《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第4話 「そうか、追放は父上からの試練なんだ」~勘違いの始まり~

僕の魔法陣から出現したのは、巨大な炎の球。深紅に眩く輝いていて、部で凄まじいエネルギーが渦巻いているのが分かる。強大な魔力に周りの大気が震えている。

僕は、巨大なファイアーボールをミノタウロスめがけて放つ。周囲の木や草を燃やしながら、ファイアーボールが一直線に飛翔していく。

『ブモオオオオオォ!!』

ミノタウロスが斧を捨て、両腕をクロスさせて防する。

――しかし、そんな防はまるで無意味だった。

”ズッッッドオオォォン――ッ!!”

ファイアーボールがミノタウロスに著弾した瞬間。眩いとともに中にめられていたエネルギーが迸り、ミノタウロスを、地面を、周囲の樹を、焼き盡くす。

地面が震え、風が木々を揺らす。森中の木から、一斉に鳥が飛び立つのが見えた。

――

―――

――――風が収まると、ミノタウロスは跡形もなく消えて、破壊の跡だけが殘っていた。唯一殘っている痕跡は、ミノタウロスが持っていた斧だけだ。それも、高溫でドロドロに溶けて斧としての原形をとどめていない。

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ミノタウロスが居た場所には、地面に出來た巨大なくぼみだけがあり、高熱で土が融けてマグマのようになっている。

周囲の樹も燃え盡きて、小さな広場のような開けた空間ができてしまった。

「なんて破壊力だ……!」

騎士さんの誰かが、呆然とそう呟いた。

現存する魔法は、この世に存在した最初の魔法【源魔法】を誰でも扱えるようにパワーダウンさせ、種類を増やすということを繰り返して作られてきた。

きっとこれが、パワーダウンする前の本來の【源魔法】の威力なのだろう。現代の魔法とは出力が違い過ぎる。詠唱も不要なので、使い勝手も非常に良い。

もう疑いようはない。【源魔法】は、強力な才能(ギフト)だ。恐らく、【剣聖】以上に。

馬車からもファイアーボールでミノタウロスを倒したのが見えたらしく、馬車が引き返してきて目の前で止まる。

そして、マリエルが飛び出してきた。

「メルキス、無事で良かった!」

抱きついてくるマリエルをけ止める。その顔は、涙でぬれていた。

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「良かった……メルキスが無事でよかったよ……!」

マリエルが僕のに顔をうずめる。

……こんなにも僕を心配してくれる人がいたなんて。僕の心に、暖かいものが染みってくる。

「それでメルキス、何をしたの? すごい発で、ミノタウロスが一撃で消し飛ぶのが見えたけど」

「授かった才能(ギフト)【源魔法】の力を使ったんだ。父上にはハズレ才能(ギフト)って言われちゃったけどね」

「いやいやいや! ハズレ才能(ギフト)の訳ないでしょ! ミノタウロスの斧を弾き返したり、一撃で地面ごとミノタウロスを消し飛ばしたりしてさぁ!」

マリエルが指さす先では、地面がまだグツグツと煮えたぎっている。

「我々もそう思います! あれだけの強力な魔法、我々も見たことがありません! 恐らく、メルキス様は副団長である父をも超えて……」

「いえいえ、僕はまだまだ偉大な父上には及びませんよ」

まだまだ偉大な父上には追いつけないが、【源魔法】は強力だ。しかも、これから【源魔法】は魔法の効果をコピーして、無限に長していく。

とても、”ハズレ才能(ギフト)”とは呼べない。

しかし、いつも『優秀な才能(ギフト)を授かれ』と僕に言い聞かせていた父上が、才能(ギフト)の本當の力を見抜けないはずがない。

「だったら、何故僕は追放されたんだ……?」

……そうか、分かったぞ! 父上は『この試練を乗り越えて一人前になれ』という考えで僕を実家から追放したんだ!

それなら全ての辻褄があう。

確かロードベルグ家には、未な者を一度過酷な環境に追いやって鍛えなおす修行法があった。この修行なのだろう。

繰り返しになるが、偉大な父上が【源魔法】の可能を見抜けないわけがない。

獅子は子を谷底へ突き落すというが、まさにそれだ。

源魔法】は強力だが、使い手である僕があまりに未だから、心を鬼にして僕を田舎の小さな領地へ追放したんだ。

そもそも、これまであんなに優しかった父上が急にあんなに冷たくなったのがおかしかった。あれは、僕を追い詰めるための演技だったんだ。

でなければ、まるで父上が、『伯爵家の利益のためだけに息子を育てた、才能を見抜く目もない強なマヌケ』ではないか。

弟のカストルも、きっと父上が演技していることを察して合わせてくれたのだろう。本當によくできた弟だ。

【剣聖】の力を手にれたカストルは僕を攻撃したが、あれも僕を追い出すための演技だ。

「カストル。僕はお前のことを『力を手にれた瞬間調子に乗る小』だと誤解してしまった。許してくれ……!」

カストルは決して『力を手にれた途端調子に乗る小』などではなかった。本當に良かった。

父上は最後に『村で領主の真似事でもしていろ』と言っていた。つまり、領主として村を大いに発展させることが、僕に與えられた試練なのだ。

……正直、ロードベルグ伯爵家を追放すると言われた時、剣で斬りつけられたとき、父上とカストルを恨んでしまう気持ちもあった。

父上、カストル。一瞬でもあなた達を恨んでしまった、未な僕をどうかお許しください。

きっと父上とカストルも辛かったはずだ。

僕はまだ本當にロードベルグ伯爵家を追放されたわけではない。僕は必ず村を國で1番発展させて、1人前になって見せる!

「ねぇメルキス? さっきからぼーっとしてどうしたの? 何か考えごと?」

マリエルが僕の頬を指でつついてくる。

そういえば、さっきからずっと気になっていたことがある。マリエルは、なぜこんな辺境の村に引っ越すことを決めたのだろうか?

今ならわかる。これも、僕が父上から與えられた試練なのだ。

――ロードベルグ伯爵家の教え其の17。『一人前の騎士たるもの、自分のしたを守り抜けるくらい強くあれ』。

父上もよく、この教えを口にしていた。つまり、一人前になるために、村にいる間は婚約者であるマリエルを守り抜けということだ。

マリエルも、隠しているが僕の試練に協力してくれるために、わざわざこんな辺境の村まで來てくれたのだろう。

たかが伯爵家の息子の試練のために、第四王に辺境の村に引っ越してくれというのはあまりに無茶な話だ。きっと父上、この試練を行うために何度も何度も國王陛下に頼み込んでくれたのだろう。

『國王陛下! どうかマリエル第四王様に、我が息子の修行にご協力いただきたく………!』

『ならん! 大事な我が娘を、そんな辺境の村に引っ越させることなどできんわ!』

『そこをなんとか! 我が息子が一人前になるための修行には、マリエル第四王様の協力が必須! 我が息子は、最強の才能(ギフト)【源魔法】を授かっております! 我が息子が一人前となれば、必ずや陛下の大きな力になります! なにとぞ、なにとぞお考えを……』

『う、うーむ。お前ほどの男がそこまで言うのであれば……』

僕の頭の中に、渋い顔をする國王陛下に、何度も何度も必死に頭を下げてマリエルに修行の協力を頼み込む父上の姿が浮かぶ。

……僕は、していた。

父上が、僕のためにここまで力を盡くしてくれていただなんて。

ありがとうございます、父上。僕は必ずこの試練を乗り越え、強くなって見せます。

「マリエル。(試練として)君のことはこれから僕が守るよ」

「ふぇ!? きゅ、急に何を言っているのメルキス!?」

第四王であるマリエルを守れずケガをさせたとあっては、とんでもない失態だ。絶対にそんなことにはさせないぞ。

「君のことは、誰にも傷一つ付けさせない。命に代えても、僕が守り抜く」

マリエルは、顔を真っ赤にして頭から湯気を噴き出していた。

……風邪かな?

そして後ろに飛び跳ね、逃げるように馬車に飛び乗った。

「そそそそんなことよりも! もうすぐ村に著くんだから、早くいこう!」

そう言い殘して、さっさと馬車を走らせて行ってしまった。

僕も自分の馬車に戻り、後を追って村へと向かう。

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