《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》127.勇者、フェンシングに參加する

俺たちは対校戦2日目、午後の部【五種競技】に參加している。

闘技場のグラウンドにて。

『さぁ、白熱した試合が繰り広げられ來た五種競技ですがぁ、いよいよ最後の競技となりましたぁ』

理事長の聲とともに、グラウンド上空に映像が浮かび上がる。

『第2種目馬では、王立のサクラ選手が見事なのこなしをみせて1位。第3種目スキージャンプでは僅差でダンタリオン選手が1位に。第4種目フィギュアスケートではガイアス選手がとてもしい演技を披して1位となりましたねぇ』

5種のうち4つが、すでに終わっている。

五種競技での順位は、

1位王立、2位帝國、同列3位で東部連邦と神聖皇國となっている。

「あにうえー、帝國どうして2位ですー?」

そばに立っていた義弟ミカエルが、首をかしげていう。

「あいつら実技點はそんなだけど、蕓點でほぼ全部満點たたき出しているんだよ」

今回の五種競技には、力比べ以外の要素も加點対象になっている。

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アンチたち帝國は、実技點は完全に捨て、蕓點に心を注いでいた。

「帝國以外がバトルしている間、アンチたちは丁寧に演技して、蕓點をかせいでいたんだよ。逆にバトルに集中していたそのほかの學園は、蕓點がおろそかになっていたわけだ」

「えー、それ卑怯です?」

「卑怯なものか。自分の実力をきちんと把握して、勝てない部分では戦わず、自分たちが勝てる土俵でのみ勝負している。見事な戦略だと思うぞ」

アンチ達は確かに、戦う力という點においては、最も弱い。

しかし弱いからこそできる戦い方というものもあるのだ。

「よくわからないですが、あにうえの分析力がすげーってことだけはわかったです! さっすがあにうえ!」

そんなこんなあって、俺たちは最後の種目【フェンシング】に挑む。

『フェンシングはトーナメントでぇす。2-2に別れて戦ってもらいまぁす』

グラウンドには王立が俺。

神聖皇國がカズマ。

そして……。

「はは……終わった……さすがに、これはごまかしできないよね……」

しょぼくれた表のアンチが、俺たちの元へ近づいてくる。

「どうしたアンチ?」

「元気がないぞ! 腹が減ったのか!」

アンチは深々とため息をつく。

「君たち化け達と、真正面から戦わないとイケナイ局面に來てしまって、気が重いのだよ……はぁああああ……」

しかし、俺はこいつがすげえヤツだって思っている。

「よく逃げずに來たじゃんか。すげえよアンチ」

「うむ! その勇気、立派だぞ!」

俺とカズマがほめると、アンチは口元を緩ませる。

「え? そ、そうかぁい……? ま、まぁね! 僕は誇り高き皇帝の息子だからねッ! 逃げるぅ? ハッ! そんな父上に泥を塗るようなマネをするわけがないじゃあないか!」

バッ……! とアンチが長い髪を手で払って言う。

「「「「きゃー! アンチ様かっこいー!」」」」

帝國のメンバーも、そして観客達も、おしみない拍手をアンチに送る。

「アーンーチ!「アーンーチ!」「アーンーチ!」「アーンーチ!」

大歓聲に包まれながら、アンチは観客に手を振る。

「ああでもすまない……みんな……フェンシングではさすがにごまかしが効かないよ……。1対1のバトルだからね……すまない……奇跡でも起きない限り僕じゃあこの化け達に勝てないよ……」

しょぼくれているアンチの頭を、俺とカズマがよしよしとなでる。

『それでは組み合わせを発表しまぁす。第1試合は王立VS神聖皇國!』

「ありゃ、初っぱなカズマとかー」

「うむ! すごい楽しみだぞ、ユリウスくん!」

俺はわくわくしていた。

カズマとは一度手合わせしているが、剣を使ってのバトルは初めてだからな。

「ということは僕は東部連邦とかね……あそこも勝てる気がしないよ……ああ、棄権してくれないだろうか……いや、無理だよね……うんわかってるよ……」

アンチがブルーになっている。

『で第2試合なのですがぁ、帝國學園の不戦勝でぇす』

「はぁああああ!? ど、どういうことかね理事長!?」

アンチは目を丸くして、解説席に座っている理事長を見やる。

『東部連邦はアスモデウス選手が今日試合に參加してませぇん。ひとり足りない狀況なので、この試合、東部連邦は不參加。よって帝國は不戦勝ということでぇす』

そう言えばヒストリア、午後の試合に顔出してなかったな。

「と、ということはだよ……つまり、2位以上は確定ってこと……かね?」

『そういうことになりますねぇ。王立と神聖皇國の勝った方と戦ってもらうことにはなりますが』

アンチはポカンとした表で突っ立っている。

「やるじゃんアンチ」

「うむ! さすがだな! まさかこれも計算通りとは! 見事な戦略だ!」

俺とカズマが拍手する。

「え? え?」

アンチは困したように、首をかしげている。

「も、もちろんだよ! すべてはこの、アンチ=フォン=マデューカスの! 手のひらの上だったのさ!」

「「「うぉおおおおおお!」」」

客席から大歓聲が上がる。

「さすがですアンチ様!」

「神算鬼謀っぷり、見事です!」

「さすが皇帝の息子! アンチ様かっこいー!」

帝國のメンバー達も、アンチに惜しみない拍手を送る。

アンチはそれに答えるように、かっこつけたポーズをとる。

「……セーフ! 助かったぁ! 首の皮一枚繋がった……! ありがとう神様……!」

あいつも苦労しているみたいだな。

「さて……と。じゃあカズマ。やりますか」

「うむ!」

俺たちはグラウンドの中央へと移する。

「君たち! くれぐれも、わかってるよね!?」

アンチが不安げな表で言ってくる。

「わかってるって。手は抜かない、全力でだ」

「うむ! 死力を盡くして、君に挑ませてもらうよ、ユリウスくん!」

俺たちは拳を打ち付け合う。

「いや違うよ!? 手加減しろってことだよ!」

「「え、なんで……?」」

「君たちが全力出したら會場が! いや帝國が! いや大陸まるごと吹っ飛んでしまうからじゃあないか!」

「「大げさだなー」」

「ああもう嫌だこの無自覚化けたちぃいいいいいいい!」

まあ、何はともあれだ。

対校戦2日目、午後の部。

五種競技、最後の競技、フェンシング。

俺はカズマと、正々堂々と、一騎打ちに挑むのだった。

【※お知らせ】

新連載、始めました!

「騎士団長は最強に生まれ変わった~腑抜けたおっさんと蔑まれてきた俺、ダンジョン奧地で部下に裏切られ全てを失ったが、賢者の元で修業し最強となって自由に生きる」

【作品URL】

https://ncode.syosetu.com/n1466gm/

頑張って書いたので、よろしければぜひご覧ください!

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