《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》10

鎧や十分な裝備をしている剣士が、革防や雑な獲を手にした盜賊たちに苦戦している。特にひどいのが、魔法士である。攻撃魔法を放つことも出來ず、盜賊たちから逃げっているのだ。

「ソフィアさん! あそこ! あのフードのついた黒いローブを纏っている人よ!」

「承知しました」

ソフィアは抜剣し、低い勢で戦場を駆ける。

「なんだ、あの?」

盜賊たちはソフィアに気づき、聲を発する。

「けっこうな上玉みたいだが、あの冷たい目つき。可げがねーな」

「ちげーねぇ。まあ、楽しむだけなら間に合うだろう。……お前ら! 早いもん勝ちだからな!」

剣士を追っていた者、魔法士を追っていた者も何人かソフィアのもとへ向かう。

「下衆ですね」

複數で待ち構えるように魔師とソフィアの間に盜賊が立ちふさがる。

持っていた斧や剣を振り上げ、ソフィアに襲い掛かる。

しかし、銀雪騎士団の騎士とそこらの盜賊とではきの違いにかなりの開きがある。洗練され、無駄な力を使わず、最小の力で最大限に伝える。剣を振るのに必要なのは行き過ぎた筋力ではなく、の捻転を使用した鋭いき。

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ソフィアの前を橫に3人並ぶ盜賊だが、得を振り上げている間に、靜かな足さばきで懐に潛り込まれる。

「ちょっ! ……まっ」

瞬間移のようにじられた盜賊たちは、その頃になって初めて焦りをじた。

真ん中で、太い両腕で斧を振り上げていた男に一閃。剣が通り過ぎ、遅れてが噴き出し両腕が分かれる。駆けたエネルギーを左腳で踏ん張り、止まることでに留める。右腳はの捩りで振り回す。遠心力も持った右腳は、腕の無くなった盜賊の開かれた部に叩き込まれる。

高速で駆けたきを急停止させたことで蓄えられるエネルギーと遠心力を、敵の部に叩き込む一點で開放する。

男も、筋という鎧に革防に著けていたが、ソフィアの蹴りはエネルギーをに直接送り込み、を壊す。

男の心臓が破裂し、目や鼻、口からもを吹き出しながら男はその筋を生かすこともなく絶命した。

蹴りによって、邪魔な塊は後方へ吹き飛び、ソフィアは次に左右の盜賊を対処する。

今の一連のきにビビってしまった盜賊は、剣を持っていても腰が引けてしまっており、その剣撃は軽い。

男への蹴りでエネルギーを解放してしまったソフィアの力でも簡単に二人の剣を弾くことができた。互いに剣が屆く間合いにおいて、腰が引けてしまっている剣士は敵にも何の障害にもならない。

何千何萬と繰り返されに染み付いたきで、當然のように左右の男の首を切り落とす。

盜賊の一層が沈むと、後ろにもう三人いたが、これも特筆することなく退けた。

「鉄火場は久しく離れていましたが、問題ありませんでした」

何人も斬ったはずだが、その剣にはほとんど糊が付いていない。そこにソフィアの技量が伺える。

ライカもそのきを始終見ていた。き自は速いが追えないほどではなかった。しかしそこからの無駄を極限にまで削ったきはしさをじるほどのものであった。

「……あのき、絶対に騎士団の中でもトップクラスの実力の持ち主のはず」

なのに、なぜあの怪しいエインズを敬っているのか。さらにライカは不思議に思った。

「ライカ様、ここは私だけでなんとかなりそうなので、皆さんの治療はお任せ致します」

ソフィアはエインズからけ取ったポーションのった革袋をライカへ投げ渡す。

「分かったわ。私もみんなの治療を早く終わらせてそっちに向かうわ!」

ライカは革袋を握りしめて、けが人のもとへ向かって駆けて行った。

それを見屆け、ソフィアは口を開く。

「案外、エインズ様が來られる前に片が付きそうな気がしますけど、問題はないでしょう。その程度の相手、エインズ様の観察対象ではないでしょうから」

何の妨害もせずに見屆けていた黒ローブの魔師に剣先を向け、

「別に魔法を使ってきても構わないのですよ? でないと、この盜賊(木偶)らはすぐにお亡くなりになりますよ?」

と挑発した。

「いやー、素晴らしい腕前じゃないか。そこらの剣士と訳が違いそうだな、あんた。こりゃ、こいつらだけだとどうにもならないかもなあ。俺も參加するとしよう」

ローブの男は恭しくお辭儀をして名乗る。

「俺は拘束の魔師、コルベッリ。なにぶん泥臭い剣は見たくもないほど嫌いでね、あんたのきも拘束させてもらうよ」

コルベッリは右手に持った杖をソフィアに向ける。

「まずは小手調べだな。うまく避けろよ!」

コルベッリの杖から火球が三つ発され、ソフィアに向かって飛んでいく。

「この程度では小手も調べられないのでは?」

ソフィアはその三つを剣で斬り伏せる。

「ほう。下級とはいえ、魔法を剣で切り裂くか。その剣、ただの剣ではないな?」

「気づきましたか。そうです、これは『対魔剣』です。剣としての使用はもちろんですが、その本分は魔法への対処にあります。下級とは言わず、上級魔法でも斬り伏せることが出來ますが、あなたの魔法の腕がどれほどのものか逆に試してみましょう」

次はソフィアがき出す。

「ふん、安い挑発だな。下級魔法を防いだだけで図に乗りやがって。略式詠唱『火槍×5』!」

コルベッリの周りに赤く燃える槍が五本、空中に浮かぶ。

「火槍(ファイアランス)程度、何ともありません」

ソフィアは向かってくる火槍をはじく。當たらないと判斷したものは足さばきで避ける。なんてことはない。中級魔法も簡単に対処する。

続けてコルベッリは火槍を20本出現させ、四方八方からソフィアに斉する。

焦りはない。足さばきで対処できるもの、剣でけ流して対処できるもの、完全に斬り伏せて対処すべきものを瞬時に判斷し、その通りにくだけだ。

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