《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》131.わがまま王の破滅~その6~

転生勇者ユリウスたちが、青春を謳歌している、一方その頃。

元王ヒストリアは、深夜、宿の屋上にいた。

「……なによあいつら、バカみたいにはしゃいじゃってさ。ほんと、バカ」

は三角座りをしながら、蟲から送り込まれてくる映像を見てつぶやく。

の使う蟲の呪いは、蟲の視覚を共有することで、遠くから様子を盜み見ることができるのだ。

宿の中の映像が、彼には見えている。

『なんだ、おまえらも騒ぎすぎて正座させられてるのか?』

『腐腐腐……ちょっと騒ぎすぎてしまいまして……♡』

『まあ気持ちはわかるぜ、楽しいよな』

『はい♡ ……あの、そのぉ……ユリウス様……』

『ん? どうした?』

『明日の休養日……お暇でしたら……その……わ、わたくしと、お、お出かけしませんかっ?』

『え、いいけど』

『本當ですかっ……!』

『『『やったー!』』』

『へぇ……兄さん、の子とデーとするんだ。ふぅ~~~~~~~~ん』

『ご心配さらず、ガイアス様♡ 正妻はあなた様だと理解していますので』

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『ボクは! 男だ!』

『『『またまた~』』』

『なんなんだよもぉーーーーー!』

……映像の中で、みんなが楽しそうに笑っている。

彼らはみな、二度とない青春を謳歌している。

「ハンッ。のんきなバカどもめ。アタシたちは聖杯を巡って戦っているライバルだって言うのにさ! 仲良くなるなんてほんとバカみたい!」

ぽた……ぽた……と頬を何かが伝っていた。

「ほんと……みんなバカばっか……なんでそんな……自分たちだけ……楽しそうにして……」

みんなが和気藹々としている姿を見て、ヒストリアはさめざめと泣く。

「なんで……アタシ……ひとりなの……? どうして……こんな……みじめなきもちになるのよぉ……」

ダンタリオンはさっき、泣いていたところを仲間や友達がめていた。

けれどヒストリアをめるものは、いない。

群れることを拒み、ダンタリオンからの救いの手をはねのけた。

自分が孤獨を選んだがゆえに、今があるのだ。

とどのつまり、自業自得と言えた。

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「もう……やだ……こんな気持ち……もう……やだ……やだよぉ……」

ひとりさみしい気持ちを抱えたまま、ヒストリアは涙を流す。

「たすけて……だれか……アタシを……助けてよぉ……」

と、そのときだった。

「ここにいたのか?」

誰かが、自分に聲をかけてくれた。

「ユリウス!?」

そこにいたのは、どんな不可能を可能にする男……では、なかった。

「ちが……誰よ、あんた……?」

金髪をポマードでオールバックにした、神経質そうな風貌の男だ。

を包み、からは十字架を下げている。

「マクスウェル・ハーバード。神聖皇國の校長、と言えばわかりやすいかね?」

「マクスウェル……皇國の、校長?」

フンッ……! と彼はヒストリアを見て鼻を鳴らす。

「醜い、実に醜い姿だな……悪魔め」

彼は十字架を前に掲げる。

「顕現せよ、神のを今ここに」

その瞬間、【巨大な何か】がマクスウェルの背後に現れる。

「な、なによそれ……!」

「そこの悪魔を焼き殺せ」

何かはぶと、聖なるを放出する。

それはヒストリアのをまるごと包み込んだ。

「うぎゃぁああああああああああ!」

悪魔のとなったヒストリアにとって、神聖なは毒でしかない。

即死できる攻撃なら、苦しまずにすんだ。

だがヒストリアのめた【アスモデウス】は強大な力を持つ悪魔。

この程度の攻撃なら、耐えられてしまう。

だがそれは痛みに耐があるというわけじゃない。

が! が焼ける! いやぁあああああああああああ!」

「チッ……。まだ死なぬのか。もっと攻撃を続けよ!」

がヒストリアのを焼く。

酸や毒を目から流し込まれているような痛みが走る。

「あが! あががががががががっ!」

はジュウジュウと音を立てながら爛れていく。

悪魔の再生能力が発するが、によってすぐまた細胞を殺される。

「ごろじで……ごろじでぇよぉおおおおおおおおお!」

耐えがたい痛みにヒストリアは泣きぶ。

だが死にたくとも、大悪魔(アスモデウス)の力が、彼を殺してくれない。

「チッ……! さっさと死ねこの悪魔! 貴様らはこの世に存在してはいけないのだ! 死ねぇええい!」

「そこまでにしてもらいましょぉかぁ~?」

ヒストリアの前に立ち塞がるのは、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる男……理事長ルシフェルだった。

「こんばんはマクスウェル校長ぉ?」

「チッ……! ルシフェル……貴様何のようだ?」

「あなたの行々目に余るのでしてねぇ。理事長が見てる前での殺傷行為は、反則負けになっちゃいますよぉ?」

「チッ……」

マクスウェルは攻撃をやめる。

「賢明な判斷だと思いますよぉ。そう、殺すのなら試合中、事故を裝って……ですよねぇ?」

にやぁ……と笑う理事長は、悪魔のような笑みを浮かべる。

「フンッ……! 図に乗るなよ。天界を追放されたた墮天使が、天より崇高な使命を與えられしこの私に命令するな」

ルシフェルは答えない。

ただ靜かに微笑んでいる。

「しかし地上でのワタクシは理事長で、あなたは神聖皇國の校長。どちらの立場が上ですかねぇ」

「……チッ」

不愉快そうにマクスウェルが舌打ちをする。

「まったくもって理解できん。こんな學生同士のお遊びごっこで聖杯の行く末を決めるなど!」

「まあそういうルールですからねぇ」

「まったく度しがたい! 大事な聖杯を巡る戦いだというのに! うちの學園のバカどもきたら! なにを正々堂々とルールに則って戦っているのだ!」

彼は怒りの表で、ガリガリと頭をかく。

「特にカズマのバカさ加減にはもううんざりだ! さっさと【神】の力を使ってあの【暴の黒悪魔】を殺せば良いものを……!」

「ユリウス君は、強いですよぉ。たとえあなたのを使ったとしてもねぇ」

「やかましい! クソッ……! 覚えてろよ……3日目は必ず……なにを使ってもあいつらに……」

ブツブツと文句を言いながら、ギルバードはその場を立ち去っていった。

「やれやれ、マクスウェルくんには困ったものですねぇ。……さて、と」

ゴミのように転がっているヒストリアを一瞥すると、理事長は立ち去ろうとする。

「ま、まってぇ~……」

涙を流しながら、ヒストリアが理事長のズボンにすがりつく。

「お願い……殺して……殺して……」

「おんやぁ? 再生が追いついてませんねぇ。神聖なを浴びせ続けたからでしょうか? 人間の形を保ってませんねぇ」

爛れた皮によって、ヒストリアはまるで汚泥の中から生まれ出た化けのようになっていた。

「殘念ながらワタクシ、博主義者でしてねぇ。人殺しとか勘弁なのですよぉ」

ニヤニヤ笑いながら言う男のセリフとは思えない。

だがヒストリアはもう、彼に縋るしかないのだ。

「殺して……」

「死は救済かもしれませんがぁ……君にはまだやってもらうことがあるんですよぉ。ねえ、フェレス?」

ヒストリアの背後に、東部連邦の校長、メフィスト・フェレスが立っている。

「ええ、その通りよ」

フェレス校長はヒールをならしながら、ヒストリアに近づく。

「哀れねヒストリア。悪魔の力で死ぬに死ねず、かといって神聖なを浴びたせいで、剝いだ皮に常に酸を浴びせられているような激痛が走っているのね」

くすくす、と笑いながら、フェレスがヒストリアの前に座る。

になったヒストリアの皮を、指でつんつんとつつく。

「うぎゃぁああああああああ!」

「あはっ♡ いい悲鳴あげるじゃなーい? ……さて、でもまだ貴に死なれては困るのよ……そこで」

ぱちんっ、と指を鳴らす。

フェレスの背後に、無數の異形の存在達が現れる。

「おやぁ、ソロモンの悪魔たちじゃあないですかぁ。こんなにたくさんどうするんですぅ?」

「今からこの子をにして、殘りの悪魔すべてをこのに投するのよ」

「そんな子としたらこの子が壊れてしまいませんかぁ?」

「良いのよ♡ こんなゴミ……壊れても全く問題ないのだから」

悪魔達がヒストリアのを取り囲む。

「やだ……やめて……もう……楽にして……」

恐怖と痛みで震えながら、ヒストリアが言う。

「はぁん♡ 最高よその顔……あなた、ほんと悪魔に好かれる才能だけは特級品ね」

フェレスは笑みを浮かべながら、顔を近づける。

「悪魔は人のが大好き。わがままなあなたの盡きないが悪魔を引き寄せた。つまり……」

ニコッと笑ってフェレスが言う。

「今までの尊大な振る舞いのツケが、回ってきたということよ♡」

ああ……とヒストリアは心の中で深く後悔する。

態度をあらためてこなかったから、今こうして自分は、報いをけているのだと。

「さぁ悪魔達。この子を食べなさい」

無數の悪魔達がヒストリアのボロボロになったっていく。

神を、悪魔達が犯していく。

耐えがたい苦痛の嵐に、ヒストリアという人格は飲み込まれていく。

「ガァアアアアアア! ガァアアアアアアアアアアアアアアアア!」

が、心が、魂が。

悪魔に汚染されて、別の存在へとシフトする。

「おんやぁ……これはこれは、また特大の悪魔が誕生しましたねぇ~」

できあがった【それ】を見て、ルシフェルはニヤニヤと笑う。

「ルール上、彼もまた対校戦のメンバーよね?」

「ええ……ルールには反してませんねぇ。まあ、もっとも……今の彼を見て、ヒストリアと気付くものは誰もいませんでしょうが」

ふふっ、とフェレスは微笑む。

「この化けを解き放ったときの、子供達の悲鳴が……ああん♡ 今から楽しみだわ~♡」

フェレスは化けとともに、夜の闇に消える。

あとにはルシフェルだけが殘された。

「皇國の校長の登場。ヒストリアの大悪魔化……。3日目も、荒れそうですねぇ」

理事長は眼下を見やる。

宿のなかでは、対校戦の參加者たちが正座を終えて、すやすやと安らかに眠っていた。

「明日はしっかりと英気を養って、楽しい思い出を作ってくださいねぇ。……これで、最期になるかもしれないのですから」

理事長は月を見上げて言う。

「一度しかない青春を、どうぞ最後まで味わってくださいよぉ、みなさん」

【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】

この話で第10章終了。

次回から第11章に突、また新しい展開へと突します。

「面白い!」

「続きが気になる!」

「対校戦みんながんばれ!」

と思ったら、

下の【☆☆☆☆☆】から作品への応援おねがいいたします!

面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、素直にじた気持ちで全然かまいません!!!!!!!!

なにとぞ、よろしくお願いします!

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