《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》152.學園長は悪だくみする

転生勇者ユリウスが、対校戦に挑もうとしている、一方その頃。

神聖皇國の校長【マクスウェル】は、VIP席にて観戦していた。

ここは各校の校長が、生徒達の活躍を見守るために個々にもうけられた、特別な席。

この部屋は観戦者である各校長が許可しない限り、誰もれない仕様となっている。

「くくく……まもなくだ。まもなく聖杯が手にる……!」

聖杯。それは莫大なエネルギーをめたマジックアイテムのこと。

対校戦の優勝校には聖杯を所有する権利が與えられる。

ユリウス達は聖杯が悪の手にわたらぬよう、対校戦に參加しているのだ。

「あのエネルギーが手にれば、我が國が世界を征服することなど容易いこと……くく、くはははは!」

そう……マクスウェルのような、聖杯を悪用する人から守るために……である。

皇國の生徒代表は、カズマをはじめとして全員が異世界からの転生者だ。

みな強力無比のチート能力を持っている。

他校の一般生徒を蹴散らし勝利することなど容易いこととたかをくくっていたのだが……。

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対戦相手にダンタリオンたち悪魔や、予想外の幸運を発揮した皇帝の息子アンチ、そして何より……。

馬鹿げた強さを持つ、王立學園のメンバー。

特に……あのユリウス=フォン=カーライルという、異次元の強さを持つ生徒の出現によって計畫が狂ってしまった。

イレギュラーはそれだけではない。

カズマは比類無き猛者ではあったものの、どこまでも善人だった。

そのせいで悪人たるマクスウェルの案に、ことごとく乗ってこなかった。

カズマは最強の駒であったが、しかしマクスウェルがれるものではなかった。

だから……呪いをかけのだ。

死の呪いを。

対象に呪いをかけ、命令に従わぬ場合には、必ず殺すというものだ。

「最初からこうすれば良かったのだ! くく……これで聖杯は我が手中に……!」

と、そのときだった。

「おやおや~。隨分とご機嫌ですねぇ、マクスウェル校長?」

いつの間にか部屋の中には奇妙な出で立ちの男が立っていた。

真っ白なスーツにシルクハット。

人を常に小馬鹿にしているような外見の男……。

「る、ルシフェル學園長殿……」

王立學園のトップにして、この対校戦の主催者のひとり。

ルシフェルだ。

「な、なぜここに!? わたししかれないはず……!」

「やれやれ、主催者が誰かお忘れですかぁ?」

何をしたのかはわからない。

だがまずい……とマクスウェルは心で冷や汗をかく。

「先ほどは何か面白いことでもあったのですかぁ~?」

「あ、いや……」

どこまで話を聞かれていた?

場合によっては……今この場で始末を……。

「おやめになった方が賢明ですよぉ?」

「!?」

たった今まで目の前に居たルシフェルが消えていた。

窓際に設えたソファに座り、足を組みながらコーヒーを飲んでいた。

いつの間に移した?

いつの間にコーヒーをれた?

……訳がわからないが、こちらがうかがい知らぬ何か特別な方法を用いたのだろう。

「一つ、あなたによいことを教えましょう。対校戦の大前提はご存じですかぁ?」

「……生徒は、他生徒を殺傷してはならない」

「そのとおぉり。よく憶えてましたねぇ」

しかし、とルシフェルは気の悪い笑みを浮かべながら言う。

「先生が他生徒を殺傷してはならない、とはルールのどこにもかいてありませんからねぇ」

「そ、それは……つまり……?」

「あなたの行いはルール違反ではないということですよぉ。良かったですねぇい」

ぱちぱち……とルシフェルが手をたたく。

だが全くもって安心できなかった。

「……なにを、考えているのだ貴様?」

腐ってもこのルシフェルは大會の主催者。

そんな、參加者である生徒の命を脅かすようなマネを、許すわけがないはず。

だのに、殺人をまるで促すような言いをしてきた。

なにか狙いがある……と考えるのが自然だ。

「信用無いですねぇ。ま、別にいいですけどぉ」

またいつの間にかルシフェルが消えていた。

ぽん、とマクスウェルの肩に手を置く。

「!? ま、また……貴様なにを!?」

「べつにぃ。そんな怯えないでくださいよぉ。かなしくなるじゃないですかぁ」

まったく悲壯をただよわせず、むしろ愉快そうな笑みを絶えず浮かべているこの男が……気味悪くて仕方なかった。

「ま、なにをしようとルール違反に抵しなければ、ワタシは大抵のことはスルーしますのでぇ」

「……たとえ生徒をおどしていたとしてもか?」

「ルールから逸してませんのでぇ」

ルシフェルの言から、マクスウェルは彼の心の中をさぐろうとする。

そして……一つの結論を出した。

「なるほど……貴様、王立學園のユリウスを、消してしいのだな?」

そうとしか考えられない。

あの化けが學園にいれば、この男だって悪だくみをしにくいだろう。

邪魔者であるユリウスを消したいがゆえに、本気のカズマをけしかけることを……許容したのだ。

きっとそうに違いない、と勝手に結論づける。

「ま、どう解釈するかはあなた次第ですがぁ。しかし、ユリウスくんを……予言の子をなめてかからない方が良い?」

「予言の子……か。あんな眉唾を信じているのか貴様?」

この世界にある、ひとつの有名な予言。

それは魔王が死んでから2000年、世界を破壊する者が現れる。そして世界を救う救世主もまた現れると。

カーライル家の男児、ユリウスこそが、その予言にしるされし子どもだと思われている……。

だが、マクスウェルが言うとおり、予言にはにかける。

信じない者もまた多い。

「ワタシが斷言してあげましょう。ユリウスくんこそが予言の子……破壊者であると」

「破壊者だと……? 救世主ではなく?」

「えぇ~。ユリウスくんはこの世界の常識を、ことごとくを破壊していく……規格外の存在です。あなたのちゃちな企みや野も……必ずや壊すことでしょう」

ルシフェルの目はなにかを確信するように、揺らぐことはない。

ユリウス=フォン=カーライル。

予言にしるされた破壊者。

「あ、あんなガキになにができる! わ、わしが施した【服従の呪い】は、者ですら絶対に解けぬ強力な呪い! あんなガキになにができるというのだ……!」

聲を荒らげるマクスウェルに対して、ルシフェルは実に愉快そうに嗤う。

「な、何がオカシイ!?」

「いえ……別に。彼の規格外な力を目の當たりにして、なお戦意喪失しないなんて、逆に珍しいと思いましてねぇ」

ばしっ、とマクスウェルは學園長の手を暴に払う。

ルシフェルはシルクハットをかぶりなおす。

「彼を侮らない方が良い。忠告しましたよぉ。では……」

音もなくルシフェルが消え去る。

一人殘ったマクスウェルは、自分に言い聞かせる。

「大丈夫だ……服従の呪いが解けることはない。カズマたちは必ずユリウスたちを……殺す。わしの駒が……必ず」

もしも次の試合でユリウスたちが勝つとすれば、それはカズマたちが何らかの方法で命令に逆らった場合だ。

だが呪いによって逆らえない狀態にあるし……それに、マクスウェルには【奧の手】がある。

「これがある限りカズマ達はわしに絶対逆らえない。たとえ呪いがなかろうとな……くく! 聖杯は、わしのものだ!」

……だが、彼は知らない。

ユリウス=フォン=カーライルという、世界の破壊者の、真なる恐ろしさを。

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