《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》15

「魔? 違うよ、これは優れた魔法だよ。こんな優れた魔法を使う魔師なんだからその魔にも期待を持たずしてどうするんだよ!」

そこにソフィアとエインズたちの認識の違いがあった。

ソフィアたちにとっては生死をかけた戦いであって、コルベッリにしてもソフィアにしても油斷をした方が命を落とすといったやりとりである。

一方のエインズはというと、そんなはまるでない。戦いなんかではなく、自分の知らない魔を見せてくれる、惹きつけられるだけの人間であってその人間のいる空間でしかない。

「おい、あんた。この俺の魔を優れた魔法だと? 舐めたこと言ってくれるじゃないか!」

エインズとソフィアのやりとりを聞いていたコルベッリは憤慨する。

「え? これが魔? やめてよ、その冗談おもしろくないよ?」

エインズはやれやれといったじで想笑いを返す。

「あんたさては魔師じゃないな? 上級魔法のさらに上を行く魔法、『魔』を見たこともない口だな?」

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あんまり魔師を舐めるんじゃないぞ、とコルベッリは続けた。

「……上級魔法の上が、魔? ……あぁ、なるほど。偽か」

エインズは一人呟きをこぼし、理解した。

コルベッリから近寄ることを制限されているエインズは、逆にコルベッリに背を向ける形でソフィアとライカを見る。

「遠回りでもいいや。ソフィア、キルクに向かおう。ライカもごめんね。僕たちキルクに向かわせてもらうよ」

「エインズ様? どういうことです?」

ソフィアはエインズの意図が分からず、訊き直す。

ライカもソフィアと同様にエインズの真意をくみ取れていなかった。

「そうよエインズ。……助けてくれるんじゃなかったの?」

「違うよ。キルクまでの通り道を遮っている盜賊がいて、その中に魔師がいるっていうからのついでで助けるつもりだったんだよ。それが來てみればこれだよ……」

エインズは背を向けていたコルベッリを憐れみながら一瞥して続ける。

「魔師って粋がった魔法士風じゃないか……。それならリートとの時間のほうがまだ有意義だった。魔法士止まりの彼には興味ないし、あとはライカたちでうまくやってよ。ポーションのったその袋もあげるからさ」

エインズの言葉に、ソフィアもライカもそしてコルベッリすらも皆あっけらかんと彼を眺めていた。

止まっていた場の時間は、コルベッリの開口によってき出す。

「……あんた上等だ! 今すぐにでもぶっ殺してやる‼ 『その場をくことは損』」

苛立ちからボサボサの黒髪を搔きむしり、コルベッリは重ねて攻撃魔法の展開を開始する。

「やれやれ、その魔法の底はもう知れた。所詮は認識阻害程度の魔法だよ。それじゃもうだめだ」

エインズは続ける。「……式解除」

ガラスが割れるような甲高い音と共にエインズは自由を得る。

「解除」

再度呟き、コルベッリの展開しつつあった攻撃魔法すら打ち消した。

「なんだよそれ。なんなんだよそれ!」

「これかい? これは君の知っている『魔法』の一つだよ」

エインズが目にした魔法において、そのり立ちや構造全てが把握できたものはもはや脅威ではない。構造を把握しているが故に介できる。介してしまえば式をすことによって解除できる。

エインズがとっくに魔法化できている「解除魔法」の一つである。

「そして、君の得意な魔法の上位互換がこれかな? ——式詠唱『救いを求める狂信者。祈りと願いは則守りし者にのみ屆く』。重ねて、式変換『魔法化——、則事項』」

コルベッリの魔法が解除され、エインズが立て続けに言葉を紡ぐ。

その場で新しい魔法を作り出す。そして、即座に作り出した魔法の魔法化を完させる。

「『魔力作をずる』」

「へ?」

コルベッリは何もできなかった。

そして、エインズの魔法の展開によって魔力を作することが適わなくなる。つまり魔法が使えなくなった。

「君の魔法は結局、認識阻害を利用した「人間の損得の助長」だよね? 著眼點としてはかなり面白いけど、実用でいけばまだまだ甘いね」

「な、なんなんだよ! 本當にお前なんなんだよ! なんで俺の、俺の魔を!」

コルベッリは気が転した。腰が抜け、その場にペタリとをついた。

「これは君の魔法のさらに発展させたものさ。損得では甘い。制限というなら『止』までさせないとね。例えば、『呼吸をずる』」

コルベッリは呼吸ができなくなった。息の吸い方吐き方は勿論知っている。しかし、出來ないのだ。吸うという作が出來ない。吐くという作が出來ない。

「……っ、……っっ」

息を吐くことができないということは聲を出すことが出來ないことでもある。生き殘りの盜賊たちに助けを求めようともそれが出來ない。

また、他人の手によって息が出來なくなっている狀況、それがそのまま恐怖に繋がる。

コルベッリがそろそろ息に苦しくなり、首を掻きむしり始めた。

「ま、これくらいしないと実用は認められないかな? 『呼吸を許可する』」

エインズが指を鳴らすと、コルベッリの肺を新鮮な空気が循環する。

「はぁ、はぁ、はぁ。……おい、お前ら今すぐその銀髪を殺せ!」

膝に手をつきながら息を整えるコルベッリが生き殘っている盜賊に指示を出す。

大勢いた盜賊たちもポーションで回復したライカの騎士たちに大半がやられているため、殘り10人弱と數を減らしていた。

する盜賊たち。

それもそうだ。これまで指示を仰いでいたコルベッリがこうも簡単に封じられてしまう相手。魔法に疎い彼らでもその異様さと強さが覚的に分かった。

を向けながらもいまだ飛び込まない盜賊たちにコルベッリはしびれを切らす。

「ったく! 報酬は10倍出す! それに、向かわないなら俺がお前らを後ろから打つ。ほら、今すぐ行くんだよ!」

コルベッリは走った目をしながら聲を荒げる。

「ライカ? 僕が彼らを殺してしまってもいいの?」

魔法技の高さ、そして魔師がなんなのかいまだ分からないが、なくとも魔法士としての能力は抜群であるエインズの腕前を前にライカは呆けていた。

「……えっ? うん。相手は盜賊だし私の騎士に危害を與えている罪がある犯罪者だもの」

「そうか。なら気兼ねなく行かせてもらおうか」

エインズの雰囲気が変わる。

コルベッリも、盜賊も皆それをじた。

「君、魔が何か分からないんだよね? 一つ、教えてあげよう」

「限定解除『奇跡の右腕』」

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