《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》11

魔法を切り裂くたびに対魔剣は青白くる。

「対魔剣に、魔法に対するそののこなし……。ひょっとしてあんた、『田舎者』か?」

コルベッリは手に持つ杖をいじりながら半笑いで話す。

田舎者。

これは言葉通りの意味合いを持つと同時に、王都から離れた地にあることから、怖いもの知らずが銀雪騎士団を揶揄するときの言葉でもある。

「貴様、銀雪騎士団を侮辱するか!」

「ふん、田舎者もそこらに転がる騎士も全て脳筋の馬鹿者どもよ」

「貴様が得意なその魔法も今こうして脳筋の私に斬り伏せられているがな」

「それもこれもあの憎き『悠久の魔』のせいよ! やつが原典の副本を世にばら撒き、力もないクソザルに悪知恵だけを與えた! あんたが持つその対魔剣もその悪知恵の塊よ!」

コルベッリはつばを飛ばしながらび、火槍をさらに増やす。

「貴様、さては『次代(じだい)の明星(みょうじょう)』の一員か?」

火槍の斉を見て、ソフィアもき出す。

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「そうだ! 我々は『次代の明星』。銀雪のアインズの『原典』を完全継承し、我々の為すべきことを為すのみ!」

「ふん、どおりで偏った思想を持ったものです」

「黙れ、田舎のクソザルが! ——式詠唱『錬金師は騙る。砂を金に、白を黒に。しかして羊は得を得る』」

コルベッリが魔法の完全詠唱を行った。

ソフィアはその詠唱を一言一句しっかりと耳にした。

「(聞いたことがない魔法ですね。これがライカ様の言っていた厄介な魔法というわけですか)」

分からない魔法だろうが、効果が発生する前にコルベッリを処理してしまえば問題がない。

距離的なロスが発生してしまう足さばきではなく、火槍を対魔剣で迎撃しながら最短距離で懐に潛り込む策を取るソフィア。

「(エインズ様は別として、魔師相手であれば剣の屆く間合いにればこちらの勝ちは確定します)」

あと數歩。

ソフィア必殺の間合いまであと數歩のところでコルベッリがく。

「『走るは損』。止まれクソザル」

魔法の詠唱ではない。なんの魔力も籠っていない言葉だった。

しかし、ソフィアの腳は突如走ることをやめる。

「っ!」

ソフィアに驚いている暇はない。目の前まで火槍が接近している。

腳が止められてしまえば、今更最短距離もなにも関係ない。問題は目の前の火槍の対処。強制的なきの制によって、剣を振っても火槍を全て対処できる間合いではなくなっていた。

ソフィアは橫跳びすることで、ある程度の數を避ける。

「『起き上がるは損』」

そこでコルベッリの聲。

飛び避けたソフィアはその場で起き上がることが出來ない。どれだけ腕に力をれようが、全の筋をフル稼働しようが、強力な何かに上から押さえつけられているかのようにけない。

「っぐあ!」

そうしているうちに火槍を被弾し、後方へ勢いよく転がる。

「略式詠唱『火槍×20』」

コルベッリはさらに火槍を出現させ、放つ。

ソフィアは何度か地面で転がると、を取って、上を起こす。右手から対魔剣が離れることはなかった。

「『剣を振るうは損』」

目前まで來た火槍に右腕がかない。対魔剣が明な何かの手で摑まれているようにその場からくことはない。

被弾することは確実となったソフィアは、ダメージを最小限にするため、自ら後方へ飛ぶことによって被弾した威力の幾分かをけ流すことに功する。しかしそれでも再度地面を勢いよく転がる。

「所詮は田舎のクソザルよ。魔師の域まで辿り著いた俺の魔を前にしてはあんたの悪知恵も意味をなさん!」

両手を広げて高らかに笑うコルベッリ。

口の端から垂れたを手で拭いながらソフィアは立ち上がる。中級魔法の被弾に、十分なを取れずに地面を何度と転がり、の複數個所で痛みをじていた。

「……なるほど。拘束の魔師ですか。厄介ですね」

ライカはソフィアから革袋をけ取り、味方の騎士たちのもとへ走っていた。

袋自は小さく、そのり口も小さい。無理やり詰め込んでもポーションは三本って限界だろう大きさだ。

「ポーションよ! ソフィアさんが抑えている間にこれで回復して!」

一人一人にポーションを渡していく。革袋の大きさからは考えられない程、次から次へポーションのビンが取り出せる。

「これもアイテムボックスなんだ……。こんな國寶級のアイテムを持っているなんて、エインズって何者なのよ」

式のアイテムボックスを自分で作ったと言っていた。もしかすると、この革袋のアイテムボックスもエインズが作したものかもしれない。

ということは國寶級のアイテムを生み出すことができる魔師なのだ。

「なんだこれ! すごすぎる!」

「こんなポーション見たことないぞ!」

ライカがポーションを渡していった騎士たちからそんな聲が上がる。

ライカも振り返り、確認する。

すると、ポーションを飲んで一瞬で全の傷が消えていく景が目にる。出によって軽い貧を起こしていた者も青白い顔からが戻っていく。

骨まで到達していた深い傷も一瞬でが再生し、傷を癒す。

「……これ、ただのポーションなんかじゃない。ハイポーション?」

この治癒力はハイポーションに匹敵する。

ハイポーションは貴族でも一家に數本しか持っていない高価なものである。

それがこの革袋の中にはまだまだなくなる気配もなくっている。

これだけの數を所持できるほど金銭力があるのか。いや、おそらくこのハイポーションもエインズが自ら作っているのだろう、ライカはそう推測した。

「こんなことを考えている場合じゃない! 早くみんなに渡さないと」

渡した者から次々に驚きの聲が上がるが、ライカは一心に騎士や魔法士たちにハイポーションを配っていった。

「回復した者から盜賊の迎撃を! 今なら魔師の厄介な魔法はないから簡単に処理できるわ! ここから私たちの反撃よ!」

ライカの活に回復した者が次々に勢いよく立ち上がる。

走りながらライカはソフィアを確認する。

ソフィア優勢でいていた戦いも、コルベッリがあの不気味な魔法を使いだしてから一気に形勢逆転されていた。

魔法に長けた銀雪騎士団の騎士でも、今のところコルベッリの拘束の魔法には手も足も出ない狀況だった。

「……エインズ、早く來なさいよ」

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