《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》24

「うーん、まあすごいんだろうけど、なんか思っていたのと違うね」

エインズの言葉にカンザスが反応する。

「もっと、分かりやすくギラギラピカピカしていると思ったかい?」

「まあ、金銀財寶ってじなのを」

「本の富豪というのは表立ってそういう金らしさを見せないものだよ。ほら、あそこに小さな花瓶あるだろ?」

カンザスの目線の先には廊下の端に置いてある背の低い棚の上に花が一刺しされた花瓶があった。

「あれだけで金貨數百枚になるよ」

「金貨一枚の価値は?」

「一般人のひと月の給金くらいですね」

後ろのソフィアに確認したエインズは、その上で驚いた。

「ええっ!? あんな僕でも作れそうな花瓶がそんなにするのか」

「ははは。私もあまり蕓には造詣が深くないけどね。そういうもんだよ」

見えないところにお金をかけているのか、と納得するエインズ。

すれ違う際にもう一度見て、「いやでも、あれは僕でも作れるけどな」と呟くのだった。

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長い廊下は庭を臨むように、片側が一面ガラス張りになっている。

自然を十分に取り込めるように設計されているのであろう、廊下はランプが無くとも明るい。

廊下の先では、大きな両開き扉があり、近衛兵だろうかここまで見かけた衛兵とは異なった裝いをした騎士二人が両方から、4人が扉の前に來るタイミングで開扉した。

「エインズ殿、ここから先は謁とはいえ陛下と會われます。私と娘の後ろで私どもと同じように振舞って下されば問題ございません」

カンザスが開かれた扉の先を見定めながら後ろのエインズに伝える。

「分かりました」

「私もフォロー致します、エインズ様」

エインズの後ろからソフィアも聲をかける。

開かれたホールは天井をドーム狀に高く造られていた。

ホールの両端を何人もの帯剣し鎧を纏った騎士が直立して待機している。

両脇を騎士に固められた先には數段上がって、まるで威圧するように仰々しい玉座がそこにあった。

これを見てエインズはここが玉座の広間だと理解する。

「これより國王陛下がお見えになる! 四名とも、面を伏せてお待ち致せ!」

玉座から下がったところに筋骨隆々な騎士が鋭い目つきをさせながら聲を張る。

そこからエインズは前のカンザスに倣って、片膝をついて顔を伏せる。

前にカンザス、半歩下がるようにライカが膝をつき、後ろを並ぶようにエインズとソフィアが面を伏せる。

(なんか、騎士になったみたいだなあ)

これまで主君に仕えた試しもないエインズは、現在の姿勢に新鮮さをじていた。橫のソフィアやカンザスのそれは流石に堂にっていた。

それからし待ち、玉座のあたりに4人ほど広間にってきた気配をじ取った。

「カンザス=ブランディ、面を上げよ」

しわがれ聲が4人の元まで屆く。

しかし、カンザスは顔を上げない。

「カンザス=ブランディ侯爵、面を上げよ」

「はっ!」

目つきの鋭い騎士が再度呼びかけると、それによってカンザスは顔を上げた。

「他三名も面を上げよ」

しわがれ聲が屆くが、エインズは橫目でソフィアが微だにしていない姿を確認し、倣う。

「面を上げよ」

騎士の聲を聞いて、前方のライカや橫のソフィアが顔を上げたのを確認してワンテンポ遅くエインズは玉座を視界に捉えた。

「久しいな、ブランディ卿。先の帝國との爭いぶりかのう」

「左様でございます。なかなか厳しい戦でしたがなんとかこうして五満足で帰ってこられました」

「そなた程の実力があれば容易かろうて」

「凡人の域は超えません。悲しいかな、秀才では天才に遠く及びません」

玉座に座る國王とカンザスは和やかに言葉をわす。

(もっと厳粛なものかと思ったけど、意外だな)

エインズは姿勢をそのままに玉座を確認する。

白髪に、酸いも甘いも噛み分けた経験かな統治者の顔をした國王。幾重にも刻まれた皺(しわ)は修羅場を潛り抜けてきた歴史をじさせる。

國王に向かって左隣には人した男が立ち、未さが殘り國王には遙かに劣るがその風格は統治者のそれである。

その橫はふくよかな格をしたいかにも文といった中年男が立っている。

玉座に向かって右隣にはライカと年齢が近いが背筋をばし、手をの前で組んで直立している。

腰のあたりまでしなやかに金の髪をばし、淡い水のドレスに包まれたその姿は、まるで人形のような可らしさがあった。

「大まかな報告はけたぞ、ブランディ卿。『次代の明星』のコルベッリを捕縛したらしいではないか。秀才なそなたが連れているそこの者たちにコルベッリを凌駕する天才がおるのか?」

朗らかな聲とは裏腹に、カンザスからエインズに移る國王の視線は、まるでその者の本を暴くかのような鋭さを帯びていた。

「ライカ嬢はわしも覚えておる。キリシヤとも友好を深めているそうだしな。その後ろの二人を見たことがないぞブレンディ卿」

國王の言葉で淡い水のドレスをにまとうの目じりを微かに下げる。

の名がキリシヤだと理解するエインズ。

キリシヤの表にライカも微かに口角を上げる。

「はっ! 彼らには私の騎士隊も娘も命を救われております。コルベッリを相手に一人も被害をけておりませぬ。加えて、娘の報告ではコルベッリに何一つ反撃を許さず撃退したとか」

「それはまことか!」

カンザスの言葉に國王は肘掛を摑み、わずかにを乗り出す。

両脇の青年もキリシヤも驚きを表す。

「はっ! 今回連れ參ったのは、彼らの紹介と合わせて、事の説明をと思いまして」

「なるほどのう。それがまことなら是非とも話を聞きたい」

そう語る國王の視線の先にあるエインズはというと、

(この広間、作為的な何かをじるな)

すでに玉座に並ぶ四人から目を離し、広間を観察し始めていた。

じ取っている。魔・魔法的要素が絡んでいるこの広間を漂う一定の魔力を。

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