《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》143.勇者、弟にヤキモチをやかれる
俺がダンタリオンを転生させた後。
エリーゼ達とともに、王立の陣地へと戻ってきた。
王立は城の1階の奧に陣を張っている。
「エリーゼ! 良かった、兄さん間に合って……」
金髪の年ガイアスが、俺たちの元へと駆け寄ってきた。
だが途中でをこわばらせる。
「ユリウス様……もう歩けます。下ろしてくださいまし」
俺の腕の中で、ダンタリオンが顔を真っ赤にしている。
お姫様抱っこしている狀態だ。
「え、でもおまえ悪魔の力失ったから、飛行魔法も使えないだろ?」
「そ、それはそうなのですが……こんなところガイアス様に見られてしまったら……あっ」
「おう、弟よ。帰ってきたぜ」
「…………」
俺とエリーゼは飛行魔法を解いて、弟のもとへと向かう。
「が、ガイアス様ち、違うのです。誤解なのですっ」
わたわた、とダンタリオンが慌てている。
一方でガイアスはフリーズしたままだった。
「あちゃー、修羅場始まるんとちゃう?」
「……サクラ、黙ってて」
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弟の後ろで、陣地の防衛をしていたサクラが苦笑している。
じろじろ、とガイアスは俺とダンタリオンとを見やる。
「……なんでダンタリオンがいるの?」
「おう、話すと長くなるんだが、ダンタリオンが俺の嫁になった」
「ゆ、ユリウス様! もっと言葉を選んでくださいまし! ガイアス様を傷つけてしまいます!」
「え、どこに傷つける要素あるんだ? なあ弟よ」
ギリギリと歯がみしていた弟だったが、はぁ、と深々とガイアスがため息をつく。
「が、ガイアス様これには深いわけがっ」
「あ、うん……大丈夫。何かあったんだなってことはだいたい察したし、兄さんが超がつくほど無神経なのはわかってるからさ」
「あれ? なんだか弟にディスられてない、俺?」
「気のせいでしょ」
ややあって。
王立の陣地の中にて。
陣地は土蔵のような見た目をしている。
その周囲に何重にも結界が張ってある。
さらに防衛用としてサクラの使い魔が配備されていた。
ダンタリオンとヒストリアとの戦闘のてんまつを、かいつまんで説明する。
「ダンタリオンは悪魔の力を失ってるからさ。この狀態で城の中に放り出すことはできない。仲間と合流するまで陣地に置いてあげようって思ってな」
大悪魔の力を失った今の彼は、何の訓練もしていない一般人並の実力しか持っていないからな。
「なるほどなー、さすがユリウスはん。ライバルであろうと心配してあげる、優しいかたやなぁ」
ダンタリオンが肩をすぼめて、ペコペコと頭を下げる。
「皆さまにはご迷をおかけして、申し訳ございません……」
「ええよ。あんたが無事で良かったわ」
「ほんとほんと! ダンタリオンさんが今ここにこうしていられることが、すっごくうれしいよ!」
「お二人とも……」
子チームにめられ、ぐすぐすとダンタリオンが涙を流す。
一方で、ガイアスは複雑そうな顔をしていた。
「どうした、変な顔して」
「……いや、素直に喜びたいんだけど、素直に喜べなくって」
「おまえはたまに難しいこと言うなー」
「それで……兄さん。彼を助けたのはわかった。けど、なんでダンタリオンが嫁になるわけ?」
むすー、っと弟が頬を膨らませて言う。
俺の足を踏みつけて、ぐりぐりとしている。
「え、だって生まれ変わったら嫁にしてくれって頼まれたからさ」
「なにそれ。誰に対してもそんなこというの? 頼まれたら誰彼構わず嫁にするわけっ?」
「え、何お前怒ってるの?」
「怒ってない! ばかっ!」
やっぱり怒っている様子だった。
うーむ、何に怒ってるんだかさっぱりだ。
「だいたいさ、兄さんはどうしてすぐに新しい連れてくるんだよ。もっと近な人を大切にしなよ」
「みんな大切にしてるつもりだけど」
「じゃあボクのことも……もっと大切にしてよ」
むすっ、と不機嫌そうに頬を膨らませる。
何が不満なのかわからんが、俺は答える。
「おまえも大切にしてるってば」
「【も】って、なにさ【も】って。一番に大切にすべきは自分の弟だろ、親なんだからさ」
「まぁ……そりゃそうか。すまんな。おまえに斷りなく結婚の約束とかして」
たぶんそこに怒っているのだろう。
結婚って家族の了承もなしに進めていい話しじゃあないし。
「じゃあちょっと待ってな。ダンタリオンちょっと……あれ? どうした?」
黒髪のがその場に大の字になって倒れていた。
でへへ、とだらしのない笑みを浮かべて、鼻を出している。
「え、何やってるんだおまえ? だいじょうぶか、おーい?」
彼をよいしょと起こして、活をれる。
「ハッ! すみません、あまりに濃厚なイチャイチャっぷりに脳がクラッシュしてしまいまして……」
「イチャイチャ? 俺そんなことしてた?」
エリーゼもサクラも苦笑してる。
「まあいいや。ほら、來いよ。弟に紹介させてくれ」
「あ、ま、待ってくださいまし……お化粧もしていないのに……」
「え、そんなの必要ないだろ。十分綺麗だし。ほらいくぞ」
俺はダンタリオンの腕を引いて、弟のもとへ向かう。
彼はうつむいて、耳の先まで顔を赤くしていた。
「…………」
ギリギリギリ、とガイアスが歯ぎしりしている。
「そんなわけで、俺の嫁のダンタリオンだ。よろしくな」
「………………………………ヨロシク」
無機質な表でガイアスが言う。
「あ、あの……ガイアス様。決しておふたりの仲を邪魔するつもりは頭ございません。分はわきまえているつもりです」
しゅん、と申し訳なさそうなダンタリオン。
だがそれを見てガイアスは、はぁ、とため息をつく。
「別に分とか気にしないでいいよ」
「けど……」
「こうなった以上、あんたもボクの家族なんだからさ。そんな遠慮しなくていいって」
「ガイアス様……」
ふっ、とガイアスは微笑んでダンタリオンに言う。
「良かったじゃん、幸せになれて」
「はい……」
ぐすぐす、とダンタリオンが涙を流す。
「兄さん」
「おう」
「お、おお……おめ、おめで、とう……」
ぐぎぎぎ、となんだか歯がみしながら、ガイアスが祝福してくれた。
「おう、サンキューな。お前に認めてもらえてうれしいよ」
「……そ、そう。まあ、うん。良かったね。うん。はぁ~……………………」
どっと疲れが押し寄せたように、ガイアスがその場にしゃがみ込む。
「ガイアス様、ご安心ください。わたくし空気の読める嫁になるようつとめますので!」
「ありがと、この超鈍ばか兄さんをよろしくね」
「はい! この朽ち果てるまで、ユリウス様とガイアス様の仲を支える所存でございます!」
よくわからんが、弟が認めてくれたみたいで良かった良かった。
あとで義弟(ミカエル)にも報告しなくちゃな。
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