《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》123.勇者、ダンタリオンと戦う

俺たち王立學園メンバーは、対校戦第2回戦、【トライアスロン】に參加していた。

遠泳はガイアスが圧勝。

続く長距離走は、サクラが參加している。

俺はトライアスロン、最後の競技である、長距離飛行にエントリーしていた。

「しかしでかい樹だなぁ」

対校戦參加者たちがいるのは、とある森のなか。

【奈落の森】と呼ばれる、魔の蔓延る深い森。

常に夜みたいなそこには、一か所、ぽっかりと開けた場所がある。

そこにそびえたつのが、この見上げるほどの巨大な樹だ。

「理事長もふざけてるのかね! こぉんなありえないほど巨大な樹のてっぺんまで登れなんて! どうかしているよ!」

長距離飛行に參加するのは、王立は俺、帝國はアンチ、皇國はツカサ(子生徒)。

「【神樹】という……樹のようですよ……ユリウス様」

そして東部連邦は、ダンタリオンが參加するそうだ。

「腐腐腐……ユリウス様。先程の遠泳……ガイアス様のご活躍……ご覧になりましたか?」

「いや、容までは。あいつがトップだったってことは聞いたな」

「見ますか……とうさ……映像を録畫……してましたので」

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「おい君、今盜撮って言わなかったかね!?」

「おう、悪いな。ちょい見せて」

ダンタリオンが水晶玉を取り出す。

さきほどの遠泳での試合が映像として記録されていた。

「50パーセントの霊裝を使えるようになったのか。うんうん、いいじだ」

「いやちょっと!? 冷靜過ぎないかいきみ!? キミの弟海を氷河に変えてたよ!?」

「え、それくらい普通にできるだろ?」

「一般人はそんなことできないのだよぉおお!」

ぶアンチの一方で、ダンタリオンは言う。

「見事な……主従の……絆でした。セイ×ガイ……良いカップリング……さっそく執筆を……せねば」

「し、執筆って……小説でも書いてるのかね?」

「ええ……たしなむ程度ですが……腐腐腐……ユリ×アン……アン×ガイ……対校戦は……おかずたくさんで……妄想が……はかどります」

「ちょっと!? 小説の中で僕はどうなっているのかね!?」

そんなふうに和やかに會話していると、理事長のアナウンスが流れる。

『そろそろ長距離走を終えた選手たちが來ますよぉ。長距離飛行に參加する生徒は神樹の前のスタートラインに並んでくださぁい』

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アンチは手に箒を持っている。

「君たち箒もなしにどうやって空を飛ぶのかね?」

「え、つかわなくても飛べるだろ、なぁ」

こくこく、と殘り二人がうなずく。

「いつから対校戦は怪大運會になったのかねぇえええ!?」

ややあって、奈落の森を抜けて、選手たちがやってくる。

『トップは神聖皇國。王立、帝國、東部連邦の順ですねぇ』

カズマが炎の噴を利用し、俺たちの元へ一番にやって來る。

『長距離走は森のなかに出る魔をどう対処するかがポイントでしたぁ。カズマくんは氷漬けになった海とアスモデウス選手の解凍を行ったというハンディがあるにもかかわらず1位、見事ですねぇ』

カズマはツカサにタスキをわたす。

は風をって、神樹の頂上を目指す。

「やるな、カズマ。救助しても余裕なんて」

「ありがとう……ございます……彼を救って……くれて」

ニカっと笑ってカズマが言う。

「気にするな! 誰であろうと困っている人は助ける! それが強さを手にしたものの責務だからな!」

続いてサクラが、息を切らしながら來る。

真後ろにザガン、帝國の子生徒と、ほぼ同じくらいでやってきた。

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「すまん、ユリウスはん。従魔に乗るの止されとるさかい、遅れてもうた」

「十分だ。サンキューな」

一方で帝國のアンチが、子生徒の頭をなでる。

「よくやったよ! このメンツで!」

「ありがとうございます、アンチ様!」

「しかしどうやって、魔の森を抜けてきたのかね?」

「ザガンくんに助けてもらいました!」

「そ、そうなのかね。すまない、敵同士だというのに、部下を助けてくれて」

仮面をかぶった東部連邦の男、ザガンが肩をゆらす。

「いいってことよ~。オレ様子のナイト様だからよ~。困っている子はほっとけないのさ」

さて、全校が出そろい、最後の長距離飛行が開始される。

アンチは箒にのって飛び上がっていく。

俺はグッとしゃがみこんで、真上に飛び上がる。

「それどうやってるのかね!?」

「え、普通にジャンプしてるんだけど?」

「ふつうひとっとびで數十メートルを飛べないのだよ!」

俺はアンチを追い抜こうとしたそのときだ。

「あぶねえぞ」

「は?」

アンチの首っこを摑んで、真橫に放り投げる。

「ほげぇえええええ!」

風の吹かれた木の葉のように、アンチがすっ飛んでいく。

「僕を妨害しても無意味だろう!? 化け同士でバトルしたまえ!」

「え、別に妨害じゃないぞ」

下の方から、何かがびてくる。

それはよく見れば【糸】であることがわかった。

「なっ!? なんだねこの大量の糸はぁあああ!?」

津波のように、莫大な量の糸がしたからびてくる。

すさまじい勢いのそれを、俺は腕を振って弾く。

弾かれた糸は上空へとのび、神聖皇國のツカサを捕縛しようとしていた。

「た、たすかったよユリウス……今頃捕まるところだった……」

「いや、安心するのは早いな」

「へ?」

下からまた大量の糸が押し寄せてくる。

俺が空気の足場を作って、橫に避ける。

「ひぃいいい! お、追ってきたぁあああああ!?」

大蛇のようにうねりながら、糸の大群が俺に押し寄せてくる。

空中を縦橫無盡に駆け抜けるが、糸はそれに追隨してくる。

「魔法で焼けばいいのではないかね!?」

「いや、それは可哀想だろ」

「かわ……? なにを言ってるのだねこんなときに!?」

俺はとんっ……と空中でひるがえると、糸の群れの上に立つ。

「こ、これは……糸ではない! 髪のではないかね!?」

大量の髪のが俺たちを捕縛しようと襲いかかる。

「アンチ、先行ってろ」

彼のホウキを摑んで、上空へと放り投げる。

「ほげぇええええええええ!」

襲いかかる髪のの群れ。

俺はそのきを全て見切って避け、【者】に向かって走る。

中心部にいる【彼】めがけて、俺は掌底を放つ。

だが彼を守るように、髪ので作った柱が出現。

「かまわん」

俺はそのまま柱をたたく。

その衝撃が向こうがわに伝わって、彼がすっ飛んでいく。

ばらっ……と髪のがほどける。

俺は空中に立ち、正面にいる彼を見やる。

「やるじゃん、ダンタリオン」

東部連邦の主將、ダンタリオンだ。

地面につくほどの長い黒髪で、顔を完全に覆っている。

「さすがです……ユリウス様……わたくしの……【黒髪(こくはつ)呪法】を……回避するとは……」

「髪の……いや、糸狀のものを自在にる呪いか。いいだな」

「見事……看破なされていたのですね……さすがです……」

ジッ……と髪のごしに、ダンタリオンが俺を見てくる。

「解せません……どうして……炎で……髪を……焼かなかった……のですか?」

「え、そんなのおまえの髪が傷んだら可哀想だからに決まってるだろ? の子は髪が命なんだから」

ぴくっ、と彼かす。

「わたくしを……と……言って……くれるのです……ね」

「當たり前じゃん。綺麗な黒髪チリチリになったら嫌だろ、子として」

しばし、ダンタリオンはかなかった。

「うれしい……です。ですが……」

ずぉっ……! と彼から、莫大なオーラが噴出する。

黒いをしたこれは、【呪力】。

悪魔の力の源だ。

「手を抜かれるのは……不本意です。正々堂々……真剣な勝負で……決著を……つけたいのです」

俺は笑って、構えを取る。

「おまえみたいな真っ直ぐなヤツ、大好きだぜ?」

「それは……ガイアス様への……遠回しの……の告白でしょうか……?」

「おうよ。あいつも大好きだぜ」

「腐腐……ごちそう……さまです。では……參る!」

ダンタリオンの髪のびる。

は宙に浮いている。

だが飛んでいるのではない。

よく見ればピンと張った髪のの上に立っていることがわかる。

の髪のび、呪力を帯びて、津波のように俺の元へ押し寄せてくる。

「に、逃げるんだよぉおおユリウスぅうううう! 握りつぶされて死んでしまうぞおおお!」

俺は構えを取る。

そして押し寄せる髪のの津波めがけて、毆り飛ばす。

その直後、ばらっ……と束ねていた髪のがほどける。

「なにぃいいい!? な、なんだ!? なにがおきたのかね!?」

「え、髪の作している呪いだけを消し飛ばしただけだぞ?」

髪のが自分の意思を持っているのではない。

かしているのはダンタリオンであり、もっと言えば彼は呪いを使って髪をかしていた。

ならばピンポイントで呪いだけを破壊すれば、髪のはコントロールを失ってばらけるわけだ。

「見事です……ユリウス様。髪のを傷つけず……呪いだけを狙い撃つとは……」

「そんなさらさらで綺麗な髪の傷つけるのは忍びないから」

またも、ダンタリオンは直する。

「どったの?」

「だ、だめ……です。そんな……他のを……ほめるなんて。あなたには……ガイアス様という……お相手が……いるではない……ですか……」

「ん? どういうことなん?」

さっぱりわからん。

「お世辭で……きれいとか……いわなくて……結構……ということ……です」

「いや、別にお世辭でいった訳じゃあないんだが。おまえ普通に綺麗だしさ。見栄えだけじゃなくて、その正々堂々とした姿勢はマジで好きだぜ」

ダンタリオンが、うつむく。

「ユリウス様……そんな……優しい言葉……やめて……ください……」

涙聲になっていた。

心なしか、が震えている。

「申し訳……ないです。だって……わたくしの……本は……醜い……から……」

「だからどうした。俺は別におまえの見た目だけでうんぬんいってる訳じゃあねえぞ」

はうつむいて、こういう。

「では……【本當の姿】を……おみせしましょう」

が両手をの前で合わせる。

「な、何をしてるのだね彼は」

「アンチ、今すぐ逃げろ」

「え?」

「死ぬぞ?」

「ひぃいいいいいい!」

は手で印を作る。

「【本能覚醒】」

その瞬間だった。

ドゴォオオオオオオオオオオオン!

側から発する。

「ひぃいい!? じ、自殺!?」

「違う、めていた呪力を解放したんだ」

「もっとわかりやすい言葉で言いたまえよ!?」

「本當の【悪魔の姿】になったんだよ」

莫大な量の呪力は、やがてひとつの形を取る。

「きょ、巨大な【蜘蛛(くも)】!? なんだねこの化けはぁああああああ!?」

眼前には見上げるほどの大きさの蜘蛛がいる。

黒と紫のじった、毒々しい

8本の巨大な手足。

その顔の部分には、ダンタリオンの腰から上があった。

「蜘蛛っていうより、蜘蛛(アラクネ)に近いな」

「ひぃいいい! 何だねこの醜悪な化けはぁ!」

ダンタリオンが、弱々しくつぶやく。

【これが……わたくしです……どうです……? 醜いでしょう……?】

俺はアンチのホウキの上に一瞬で移する。

「てい」

ドガァアアアアアアアアアアン!

頬をぶたれたアンチが、神樹に激突する。

結界で包んでおいたので、まあ大丈夫だろう。

「なにするんだね!? 死ぬかと思ったわ!」

の子に醜いとか化けとか言うな。かわいそうだろ?」

巨大な蜘蛛となったダンタリオンを見て、俺は言う。

「かっけーな、それ」

【う、うそ……うそです……うそうそうそです!】

部から、恐ろしい量の蜘蛛の糸が吐き出される。

それは神樹をあっと言うまにグルグル巻きにして、白い玉に変えてしまう。

じゅぅううう……と音を立てながら、神樹が腐っていく。

「うぎゃぁあ! とけてるぅうう!」

糸には特殊な呪いが込められているようだ。

巻き付かれた者を溶かす呪いだろう。

【こんな……恐ろしい化けなんですよ!? 怖いと、言ってください! 醜いと……罵ってください!】

「そんな思ってもないこと、言えねえよ」

は衝撃をけたようにたじろぐ。

【うそ……です。人間は……みんな……そうやって……最初は綺麗だとか言って……けど……後から正を知って……怖いって……言うんだ!】

吐き出された呪いの蜘蛛の糸が、雨のように降り注ぐ。

「うぎゃああ! あれに當たったらしぬぅうう! も、もうおしまいだぁああ!」

【そう! 悪魔の本気の呪いは、悪魔の呪いでしかふせげない!】

悲痛なるび聲をダンタリオンが言う。

【悪魔の気持ちは悪魔にしかわからないんです! わかるというのなら悪魔にでもなってみなさい!】

「そうだな。わかったよ」

【え……?】

俺は両手の前で印を組む。

【な、なにを……?】

「ところでダンタリオン。俺の前世が何だか知ってるだろ?」

蜘蛛の糸の雨が、もうあとすこしで俺たちに降り注ごうとする。

【勇者神ユージーン。人類史上、最強の勇者……でしょう?】

「ああやっぱ知ってるのな。じゃあ勇者(おれ)が誰から生まれたか知ってるか?」

ダンタリオンが困したように、首をかしげる。

「時間があるときにしっかり調べておきな。さて……」

俺のから、莫大な【呪力】が湧き出る。

【まさか……それは!?】

「【本能覚醒】」

その瞬間、俺のを呪力がほとばしる。

【悪魔の持つ呪いの力】が、俺のを包み込む。

ややあって、そこにいたのは、黒い鎧を纏った俺の姿だ。

【あ、ありない! 呪いの力は、悪魔にしか使えない猛毒! 人間ので無理に使おうとすれば即死ですよ!】

「あいにくと、俺の前世は特別製でね。さて……と」

俺は右手に魔剣を出現させる。

呪いの力を剣に込める。

降り注ぐ蜘蛛の糸の雨めがけて、剣を振るった。

ズバァアアアアアアアアアアアアアン!

漆黒の斬撃が宙を走り、蜘蛛の糸を消し飛ばす。

その衝撃で、ダンタリオンの蜘蛛のボディが霧散する。

くらり……とダンタリオンが落ちてくる。

「よっと」

が落ちてくる位置に、俺は移する。

そしてお姫様抱っこする。

「うそ……です。ありえま……せん。今のは……悪魔の……力。人間が……使えるわけが……ないのに」

「みんなが言ってるだろ、俺は化けなんだよ」

ニカッと笑って言う。

あながち間違えじゃないんだよなぁ、これ。

「おまえが自分を醜い化けだっていうなら、俺だって化けさ。おまえの辛い気持ちよくわかるよ」

強すぎる力は、時に人々を不安にさせる。

それゆえに迫害されたことだって、何度もあった。

「お前のつらさを全て理解はできない。けど……これだけは言えるよ」

俺は彼の顔に手をばす。

前髪を手で押しのける。

そこにあったのは、びっくりするくらいしく整った顔だ。

「髪は切った方がいい。そうすりゃ、しはみんなわかってくれるさ。おまえが本當に綺麗で、怖くないってよ」

じわ……とダンタリオンが目に涙をためる。

「そんなこと……生まれて……初めて……いわれました……」

「見る目のない連中もいたもんだなぁ」

えぐえぐ、とダンタリオンが涙を流す。

「試合終わったら床屋行こうぜ。嫌なら俺が後で切ってやるよ」

「……はい。お願い、します」

その後。

俺は彼と試合を続行する。

ツカサは蜘蛛の糸にからめとられて、地上へ落下していた。

アンチは涙を流しながらも、必死になって上を目指していた。

結果、俺が1位。

2位が東部連邦(ダンタリオン)。

3位帝國、4位神聖皇國という順位になったのだった。

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