大変だ! 醫務室に運ばねば!」

カズマが真っ先に立ち上がり、アンチを抱きかかえて、部屋を出て行った。

「しっかしウワサにきいてたとーりだぜ。ユリウスだっけか? よくこの式付與されたマントと仮面をかぶってても、悪魔ってみぬいたよなー」

ザガンが俺の方を向いて、心したようにつぶやく。

「え、普通にわかるだろ。なぁ?」

俺以外のメンツは、首を橫に振る。

「ま、いーや。うちのボスもどうせユリウスには悪魔だってバレるだろうからって言われてたしよ。ま、お手らかに頼むぜ?」

にゅっ、とザガンがマントから手をばしてくる。

「おう、よろしくな」

がしっ、と俺たちは手を握る。

こうして、対校戦の代表選手、男メンバーと顔を合わせた。

王立:俺、ガイアス、ミカエル。

帝國:アンチ。

神聖皇國:カズマ、アルト、タケル。

東部連邦:ザガン、アモン。

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