《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》12
「(詠唱はなかった。……無詠唱魔法に至った魔法か? いや、それにしては俺が知らないほどの複雑な効果だ、それはない。ではなんだ、あれは、なんだ?)」
両手が錠にかけられていることもあり、激痛走る右手を左手で覆うこともできず、コルベッリは顔を歪ませながら黙する。
「……黙するくらいなら鳴くがよい」
リーザロッテの発言後、コルベッリの右中指も生気を失う。
「ぐぁあああが……」
コルベッリの右目から自然と涙が流れる。顔の右半分だけが、痙攣を起こしてしまいそうなほどに強張る。
「我慢するな。鳴くついでに答えればいいのだ。優しかろう妾は。開かない貴様の口を開かせてやっているのだ。謝せよ」
「はぁ、はぁあ。……原典シリーズの原本を一冊『次代の明星』で保管している」
「なるほど。それで?」
「……」
「……。しがるではないか。卑しい豚め」
続く右薬指に激痛。
加えて小指が朽ち果て、ポトリと床に落ちると灰となって消えてなくなった。
Advertisement
コルベッリはこの牢にって初めて痛みでんだ。
自分の右手が使いにならなくなってしまった姿。燃えるような熱さ、潰されたような激痛、それらがコルベッリを襲う。
「ほら、そのまま口をかせばいいのだ。それだけで妾は満足できる」
そんな痛みから解放されたいコルベッリには、傲慢に見えたリーザロッテのしい聲が、その言葉が心地よく耳に屆く。
「一冊を、複數に分斷し、魔力源としての聖として、俺たちは原典を持っている……」
かすれた聲で答えたコルベッリ。その右目からは絶えず涙があふれ、冷たい床の巖を濡らす。
「愚鈍なやつめ。貴様らの文化をここまで発展させた要因の一つである原典をまるでとして扱うとは」
「……もういいだろう。これであんたの質問には答えただろう」
「たしかに」
リーザロッテは自分の指の爪を見やり、しびてきたので切らねばと思いながら短く答える。
「……それに、時間もないんだろう? さっきのもう一人の方のが言ってたじゃないか。早く帰ったらどうだ」
コルベッリは自分の今の様子にまるで興味なさそうに爪を見やるリーザロッテに恐怖した。
これまでの拷問とはまるで違う。彼らはコルベッリを痛めつけようという意志で行を起こす。痛みによる脅迫として拷問を行っていた。
対して目の前のリーザロッテはどうか。
リーザロッテは、コルベッリに行っている事を拷問として認識していない。コルベッリは口を開かない。それならば口を開かせればいい。
口が開いたのなら聲を出させればいい。激痛を與えれば聲も出るだろう。絶も聲である。
「(このは止めなければどこまでもやる)」
右手の指がなくなれば、左手、右足、左足。指がなくなれば、そこから徐々に上に移していけばいい。
その結果四肢が無くなろうが、口が開くならば、聲が出るならば、それでいい。
そんな恐怖を、狂気をコルベッリはリーザロッテからじていた。
「あぁ。ミレイネとの會話を言っているのか。それなら安心するがよい」
リーザロッテは、何をつまらないことを聞くのだと言わんばかりに、ぶっきらぼうに話す。
「ここで貴様と過ごす時間も、そのドアの外にいるミレイネにとっては瞬きほどの時間に過ぎない」
「は?」
リーザロッテの言葉に、コルベッリは右手の痛みも忘れて腑抜けた聲がれる。
「うん? 時間の心配をしていたのだろう? 安心しろ。時間の流れなど妾にとって何の縛りにもならん」
「……ありえない!! 時間のきに干渉する魔法など存在しない!! 俺を馬鹿にするな。時間も忘れて俺をげたいのならそう言え! その方が數倍もましだ!!」
コルベッリは自らを魔師と稱している。実力は備わっていないが、それでも魔法に関する知識と誇りは優れた魔法士レベルで有している。
それがゆえに、時間に干渉するというある種おとぎ話のような、いや魔法士相手に語るとなるとそれはひどい侮蔑そのものである。
時間の流れに干渉する。誰もが夢に見る事象。若き年は早く大人になりたいと思い、老い先短い者は時間の進みに恐怖する。幸せな時間も殘酷な不幸せも平等に時間の縛りの中で過去となっていく。
多くの魔法士がそんな夢を見て、夢に焦がれ、そして夢に溺死した。
數々の魔法士が何の果も生み出せず、その生涯を無為に終わらせた殘酷なる桃源郷。
そんな歴史を知っているコルベッリ含む、魔法士の誰もがリーザロッテの言葉に憤慨するだろう。
「何を一人で喚いておる。誰も魔法だなんて言っておらぬだろう?」
「魔法じゃなきゃなんだって言うんだ! 魔道とでも言いたいのか! はっ、いつの間にそんな神が出來たのか教えてくれよ!」
先ほどまで激痛で苦しんでいた右手と錠で固定された左手で機を思い切り叩くコルベッリ。
リーザロッテへの恐怖も、右手の激痛も、激しい怒りにかき消される。
「……魔だよ」
「魔? はっ、魔師の俺でも知らん魔なんて——、」
出鱈目を抜かすな! と言おうとしたコルベッリの脳裏に一人の年が浮かぶ。
その年は謎の右腕を発現させ、謎の力でコルベッリらを圧倒した。
『限定解除 奇跡の右腕』。あの不気味さを思い返すだけで激しい悪寒に襲われる。
「貴様も見たのだろう? エインズの右腕を、魔を」
「ま、まさか、あんた……」
「まあ時間への干渉は付隨的な効果ではあるが……。一つ直接見せてやろう、代償に貴様の両手をもらうぞ」
機を叩きつけた狀態のまま固まっていたコルベッリの右手を、リーザロッテは持っている扇子でパンっと軽く叩く。
「まず一つ、自分の右手に注目しておくことだ。払う代償分しっかりと観察するがよい。——限定解除『任意流転(フロー) 加速(アクセル)』」
エインズと同じ別次元からの力の行使。
怒りに支配されていたコルベッリもリーザロッテの聞き覚えのない詠唱を耳にし、我に返る。
恐怖や不気味さ、完全には消えぬ怒りや期待。それらがぐちゃぐちゃに複雑に絡み合ってコルベッリは吐き気を催しながらも堪え、震える右手を注視する。
リーザロッテの魔がコルベッリの右手を対象として発する。
直後、コルベッリは右手の側、管を流れるや手を構する無數の細胞が沸騰していくのをじた。
皮の外側から焼かれるものとは違う。
同じなのはそこに激痛を伴うこと。
「ぐあぁ、っあああが!」
目から涙があふれる。先ほど干からびた彼の指同様の現象。
「どうだ? 先ほどよりし加速度を下げてみたが、しっかり味わえておるか?」
コルベッリの右手は絶えず変化している。錠をかけられた手首から先、その部分のみが地獄に放り出されたように生命が奪われる。
のもらず風も通らない鬱な牢をコルベッリの絶が占めていた。
それを恍惚とした表で眺めるリーザロッテ。
を枯らし、潰し、それでもコルベッリは止まらない。壊れた玩のように鳴り続ける。
それをさもの囀りのように楽しむリーザロッテの不気味さも今のコルベッリにはどうでもよいこと。
コルベッリのそれがしばらく続き、そして、枯れた。
【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】
※書籍化が決定しました! GA文庫さまから、好評発売中! 書籍化に伴いタイトルが変更になります! (舊タイトル「【連載版】「あんたが神作家なわけないでしょ」と幼馴染みからバカにされたうえに振られた) 陰キャ高校生【上松勇太】は、人気急上昇中大ベストセラーWEB小説家【カミマツ】として活動している。 ある日勇太は、毎日のように熱い応援を送ってくる幼馴染が、自分のことが好きなのだろうと思って告白する。しかしあえなく大玉砕。 「ぼ、ぼくが作者のカミマツなんだけど」 「はあ?あんたみたいなオタクと、神作者カミマツ様が同じわけないでしょ!?」 彼女は勇太ではなく、作品の、作者の大ファンなだけだった。 しかし、幼馴染みはのちに、カミマツの正體が勇太と気付いて後悔するが、時すでに遅し。 勇太の周りには、幼馴染よりも可愛く性格も良い、アイドル聲優、超人気美少女イラストレーター、敏腕美人編集がいて、もはや幼馴染の入る余地はゼロ。 勇太は自分を認めてくれる人たちと、幸せ作家生活を続けるのだった。
8 61【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです
俺には五人の姉がいる。一人は信仰を集める聖女、一人は一騎當千の女騎士、一人は真理を求める賢者、一人は人々の魂震わす蕓術家、一人は國をも動かす大商人。才知に優れ美貌にも恵まれた彼女たちは、誰からも愛される存在だったのだが――俺にだけ見せるその本性は最悪だった。無能な弟として、毎日のように姉たちから罵詈雑言の嵐を受け続けてきた俺。だがある日、とうとう我慢の限界を迎えてしまう。 「とにかく、俺はこの家を出るから。もう決めたんだ」 こうして家を出た俺は、辺境の都市で冒険者となった。こうして始めた新生活で気づく。あれ、俺ってもしかして超有能……!? 実力を評価され、どんどん出世を重ねていく俺。無能と呼ばれ続けた男の逆転劇が、いま始まった! ※GA文庫様より書籍化が決定、1~5巻まで発売中!
8 126Relay:Monsters Evolve ~ポンコツ初心者が始める初見プレイ配信録~
何の根拠もなく「これだ!」と、とあるオフラインのVRゲームの初見プレイを配信する事を決めた能天気な無自覚ドジっ子なサクラ。 いざ人任せにしつつ配信を始めたら、なんでそんな事になるのかと視聴者にツッコまれ、読めない行動を見守られ、時にはアドバイスをもらいつつ、ポンコツ初心者は初見プレイでの珍妙なゲーム実況を進めていく! そんなサクラが選んだゲームは、現実に存在する動植物を元にして、モンスターへと進化を繰り返し、最終的に強大な力を持つ人類種へと至る事を目的としたゲーム『Monsters Evolve』。 そのオンライン対応版のVRMMO『Monsters Evolve Online』がサービスを開始して少し経った頃に、VR機器そのものに大幅アップデートが行われ、タイトルに制限はあるがリアルタイムでの配信が解禁されたものである。 これはオフライン版の『Monsters Evolve』を描く、もう1つの進化の物語。 カクヨムでも連載中! pixivFANBOXで先行公開も実施中です! また、本作は『Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜』の関連作となります。 関連作ではありますがオンライン版とオフライン版という事で話としては獨立はしていますので、未読でも問題はありません。 もしよろしければオンライン版の話もどうぞ。 https://ncode.syosetu.com/n7423er/
8 116やっと封印が解けた大魔神は、正體を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~
【主人公最強・ハーレム・チートスキル・異世界】 この作品には以上の要素がありますが、主人公が苦戦したり、キャラクターが死亡したりと、テンプレにはあまりない展開もございます。ご注意下さい。 それゆえの熱い物語を書く予定であります。 世界はまもなく、激動する―― 大魔神たる僕が、封印から目覚めたことによって。 魔王ワイズ率いる、魔物界。 國王ナイゼル率いる、人間界。 両者の存在によって、世界は危うくも均衡を保てていた。どこかで小規模な爭いはあっても、本格的な戦爭になることはなかった。 僕――大魔神エルガーが封印から目覚めることで、その均衡はちょっとずつ崩れていく。 なぜ僕は封印されていたのか。 失われた記憶にはなにが隠されていたのか。 それらすべての謎が解き明かされたとき、世界は激動する…… けど、僕は大魔神だ。 いくらスケールのでかい事件だって、神にかかれば解決できるはず。 ――面倒だけど、なんとかしてみよう。
8 139うちの姉ちゃんはこわい
たいせつな、三輪の花。 うちには三人の姉ちゃんがいる。 みんなかわいくて、みんなこわいんだ。
8 157俺の大好きなアイドルが妹だった?!(仮)
ストック準備中 日本、いや世界中に愛されるアイドルがいた。その名もMain。リーダーのあいを含む3人ユニット。 そんな人気アイドルのあいが何と俺の妹だった?! ただのメガネ妹が自分の大好きなアイドルだと知った主人公、坴(りく)の日常ストーリー。
8 136