《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》12

捜索隊の各員は満創痍だった。前線のエバンとシリカは中傷だらけ。斥候含め後衛も二人のフォローや周囲の警戒で心共に限界だった。

いまだに誰一人として欠けていないが、次に魔獣の群れに遭遇した時には間違いなく死人が出るだろう。

そしてその綻びから捜索隊全の崩壊に繋がる。

シリカだけでも逃がしたいというのは、勝手ではあるが、エバンの父親としての率直な気持ちだ。

疲労から誰も聲を出せず、辺りを警戒していると、草むらがざわめき揺れる。

「……複數だ」

エバンがぽつりと呟く。

小さな聲だったが、捜索隊の皆の耳に屆いていた。

全員が覚悟した。

シリカとエバンは抜剣し、低く構える。

ガサガサと音が近づくにつれ、悸が激しくなる。

「ふぅ、やっと合流できた」

草むらから影が出てきたかと思えば、聞きなれた聲がした。

「……エインズ」

ニコニコした男の子が車いすに乗って現れる。その後ろから三人の子供たちが出てくる。

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シリカは一気に腳の力が抜けた。手に持つ剣が地面に転がる。

カラン、と音がなり、捜索隊に安堵した空気が流れる。

「どうしてエインズが森の中にっているのか詳しく聞く必要があるが、」

エバンは厳しい表でエインズを見つめる。

しかし、

「無事に合流でき、子供たちも見つけられた。このことにまずは喜ぼう。エインズ、よくやってくれた!」

エバンは表を緩め、エインズの頭をでる力は自然と強くなった。

「エバンさん、いたいって」

エインズは困った表をするも、払いのけることもせずエバンの手をれる。

エバンが手を離すと、エインズはぼさぼさになった頭を手櫛で整える。

我に返ったシリカがエインズの目の前に立つ。

「私は怒っているわよ、エインズ。寄り道していると思えば、森の中にっているし、私たちはこんなに満創痍なのに、エインズは汚れてないし。これは姉の威厳を今一度覚えさせないといけないわね!」

そう言い、シリカはエインズの頭を両手で暴にでる。

せっかく手櫛で整えたエインズの頭は再度れる。

「シリカ、姉の威厳の見せつけ方間違っているよ」

エインズは呆れながら手櫛で髪を解く。

「よし、みんな! とりあえず最悪の狀況は逃れた。あとは無事に村まで帰るぞ! 疲労も溜まっているだろうが、もうしの辛抱だ!」

エバンが発破をかける。

「いや、僕はそんなに疲れてないけどね……」

小さくつぶやいたつもりのエインズだったが、シリカには聞こえていたようで、げんこつを食らう。

(地獄耳はこれだから)

もう一度エインズの頭にげんこつが飛ぶ。

「なんで!?」

「……なんか失禮なこと考えてそうだったから」

シリカはふんっと一度そっぽを向いたが、ぽかんとしたエインズの表が見え、笑った。

その後、順調に森を抜けた。

魔獣に襲われもしたが、エインズが魔法を駆使し払いのける。

シリカはエインズの魔法の腕を知っていたため、驚きはしなかったが、エバン達はエインズの魔法を初めて見たため、大層驚いていた。

そんなこんなで、捜索隊は森にった五分の一の時間で村まで帰ってくることが出來た。

村の中心までくると、村人たちが外で集まって待っていた。

たき火の火を囲み靜かに捜索隊の帰りを待っていたが、エバンたち捜索隊が誰一人欠けておらず、森にった子供たちもみな無事である姿が見えると、祭りのように歓聲を上げ出迎えた。

森にった子供たちは、親にこってり絞られていた。

エインズも無斷で森にったことも言わずもがな怒られていた。

ひとしきり子供たちを叱った後は、森での出來事について話された。それはエインズが子供たちを見つけ、保護しながら捜索隊に合流したこと、魔法の腕前も話された。

村人の多くは、シルベ村のただ一人の生き殘りとして腫のように接してきた。右腕がなく、左腳がないため、一人で歩くこともできないエインズを口には出していないだけで、子供たちのように役立たずの穀潰しだと思っていた。

そのエインズの評価が変わった。

創痍の捜索隊にかわり、自ら森にり、子供も捜索隊の大人たちも魔獣から救った救世主だと評価を改めたのだ。

村の人々は、これまで腫のように接してしまったことを謝罪し、その上でこの度のエインズの行に口々に謝の言葉を伝えた。

エインズも村の人たちの態度に最初はかなり驚いたが、それでも謝されていることに嬉しくじていた。

シルベ村の生き殘りであるエインズ。エバンやその妻のカリア、娘のシリカだけでエインズの環境は完していたが、今回の騒で村の一員になったようにじられた。

親にこってり叱られた子供たちもエインズのもとまでやってくる。

「……たすかった」

「うん」

「それと、わるかった。馬鹿にしてたことをあやまる」

「いいよ、別に。実際僕は穀潰しだった。今回の出來事だって、単純に個人的な魔法への興味や関心だけでいた。それが君たちを救ったのは副産だよ」

「それでもお前は、——エインズは俺たちの命の恩人だ」

三人は親に上から押さえられながら頭を深々と下げ、それから家に帰っていった。

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