《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》01

短く息を吐きながら木剣を振るう年は、今年で6歳を迎えたところになる。はまだまだ長過程ではあるが、6歳を迎えた男子が日々の鍛錬の中で木剣を振るうのが、この村——、シルベ村の習わしだ。

「エインズ、もうし脇を締めるんだ!」

は大きく筋骨隆々の男、ダースが聲をかける。

「……はい」

ぼそっと、ダースに聞こえるか聞こえないかくらいの聲量で応えるのがエインズ。

木剣の鍛錬を始めてから半年ほど経つが、まだまだ基本の型がについていない。

「もうしだな、やる気をもうし出してほしいんだがな」

エインズのやる気のない返事にため息をついてしまうダース。

エインズに剣の才能があるかと言われれば不明だが、それでも才能がないとは思わないのがダースの持つ印象である。しかし、剣に対するやる気の無さが恐らくエインズの剣長の遅さに繋がっているようにじられた。

(そうは言われても、実際にやる気がないからなぁ)

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エインズは周りの年達に合わせて木剣を振るうが、意識は剣先まで屆いていない。頭の中では別のことを考えているのだ。

ここ、シルベ村はサンティア王國の北方、北のガイリーン帝國との境に位置している。

北方に位置していることから気候的に寒冷地帯で、気溫は一年を通して全的に低い。

は基本的に育ちにくく、耕作よりも狩猟のほうが盛んである。

それもあって食糧がなく、厳しい冬を迎える前に、北のガイリーン帝國の村々と諍いが起きることも珍しくない。

木剣を振るうシルベ村の習わしは、狩猟のためでもあるが、合わせて、ガイリーン帝國の村々との諍いに備える意味合いも小さくはない。

だからこそ、村の主力となる人した男が次世代にあたる子供の鍛錬を行う。

、弓、魔法。

このうち村で一番重要視されているのが弓である。これは日々の狩猟に欠かせないものであるから。

次に剣。これは狩猟でも多役に立つが、対人戦用だ。

そして最後に魔法。これは基本的にの使うものである。

日々の家事において、水の生、火起こしや軽い風を起こすなど。生活魔法の域を超えない。

というよりも、それ以上を扱える者がいなければ、それ以上の使い方を知る者もいない。

攻撃魔法を使う習慣がなく、爭いや狩猟においても、弓と剣で完結してしまうからだ。

そのため、シルベ村において、魔法に対する扱いはかなり軽い。なにせ生活魔法はなくても家事に

おいて苦労こそすれ、生死で困ることがないからだ。

「いまから一対一の実踐を行う。これまでの鍛錬の果を実踐の中で見させてもらう」

ダースの言葉にみな素振りをやめ、顔を向ける。

「あくまで長の確認をするためだ。実踐の中で自分の癖を認識することが重要なのだ」

ダースが審判をする。

シルベにおける人は15歳である。この鍛錬組の年長は來年15を迎える14歳のロジンとバーグである。

二人が向かい合い、

「はじめ!」

ダースの合図で踏み出す。

基本の型から緩急をつけた応用のき、さはかなり殘るが視線導など、これまでの果をお互いに発揮しながら剣を合わせる。

木剣が空を切る音、木剣同士がぶつかり合う音、そして目の前で目まぐるしくく二人に観戦している他の子たちは聲をらして見る。

「……味気ないなぁ。こんなの火を飛ばせたら剣が燃えてすぐに片が付くじゃないか」

エインズ一人を除いて。

ロジンとバーグ二人の剣戟を、エインズだけは別の見方をしていた。

(水の生魔法があるのなら、きっと土の生魔法もあるはず。……土の生が可能なら、足元を土で固めればきを封じることができるのに)

エインズの魔法知識は生活魔法の域を出ない。

よって様々な見方は出來ても、その魔法を発させることができないのだ。

「……もっと。もっと魔法の知識がしい」

エインズは持ち合わせる生活魔法の知識をもとに様々に推測を試みるが、しかしそれは憶測に過ぎなかった。それも當然、知識の絶対數もなければ、魔法発現までのロジックを考えることにも至っていないからだ。それはまるで雲を摑むよう。

だが、だからこそエインズは魔法という未知に無限の可能じているのだ。そしてそれは年頃の純粋な年の好奇心を大いにくすぐった。

手元で生活魔法の『火起こし』により発生させた火の大きさを変えたり、揺らめかすなど手元でいじる。

続く試合を水の生、風の生をしながら時間を潰していく。

「次、サイアスとエインズ。中央に來い」

ダースの聲で意識が戻る。

すでにサイアスは中央に向かって歩き始めていた。

の生えたように重い腰を上げて立ち上がると、これまた重い足をかして中央へ向かう。

「エインズ! やる気のないお前には絶対に負けねー!」

サイアスが木剣を向けながら、闘志をむき出す。

「うん。ぼくも絶対に負けるはず」

反してエインズは右手に持つ木剣をだらんと下げて満面の笑顔で返す。

「はっ! なんだよ。いつもお前はそんなだよな」

だからといって油斷はしない、とサイアスは両手で木剣を持った。

「お前たちは剣を學び始めてまだ淺い。怪我をしない程度で俺がストップをかける。……では、始めろ!」

ダースの合図でエインズのもとへ踏み込むサイアス。剣をかじった程度の現段階でもすでに剣における才覚をじさせる。き一つ一つの速さはまだ未だが、重移のこなしに、今後シルベ村を代表する戦士になるだろうとダースは期待する。

(怪我は薬草でしか治すことができないけど、もし怪我を治す魔法があればなぁ……)

その數瞬後、エインズは地面に倒れ伏していた。

頭には大きなたんこぶができていた。

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