《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》09

「思った以上に視界が暗いな。ここで肝試しなんかしようものなら、今持ってる下著の數じゃ収まらないほどらしそうだ」

式詠唱『あなたの目がほしい。あなたの耳がほしい。私を盲人の世界より救いたまえ』、——索敵」

森の中は暗いままである。

しかし、エインズの索敵魔により辺りがつかみ取るように分かる。魔獣の位置や數。大きさや形まで。

かなり集中して意識を深くまで鎮めれば森全を把握することもできる。

しかし現段階のエインズではそこまではできない。

「おっ、早速餌だと思って出てきたかな」

シルバーウルフが涎を垂らしながら近寄ってくる。

獰猛な格に加えて、嗅覚が優れている。

シルバーウルフは完全にエインズのことを餌として認識している。

しかしエインズに焦りはない。

左手に水を生する。生された水が左手全を薄く覆っていく。

エインズは水を纏った左手の人差し指でシルバーウルフを指さす。

それを威嚇と捉えたのか、後ろ足で強く地面を蹴り、エインズの左手目掛けて飛び込んでくる。そのきはエインズの目にもぎりぎり追えるかといったところである。

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この近接戦において、すでにウォーターボールの生から発は間に合わない。

(この水魔法は、そんな優しい魔法なんかじゃないよ)

あと數センチ。

シルバーウルフは、獲ったと思ったのだろうか、それとなく喜わにする。

しかし次の瞬間、シルバーウルフは左右に真っ二つに斬れていた。

この威力でも水魔法。

「水をね、超高速で高度に放出すると、まるで剣聖の一振りのような切れ味になるんだよ。……まあ、剣聖を見たことないけどね」

ウォーターカッター。

雨垂れが石を穿っていた様子から、応用してエインズが獨自で作った魔法である。

「ここだと火は使えないからね」

これなら安全マージンを取らなくていいかな、とエインズはさらに深くまで進んでいく。

「気楽に、魔法が使える魔獣を探しながら森にった子供たちを探そうか」

……おかしい。

シリカはエバンの後ろを走りながら、違和を覚えていた。

シリカとエバンは裝備を取りに家まで走って戻った。その際、エインズを殘してきたのだ。しかし裝備を整えて森に向かって走っているが、一向にエインズとすれ違わない。

真っすぐ一本の道であるため、すれ違わないことなどありえないのだ。

ここはエバンに報告するべきか、とシリカは考えたが、夜の森にるのに別のことに考えを巡らせるのは良くない。

ここはエバンに何も伝えない方が吉だと判斷して、追走する。

家々を過ぎ去り、すれ違う人から「子供たちをお願い!」と必死に祈られながら森に向かっていく。

エバンもエバンで、シリカと同じ違和を覚えていた。

そして決定的だったのが、森までの道で一部ぬかるんだ箇所があったが、そこに何か車が通ったと思われる線が二本殘っていたのだ。

「……おそらくエインズのやつ、森にったな……」

シリカを不安にさせないためにも、とエバンもこのことについてれていないのだ。

しかし、事を把握している二人は、村の子供たちと合わせてエインズの探索も始めた。

エインズは車いすなのだ。それにこれだけ木々が集した森だから自由にけるはずがない、とエバンは推測する。

子供たちよりも奧に進んでいないだろうから、子供たちが見つかれば自ずとエインズも見つかるだろう。

森のり口。

すでに裝備を整えた捜索隊の數人が集まっていた。

「できるだけ松明の數は減らしていこう。燈りが集していれば、それだけ魔獣どもの標的にもされやすい。

ここは、視野が確保される最低限の數で進しよう。細かな連攜や死角を互いにカバーしていくぞ」

エバンの指示に皆、頷いて返す。

「いこう」

茂みにると、より不気味さがにまとわりつく。

なんと表現したらよいのだろうか、四方八方を大勢から見られている覚。加えて、ただ見られているのではなく、餌としての値踏みをされている気分である。

ひどく居心地が悪い。

狩りにおいても重要な役割を擔う斥候が暗がりの中、木に登り目を凝らす。

「だめだエバン。俺の目も夜の森じゃ全然役にたたねぇ」

斥候の一人が木から飛び降りる。

が、

どさっと著地に失敗して地面に倒れる。

「おい、何してるんだ」

「悪い悪い。晝と夜だとこんなに覚に違いがあるんだな……。足場が悪いと尚更だ。これは自由を利かしたきは無理だぜエバン。集して死角をなるべく防ぎながらゆっくりくしかなさそうだ」

子供のところまでたどり著くのに果たしてどれだけの時間がかかるのだろうか。

ゆっくりと、松明の燈りを頼りに進む。

「シリカ、片目閉じておけ」

「えっ?」

「魔獣が出てきたときは燈りから離れることになる。その時暗闇に目を奪われることになってしまう。多でも目の慣れを早くするためだ」

「しかしそれだと視野が制限されてしまうのでは?」

「そこは後衛に任せる」

なるほど、とシリカが納得した矢先、エバン達の前を赤くる眼が二つ現れる。

魔獣だ。

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