《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》15

ダリアスは、吹っ飛ばされ大きな音を上げ壁に衝突したエインズに、タリッジの勝ちを悟る。

ダリアスに反してタリッジは眉間にしわを作りながら砂煙の方をじっと見つめる。

「(不愉快だが、肋骨を砕いた手ごたえもなければ手首を砕いた手ごたえもねえ)」

ダリアスに答えることもなく見つめる先で砂埃が晴れる。

そこには平然と立ち、口の中にった砂を必死に吐き出そうとしているエインズがいた。

「エインズさん! ……よかった」

「そうですね、キリシヤ様」

キリシヤは安堵に、再び腰を下ろす。

「……やはり捉えきれてなかったか」

いまだ口の中に若干砂をじて苦い表を見せるエインズだが、口をゆすがないと取り切れないと諦めて剣を構える。

「なるほどね、一撃の重さに特化した攻撃か。ソフィアとは違う剣士のようだね」

タリッジが剣王の実力に至れた大きな理由は、その類まれなるその強靭なにある。魔法士が魔力総量という先天的才能が必要だとすれば、剣士の先天的才能はと言わざるを得ない。

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腕が長い者はその分、リーチで相手に勝る。優れた腱や筋の付きやすいは、瞬発的な力は勿論、発的な力を潛在的に有している。

タリッジの剣士としての大はこれにあった。魔力作におけるセンスは並だとしても、強化されるが類まれなる才能の塊であるのならばその脅威は凄まじいものとなる。

タリッジは剣王クラスである。

エインズはタリッジのその実力を読み取った。

において恐らくソフィアに遠く及ばない。しかし、その剣を補う以上の脅威たらしめるこそがタリッジの実力。

いまだ高ぶらないエインズだが、反撃の勢を取る。

その目はタリッジを捉える。

タリッジもエインズの目を見る。その目は冷たいが、大剣を持つ手の平がじわりと汗ばむ。

「(……次のやり取りが最後かもしれんな)」

汗ばんだ手のひらを互にパンツで拭い、分厚い皮に傷痕殘る手で剣を握りしめる。

遠く離れた端からエインズは駆ける。

無理のない重心移に、合理的なかし方、そして比類なき魔力作によって為される強化はエインズのきを常人では捉えきれないものまで昇華させる。

タリッジが踏み込んだ時のような小発は起きない。

地面の砂が舞ったと思った剎那、エインズの姿はそこから消える。

タリッジがエインズを次に視認した時にはすでに懐近くまで近接していた。

「……ぐっ!」

タリッジは自らがせる最大限の強化を、その腱と筋にかける。強引な強化は関節に多負荷をかけるが、そこまで考慮している余裕は今のタリッジにはない。

一般人ではまともに振ることも出來ないその大剣をタリッジは一瞬で振り上げる。

懐近くまで飛び込んだエインズだったが、タリッジの強引なきに舌打ちをしそうになる。

ここから剣を振るうエインズと、すでに構え終わり振り下ろすだけのタリッジでは軍配が上がるのは間違いなくタリッジ。

そこでエインズは、タリッジが振り下ろした直後の隙を狙うことにした。だが、攻め気を無くせばタリッジにづかれてしまう。故に最後まで剣を振りぬく意思で臨む。

エインズの予想通り、エインズの一足も二足も先にタリッジの振り下ろされた大剣が西日を浴びて、真っ赤に染まる殘像を殘しながらエインズに迫る。

回避する気配は隠しつつ、そのきを頭にれていたエインズはすぐに橫へ一歩躱す。

タリッジの大剣はエインズを捉えられず、彼の先いた地面をえぐるに留まった。

(これで終わり……)

エインズのそこに喜びはなく、やっと終わるといった解放だけがある。

回避した勢から足を踏み込んで一閃しようとエインズがきを取った瞬間だった。

足元の地面が膨れ上がる覚が彼に得の知れない危機を覚えさせる。

「……なっ!」

エインズはその視界に捉えた。

先ほど橫に一歩飛んだことによって回避したタリッジの大剣が、空を切り地面を叩きつけたままその勢い止まらず、地面を抉り強引にすぐ橫のエインズの目掛けて地中から鈍い刃をらせていることを。

タリッジに一撃食らわさんとしていたエインズの片手剣は、タリッジのにその刃を向けることなく、地中からの重い一撃への防態勢を取っていた。

砂塵を巻き上げながらびる大剣とエインズの片手剣が激しくぶつかり合う。

「……っ!」

エインズは左手に強い痺れをじながら後方へ弾かれる。

強引な追撃をしたタリッジは今度こそ大きな隙を見せるが、弾かれたエインズは剣の間合いからすでに離れていた。

加えて、

上方へ弾かれた左手が持っていた片手剣はその半ばから真っ二つに折られ、その半は宙を舞っている。

いまだ勢を整えていないタリッジだが、その顔は勝利を確信していた。

「タリッジ、よくやった!」

座っていた椅子から飛び上がるダリアス。

対して、宙を弱弱しく回転しながら舞う半分の刀が宙に浮かび上がってしまっているエインズを不安そうに見つめる三人。

破壊をしてしまえば、獲があるタリッジが優勢。なんならば、審判役を買っているハーラルがそのまま勝敗を決してしまうまである。

(本當に面倒くさい! 魔法を使っていたならこんなチャンバラごっこ、剣をえずとも終わっていたのに! だけど、その勝ち誇った顔も不愉快だ)

エインズはまだ終わっていなかった。

先を失った片手剣をタリッジの顔目掛けて投げる。

「無駄な足掻きをっ!」

それを肩から上だけのきで躱す。

エインズはその間に一度右足で地面を蹴ると、魔力作で強化してある左腳義足で宙を舞っている剣の片割れを蹴り飛ばす。

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