《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》140.王VSダンタリオン②

対校戦3日目、寶探し。

天空城の最上階には、二匹の大悪魔が相対していた。

ひとりは、無數の手を生やした漆黒の化け。ヒストリア。

ひとりは、下半が巨大蜘蛛の蜘蛛(アラクネ)。ダンタリオン。

「參ります……!」

ダンタリオンは蜘蛛の足に呪力(マイナスの闘気(オーラ))をためる。

ダンッ……! と地面を蹴り、一瞬でヒストリアとの距離を詰めた。

「ハァッ……!」

蜘蛛の8つ足がヒストリアに一斉に襲いかかる。

足の先には漆黒の刃がついていた。

が巨を塗って回避する、その背後でダンタリオンの足が振り下ろされる。

ガリッ……! と大きな音とともに、神意鉄(オリハルコン)の地面がえぐれていた。

『ふーん、呪力で膂力(パワー)を強化したのね。しかも、なんだかいつもよりもやる気に満ちてるじゃない』

校長にして大悪魔メフィスト・フェレスの聲が、いずこより聞こえる。

「わたくしは、負けるわけにはいかないのです……!」

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を翻し、ダンタリオンは足の數をさらに増やす。

そう、彼の下半は、よくみれば髪のの集合だった。

髪が変幻自在にき、あつまり、足となっていたのである。

髪のは一度ほどけると、今度は小さく、無數の足へと変化させる。

ダンタリオンはその巨からは想像できないほどの素早さで、ヒストリアに襲いかかる。

だが王は敵の攻撃をすべて目で捕らえ、ダンタリオンを凌駕する早さですべてを回避していく。

をよじり、反転させ、時には手で払う。

「くっ……! 手を使うまでもない、ということですか……!」

『當たり前じゃない。あんた程度の悪魔、わたしの最高傑作の敵じゃあないのよ』

ダンタリオンは必死になって攻撃を當てに行こうとする。

だがヒストリアは小柄な軀をいかして、そのすべてを避ける。

悪魔としての本能を覚醒させた今、その巨は完全に裏目に出ていた。

ヒストリアはダンタリオンの足をくぐりぬけて、土手っ腹の向かって蹴りを放つ。

「ガハッ……!」

見上げるほどの巨は、ヒストリアの一撃をけて面白いほど吹っ飛んだ。

そのまま場外へと落ちそうになる。

だが蜘蛛の糸をばして、なんとか屋上へと戻ってきた。

『もうやめない? どうあがいたってあんたに勝ち目はないわ』

「まだ……まだぁ……!」

ダンタリオンのとれる攻撃手段は限られている。

なおも蜘蛛の足による攻撃を続けるが、しかしヒストリアには通じない。

は転生勇者ユリウスや転生者カズマなど、他校の攻撃手(アタッカー)と比べれば直接的な戦闘力は低い。

不意打ちや諜報など、戦い以外の面で優れた力を発揮するのが、ダンタリオンという悪魔だ。

『手足を消し飛ばしなさい、ヒストリア』

手が広がる、と同時に消える。

ボッ……! とダンタリオンは蜘蛛の足のほとんどを失った。

敵の攻撃があまりに早すぎて、消えたように見えたのだ。

手の先は退魔の聖剣になっていた。

消し飛ばされたダンタリオンの蜘蛛の足は、再生しない。

「ぐッ……!」

ドシャッ、とダンタリオンは倒れ伏す。

「なんて……早さ……なの……」

『これでわかったでしょう? あなたとこの子じゃ、格が違うのよ』

ヒストリアがゆっくりと近づいてくる。

立ち上がろうと足を持ち上げるが、すぐさま手の一撃をけて、崩れ落ちる。

すぐ目の前までやってきて、這いつくばるダンタリオンを見下ろす。

『バカな悪魔。力もないくせにわたしの最高傑作に逆らうからいけないのよ』

は地べたに顔を伏せて、微だにしない。

ふんっ、とフェレスは馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

『もういいわ。首を撥ねなさい』

だが……フェレスが命令しても、ヒストリアはその場からかない。

否……。

『なっ!? どうしたのヒストリア! わたしの言うことが聞けないの!?』

「違いますわ、きたくても、けないのです……!」

ダンタリオンの目には闘志が宿っていた。

目に映る王の手足、には……目をこらさないと見えないほど、極細の【糸】がまとわりついている。

『蜘蛛の糸!?』

との戦闘中、地面に蜘蛛の糸でトラップを張っていたのだ。

相手に気づかれないよう、慎重に、かつスピーディに。

蜘蛛の糸を使ってヒストリアのを、死なないように配慮しながら、捕縛したのである。

『ばかなっ! 超高速でくヒストリアの相手をしながら、そんなな罠を晴れるわけがない! おまえにそんな技量はない!』

「ふふ……あなたは、生徒を侮りすぎです。知ってましたか? 人間は、常に長するんですよ?」

思い出すのは先日のデートでのこと。

ダンタリオンはふたりきりのとき、転生勇者(ユリウス)から戦いのアドバイスをもらっていたのだ。

彼は雑談のつもりだったが、ダンタリオンからすれば目から鱗が出るほどに、彼の指摘は正確なものだった。

ユリウスは超一流の戦いのプロフェッショナル、その彼からうけた指導は、驚異的なスピードで戦闘技能の向上を引き起こす。

『くっ……! ヒストリア! なにをぼさっとしているの! そんな糸なんてさっさと切り捨ててしまいなさい!』

だがけばくほど、蜘蛛の糸は敵をがんじがらめにする。

「おとなしくしなさい、ヒストリア。自力では決して出は不可能です」

複雑に絡み合った糸、素人がやれば首を絞めて相手を殺してしまっているだろう。

だがダンタリオンの持つ天の手先の用さは、相手を殺さず、しかし決して逃さぬ蜘蛛の巣を作り上げていた。

『貴様! 最初からヒストリアを殺す気はなかったのね!?』

「當たり前です!」

ダンタリオンは毅然と言い放つ。

「彼は大事なチームメイト、それに、の子です! 傷つけることなどもってのほか!」

どこかにいるだろう、フェレスをにらみつけながら彼が言う。

「フェレス校長! あなたは大事な仲間を傷つけたこと、わたくしは決して許しません!」

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別で連載中の「不遇職【鑑定士】が実は最強だった」の書籍版が発売されました!

落ちこぼれの兄が好きな方ならご満足いただける容となってますので、よろしければぜひお手に取ってくださると幸いです!

【作品URL】

https://ncode.syosetu.com/n5242fx/

「不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無雙する〜」

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