ソフィアの後ろをついていきながらエインズは思う。

（前は大樹から集落までの道のりに何もなかったけど、今ではんな店や屋臺が並んでいるんだな）

石畳に整備された地面に、活気のある店が並ぶ。

果や日用品、雑貨まで。多種多様なものを取り扱っており、エインズはそのほとんどを見たことがなかった。

「……へぇ、初めて見るものばっかりだ。ソフィア、し寄り道したいんだけど。あれなんか、どんな構造をしているのか知りたいんだ！」

「うぅ……。そんなに目を輝かせて言われても。団長とのお話が終わりましたらお供致しますから」

「まあたしかに、時間はあるし焦ることでもないか」

エインズは歩きながら、腹をさすりながら「今は朝食だな」と飲み込む。

街商を抜けると、エインズの知るところの集落の辺りまでやってくる。しかし、建は以前のように強風が吹けば崩れてしまう建ではなく、しっかり加工された材木による丈夫な構造であったり、石造りの建も多く目にった。

居住區の変わりようにエインズは忙しなくあたりを見回す。その中でもひときわ大きな建が現れる。

白を基調とした石造りの建は、細部にまでカーブをつけた裝飾がされているなど、加工技、建築技の高さが伺える。

「エインズ様こちらです、どうぞ」

建のり口は重厚のある大きな扉は、観音開きであり、その両脇にはソフィアと同じように白裝束の上から鎧をに纏い、帯剣をした男が２人衛兵として立っていた。

その厳戒さに、空腹も相まってエインズの胃はきりきりと痛む。

「ソフィア様、お早い戻りですが、そちらの方は？」

衛兵の一人がソフィアに尋ねる。

「私たち騎士団の幹をなすお方かもしれません」

ソフィアは小さな聲で、しかしはっきりと衛兵に伝える。

衛兵はソフィアの顔つきから冗談ではない空気を読み取り、靜かに道を開けた。

扉がゆっくりと開き、二人は中へっていく。

中にると白裝束と鎧を纏った騎士が多くおり、街の相談事を解決する付窓口なんかも設けられていた。

大きなテーブルや椅子もあり、奧には本棚がずらりと並び數多くの書が蔵書されていた。ここでは図書館のような役割も果たしている。騎士たちが各々に読書していたり、書を見ながら何か書き記していたりする。

「なあ、ソフィア。僕、けっこう浮いてない？」

白を基調とした建に、騎士の裝いも白が基調となっている。そんな空間でエインズは全が黒なのだ。

「……まあ多は。ですが、許容範囲かと」

ソフィアの苦しいフォローに、そんなことはないだろうと思いながらもここで何を言っても意味がないと判斷しエインズは話を切り上げる。

館を進んでいくと、すれ違う騎士たちが頭の先から足のつま先までじろりと見てくる。

（まあ、騎士でもないし、こんな服裝だしな。警戒して當たり前か）

そのまま奧に進むと騎士団長と立札された部屋に辿り著く。

ソフィアが「失禮します」と言いながらドアをノックする。中から「れ」と短い言葉が聞こえ、靜かにドアを開けたソフィアの後ろで軽く會釈しながらエインズもった。

部屋にると、大きな窓を背に、書類が積み上がった機に向かう筋骨隆々な男が目にる。

（軽く叩かれただけでも骨の一本折れそうだな）

短く整えられた髪に鋭い目つき。口元に髭を生やした男は纏う裝束の元を開けさせており、その合間から鍛え抜かれた立派な大筋が見える。

「おお、ソフィアか。どうした？　いつものお前ならこの時間はまだ聖痕の前で鍛錬に勤しんでいるであろうに」

男がソフィアとエインズを目に捉え続ける。

「……男っ気のないお前がナンパか？　男を連れ込むために鍛錬を早く切り上げるとは、お前のとしての長に俺は泣いて喜ぶぞ？」

目の前の男はその姿に似合い、豪快に笑う。

「ガウス団長。セクハラで訴えましょうか？」

ソフィアは、伝達魔道を手に「ガウスだ。今日は祝いだ！　赤飯を頼む！」と付に連絡するガウスを冷たい目で見る。

「いやいや。俺はお前の育ての親みたいなものだぞ？　もう人して２年にもなるのに男の気配をじたこともない。そんな喪まっしぐらなお前を思ってだな」

「だ、だれが喪まっしぐらですか‼」

ソフィアが顔を赤らめながらぶ言葉には怒気がこもる。

「うん？　違うのか？　お前の同僚の結婚や彼氏やなんやと、の話題を耳にする度に悲しそうにため息をついている姿を見ているんだが、……気のせいだったか？」

「な、な、なな、ななにを」

頭から湯気が立つほど、ソフィアの顔は真っ赤に茹で上がる。

「えっ？　そうなの？」

エインズが橫から口はさむ。

「ち、違います‼」

口から唾が飛ぶのではないかと思うくらいにソフィアは強く否定する。

「じゃあどうした？　生き別れの弟と出會ったわけでもなかろうし、言っては何だが部外者は基本ここには立ちれない規則だぞ？」

ガウスはソフィアから視線をずらし、エインズを見定める。

ソフィアは軽く息を吐いて落ち著きを戻す。

「確証はありませんし、私の希的観測も多く含んでいるかもしれませんが、ガウス団長にこの方を紹介するべきだろうと判斷し、ついてきて頂きました」

「……とりあえず、立っているのもなんだ、そこに座りな」

ガウスの機とソフィアとエインズが立っている場所の間には來客対応ができるよう、ソファが四角いテーブルを挾んで対になっている。

「その前に団長、まずは用意して頂きたいものがございます」

「なんだ？」

ガウスがソフィアの凜々しい佇まいを見ながら返答する。

「この方に、朝食を。そして食後にはデザートとコーヒーを頂きたく」

ソフィアはエインズに「ですよね？」と顔を窺いながら訊く。

「コーヒーは好だね」

「それはよかったです」

「……どういうことだ？」

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