《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第5話 村人を病から救う試練(勘違い)に挑む
「ねぇメルキス、この村、滅びかけてない?」
「うん。僕もそう思う」
僕とマリエル達は、僕に與えられた領地”ソルダリ村”に著いていた。
だが、村には人が全然いない。
マリエルと護衛の騎士たちと一緒に、村をざっと見て回る。質素ながら、教會・冒険者ギルド・酒場・商店などの施設は一通りそろっているように見える。しかし、どこを覗いても人が全然いないのだ。
そこでやっと、村人を見つける。修道服姿のの子が、井戸で水を汲んでいる。
の子もこちらに気付いたらしく、駆け寄ってきた。
「初めまして、この村でシスターをやっているリリーと申します。皆様は、この村の者ではありませんね? 申し訳ないですが、”ホワイトハーブ”をお持ちではないでしょうか?」
”ホワイトハーブ”。狀態異常解除の効果を持つ、高級薬草の一種である。それがどうしたのだろう?
毒などを持つモンスターに遭遇した時に備えて、ホワイトハーブは持ってきている。僕はカバンのなかからハーブを1つ取り出す。
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「あぁ! まさか本當にお持ちだとは……! どうか皆様、一度教會にお越しくださいませんか? そこで、今村に起きていることを説明させていただきます」
リリーさんに案されるまま、教會に足を踏みれる。するとそこには、沢山の住人が寢かされていた。
機はどかされ、床に敷いたシーツの上で老若男問わず住人がうなされている。どうやら全員、何らかの病気らしい。
中には、若い筋骨隆々の男もいる。あんなに頑丈そうなでも、病には勝てないということか。
「村では今、”フラスエン病”という病が流行しています。それを治すために、ホワイトハーブが必要なのです」
フラスエン病は僕も知っている。死に至る病で、昔はいくつもの街がこの病で全滅したという。
絶に功したと聞いていたが、まだ殘っていたとは。
「ゲホッ! ゴホッ!」
寢かされた1人の村人が咳き込む。口からは、がれていた。
「いけません、すぐに良くします!」
リリーさんが魔法の詠唱を始める。
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「発、”ローキュアー!”」
村人を、淡い緑のが包む。
”ローキュアー”。
狀態異常を回復する魔法の一種をリリーさんが発した。
だが、咳は収まったものの村人の顔は良くならない。
「……村で回復魔法が使えるのは、私だけです。しかし私程度の下級魔法”ローキュアー”では、病狀を和らげることしかできません……」
つらそうな顔でリリーさんは話す。
「旅のお方。どうか、ホワイトハーブをお譲りください。私にできることは、なんでもします!」
リリーさんは深々と頭を下げる。
「毎日魔力が枯れるまで回復魔法を使っても、皆さんの死を遅らせることにしかならないと私は分かっていました。それでも、苦しむ皆さんを見捨てることはできませんでした」
リリーさんが悔しそうに拳を握り締める。その手には、看病のためかマメがたくさんできていた。
「その量のホワイトハーブで助けられるのは2、3人だけですが、1人でも救えるなら――」
その時、リリーさんが咳き込む。修道服の元が、で濡れていた。
「そうですか、ついに私も病に侵されてしまいましたか……。もう永くはないでしょう」
しかしリリーさんの瞳には、恐怖はない。
「このではもう大した禮をすることは出來ませんが、どうかホワイトハーブをお譲り下さい。そうすれば、ここの病人誰か1人は救うことができるでしょう」
……なるほど、僕はやっと理解した。
これもまた、父上からの試練だ。
村人が病気というのも、すべて演技だろう。
領主代理を立てていたとはいえ、偉大な父上が村がこんなヒドイ有様なのを放置するわけがない。
領主として、まずは村を病から救って見せろということなんだろう。
しかし、ホワイトハーブ1つでは1人しか助けることはできない。このホワイトハーブを渡すことは簡単だが、はたしてそれで試練をクリアしたことになるのか……?
いや、出來る。
僕は今さっきリリーさんに”ローキュアー”を見せてもらった。【源魔法】の力で、”ローキュアー”もコピーできている。
『
【源魔法】
〇使用可能な魔法一覧
・ファイアーボール
・ローキュアー[New!!]
』
「僕が治します……”ローキュアー”発!」
さっきの”ファイアーボール”を発した時と同じく、巨大な魔法陣が出現。
「え、詠唱無しで魔法をお使いに!?」
リリーさんが口元に手を當てて驚く。
村人のを、迸る緑のが包みこんでいく。
「……なんだ? 急にが楽になったぞ?」
キョトンとした顔で、村人が起き上がる。病気は完治したようだ。
「旅のお方。今、何をしたのです……?」
事態を把握できていないリリーさんが聞いてくる。
「回復魔法”ローキュアー”を使いました」
リリーさんが目を丸くして驚いている。
「一度で完全治癒させるだなんて、なんという威力……! いえ、それよりも! 貴方が”ローキュアー”を使えるということは……」
「はい。全員魔法で助けることができます」
リリーさんが涙を流して崩れ落ちる。
「よかった、よかった……!」
リリーさん、演技に力がってるなぁ。
移してこっちまで泣き出してしまいそうだ。
「あなたはよく頑張った! 立派なシスターよ!」
マリエルは號泣しながらリリーさんの肩を抱いている。昔からマリエルはに脆いところがある。でもちょっとり込み過ぎではなかろうか? マリエルも、村人がみんな演技しているということぐらい、父上に聞いているだろうに。
護衛の騎士さんたちも涙ぐんでいる。
――數時間後には、村人達全員の病気を治すことができた。
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
リリーさんはさっきからずっと頭を下げてくる。
「あの、禮は何をすればよろしいでしょうか……? 教會も資金繰りが苦しく、とても見合った禮をすることなどはできそうにないのですが……」
僕は分かっている。これも父上の試練だ。
――ロードベルグ伯爵家の教え其の25。『困っているものがいれば、無償で手を差しべよ』。
ここで、家訓のとおり無償で人助けをできるのか、僕のが試されているのだ。
もしもリリーさんに『じゃああるだけのお金ください』なんて言ったらどうなるか。
演技をやめたリリーさんに『はい殘念でした、試練失敗でーす。お前みたいな強野郎はこの村の領主にふさわしくありませーん。一昨日お越しくださいベロベロバー』と村を追い出されるだろう。
そして王都で待ち構えていた父上に『人を助けた見返りに金を要求するとは何ごとだ! ロードベルグ伯爵家の恥さらしめ! 説教36時間コースだ!』と怒られること間違いなし。
そして、それだけで済まされない。
きっと僕は
きっと僕は――
本當に実家から追放されてしまう……!
ああ、考えるだけで恐ろしい。
実家追放なんてされたくない!
絶対にそんなことは避けなければ。紳士的に、ロードベルグ伯爵家の一員として恥ずかしくないけ答えをしなければ。
「いえ、困っている人を助けるのは當然のことです。禮をけ取るほどたいしたことはしていませんよ。では僕はこれで」
「そうはいきません!」
「ぐえっ」
リリーさんが僕の服の襟首を摑んで引き留める。
「せめて、ないですが私のオヤツ代をおけ取り下さい!」
「いえいえ、お気持ちだけで結構です!」
僕は斷固として斷る。
『まぁ銅貨數枚くらいならけ取っても……』などと甘い考えでけ取ってしまったらどうなるか。
やはり実家から追放されてしまう……!
病気が治った(フリをしている)村人たちも起き上がる。そろそろネタバラシをしても良いと思うのだけど……。
「「旅のお方、本當にありがとうございました! 俺達からもぜひ禮をさせて下さい!」」
と言って、々なものを差し出してくる。お金、裝飾品、剣、鎧。村人の中には冒険者もいるみたいだ。
だが、ここで『ありがたく頂戴します』と言ったらどうなるか。
『試練不合格だぜ! まみれのガキンチョは俺たちの領主に相応しくねぇ! 王都に帰って実家の草むしりでもしてパパに小遣い貰ってな!』
と村を追い出されること間違いなし。これが試練だということを忘れてはいけない。
「いえいえ、本當に禮は結構です」
「すげぇよ、俺たちみんなの命を救ってくれたっていうのに見返りを一切求めないなんて。がデカすぎる……!」
「俺も來世ではあんなカッコイイ男になりてぇぜ!」
「一どんな教育をけたらあんなに綺麗な心の持ち主になるんだ」
冒険者達が涙を流しながら天を仰ぐ。この人たち、凄い力のった演技をするなぁ。
「そう、私の許嫁はそういうの大きくて綺麗な心の持ち主なんだ! 凄いでしょ!」
とマリエルが何故か誇らしげにを張っていた。恥ずかしいからやめてほしい。
村人達は演技でやってるだけなんだってば。
「分かりました。禮をすることは諦めます。ですがせめて名前を! 名前を教えていただけないでしょうか!?」
「そういえば、名乗っていませんでしたね。僕はメルキス・ロードベルグです。今日からこの村の領主を任されました。よろしくお願いします」
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