《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》141.王VSダンタリオン③

大悪魔ダンタリオンは、同じく悪魔化したヒストリアと相対している。

は蜘蛛の糸でがんじがらめになっており、き1つできない。

「ヒストリア、あなたをこのままユリウス様のもとへ屆けます。あの人なら解呪の方法を知っているやも知れませんゆえ」

「グガァアアアアアアアアア!」

黒い鎧に包まれたヒストリアは、野生のように暴れ回る。

「無駄です。その蜘蛛の糸は、わたくしが許可しない限り絶対に拘束が解けません」

『あら、そうなの。じゃま、こういうのはどうかしら……?』

フェレス校長の聲が響くと、ヒストリアの背後から生える手の1本が、するするとく。

「う、うう……」

「! え、エリーゼさん!?」

手の先にとらわれていたのは、王立の子メンバー・エルフのエリーゼだった。

『戦いが始まったときに、こういう展開を予見して人質を取っておいたのよ』

「なんて卑怯な……!」

『卑怯卑劣が悪魔の専売特許よ。あんたが清らかすぎるんだわ。……さて、わたしの言いたいことはわかるわね?』

Advertisement

ヒストリアが手をかし、エリーゼのを力強く締め付ける。

「ああっ……!」

「エリーゼさん!」

みしみし、とエリーゼの細いがきしむ。

『おとなしくヒストリアを解放しなさい。でないとあなたの大事な大事なお友達が、大変なことになっちゃうわよぉ~?』

ギリッ、とダンタリオンは歯がみする。

「…………」

躊躇は一瞬、すぐに蜘蛛の糸による拘束を解く。

「これで良いでしょう? わたくしのお友達を解放してくださいまし……」

ヒストリアは手の拘束を解いて、エリーゼは地面に崩れ落ちる。

「ゲホッ……! ゴホッ……! だ、ダンタリオンさん……」

『正直な子でほーんと助かるわぁ~……。バカがつくほど、ね』

ぎちぎち、と手の先端が毒ナイフへと変貌する。

「! まさか……!」

『ヒストリア……そのエルフを殺せ』

毒ナイフの手が鞭のようにしなると、エリーゼのへと襲いかかる。

ザシュッ……!

「だ、ダンタリオンさぁああああああああん!」

……エリーゼをかばうように、ダンタリオンが割ってったのだ。

毒ナイフをもろに、背中にける。

「ごふっ……!」

ダンタリオンは吐すると、その場に崩れ落ちる。

「そ、そんな……どうしてっ!?」

「……エリーゼ、さんは……大事な、大事な、おともだち、だから」

毒が回っているのか、みるみるダンタリオンの顔が悪くなっていく。

土気になると、ポロポロと細胞が崩れだした。

「待ってて! 今治癒魔法を!」

『あははっ! 無駄よ無駄無駄。相手は悪魔よ? 聖なるの治癒魔法が効くわけないでしょ?』

その通りだった、必死になってエリーゼが治癒を施しても、再生することはない。

『さ、ヒストリアちゃん。ふたりまとめて、食い殺しなさい♡』

「グルァアアアアアアアアアアア!」

ヒストリアは顎の骨を外し、巨大な竜の顎のごとく食いつこうとする。

ダンタリオンは最後の力を振り絞って、ヒストリアを正面から抱き留める。

ガブッ……! とダンタリオンの上半に、王が食いつく。

「ぐぁ……!」

苦痛で顔を歪めながらも、彼は王を、優しく包み込んだ。

「だめ、ですよ……ヒストリア。人殺しなんて、しちゃ……だめです」

よしよし、とダンタリオンは王の頭をなでる。

の友達を卑劣な手段で危険な目に遭わせ、殺そうとまでしたというのに。

その瞳に敵意も怒りもなく、そこにあったのは……優しい微笑みだった。

「人を殺してしまったら、ほんとうに、悪魔になってしまいます。だめですよ……あなたは、人間、なんだから……」

ヒストリアのきが一瞬止まる。

『何をしてるの、そいつだけでも食い殺しなさい』

「ぐ、が、ガァアアアアアアアア!」

ヒストリアはダンタリオンのをかみ砕く。

頭部と、から上だけになる。

それ以外は王に食われてしまった。

「ダンタリオンさん……!」

『殘さず食べなさい。そこのエルフ共々』

ヒストリアはダンタリオンを全て食べようとする。

エリーゼは彼をかばうように抱いて、背中を向ける。

「…………」

その姿を見て、王きを止めた。

「…………」

ダンッ……! と地を蹴ってその場から離する。

「たすかった……の?」

あとには瀕死のダンタリオンと、無傷のエリーゼだけが殘された。

「良かった……エリーゼさんが、無事で……」

の中でダンタリオンが微笑む。

毒にを犯されて、すでにボロボロと細胞が崩れだしていた。

「ダンタリオンさん! まってて……いまユリウスくんを呼ぶから!」

しかし、彼は首を振って言う。

「いいのです。このまま……逝かせて、ください」

その表には諦念が浮かんでいた。

エリーゼは目に涙をためて言う。

「そんな! どうして!?」

「悪魔の力を完全に食われたわたくしは、どうあがいても……消滅する運命にあるのです」

しかったダンタリオンのが、しわしわになっていく。

から生命力が抜け落ちていくのを、エリーゼはじた。

必死になって治癒を施すが、の消滅は止まらない。

「それに……こんな醜い姿……あの人に、見せたくないのです。最後まで、ユリウス様のなかで……わたくしは、綺麗なままで死にたいのです……」

「諦めちゃ駄目だよ! ユリウスくんと約束したんでしょ!? また一緒にデートするんだって!」

しわがれたダンタリオンの肩を摑んでゆするが、それでも彼は【駄目】だと悟った。

なぜならば、悪魔のの顔が、満ち足りたものだったから。

「ユリウス様に……會ったら、伝えてくださいまし。わたくしは……あなた様を、お慕い申しておりました……と」

「自分で言わなきゃだめだよ! ユリウスくんのことが好きなんでしょ!? もっともっとたくさんしたいことがあるんでしょ!?」

ダンタリオンはゆっくりと目を閉じる。

すでにからは完全に生命力が抜け落ちている。

「良い……のです。わたくしは……もう十分。ただ……そう、ですね。心殘りが、あるとしたら……」

小さく、彼がつぶやいた。

「もしも……わたくしが……生まれ変わったら……次は、お嫁さんに、してほしいなって……」

と、そのときだった。

「わかった」

ふわり、とダンタリオンを誰かが優しく抱き上げる。

「ユリウスくん!」「ユリウス……さま……」

彼は靜かに、の中で小さくなるダンタリオンを見下ろす。

「ああ……見ないで、ください……まし。こんな……醜い……すがた……」

「バカヤロウ。前も言ったろ。見た目なんて関係ない。おまえはどんな姿でも綺麗だよ」

ぎゅっ、とユリウスはダンタリオンを抱きしめる。

「ああ……わたくし、うれしくて……死んじゃいそう……です」

「それは困る。もっとずっとそばにいてもらいたいからな」

ユリウスはダンタリオンを地面に寢かせる。

「なにを……なさるの?」

「おまえとの約束を、今ここで果たす」

そう言って、ユリウスは大魔法を発させる。

しい彼を、死の運命から救うために。

    人が読んでいる<【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください