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捕まえた突然変異コカトリスを全て小屋に収納し終えて、いよいよさっき僕が倒した”超巨大コカトリス”の解に移る。

突然変異コカトリスの飼育を始めて、村の皆さんのおに対する期待は最高に高まっている。口にはしないが、『早く鶏を食べたい！！』という思いがヒシヒシと伝わってくる。

「ああ、早く鶏が食べたいです！　もう待ちきれません……！　ジュルリ」

そして、思いを口にする人もいる。お大好きシスターのリリーさんだ。

「今日は祭りを開いて、村人みんなで腹いっぱいになるまで食べましょう！」

「腹いっぱい・・？　いいんですかい領主サマ！？」

「聞いたかみんな！　新しい領主様は太っ腹だぞ！」

「お料理なんて、普段１週間に１品食べれたら良いほうなのに……夢みたいです！」

村人の皆さんが歓喜の聲を上げる。お大好きなリリーさんに至っては涙ぐんでいる。

村のみんなで協力して、超巨大コカトリスを村の広場に運び、羽をむしり、解していく。

「領主様、むしった羽はどうしましょうか？」

「これだけ大きくて綺麗な羽なら、何かしら使い道がありそうです。空いている納屋にしまっておいてください」

「了解しました！」

超巨大コカトリスの解は、”刻印魔法”で強化された村人さん達でも一苦労だった。何しろ、解した手羽などの１つのパーツが、牛１頭と同じかそれ以上に大きいのだ。

超巨大コカトリスの解が終わり、料理を始められるようになったのは夕方になってからだった。

料理の腕自慢の主婦の皆さんが、腕によりをかけて鶏を調理していく。今日食べきれる分は普通の料理に、それ以外はスモークチキンなどの保存食に加工していく。

「駄目よ、村中のかまどを使っても料理が間に合わないわ！　おの量が多すぎるわ！」

「それでしたら、私も炎でおを焼くのを手伝いますねぇ～」

ナスターシャが、ドラゴン形態になってブレスでを焼きはじめる。

暗くなり始めた広場に、村人の皆さんが自宅から持ってきてくれたテーブルがずらっと並ぶ。その上を、鶏料理が埋め盡くす。

「図書館に料理の本があって良かったわ！　おかげでいろんな料理が作れたもの！」

「いろんな種類の野菜が使えるのも嬉しいわ！」

テーブルの上には、いろとりどりの料理が並んでいる。そのどれもが味しそうだ。

「みんな準備はできたよね？　それではメルキス祭りを開始しまーす！　カンパーイ！」

「「カンパーイ！！」」

マリエルが音頭をとると、僕以外の全員がコップを突き上げる。

「待ってマリエル！　祭りに僕の名前を付けないで……！」

「いいじゃんいいじゃん！　そんなことより、メルキスもお食べよ！」

マリエルが、焼いたモモを僕の口に突っ込む。

「モゴ！　……味しい！」

「よね！　普通のニワトリよりもずっとジューシーな気がする！」

王宮で高級な料理を食べなれているはずのマリエルも、笑顔で鶏を頬張っている。それほど味しい鶏だった。普通のニワトリよりもずっとジューシーな気がする。

「俺、一回でいいからだけで腹を膨らませてみたかったんだ！」

「普段はくなったパンで鶏をサンドしてるけど、今日だけは逆にパンを鶏でサンドするぜ！　ああ、最高の贅沢だ～」

「やりますね！　では私は、揚げた鶏を焼いた鶏でサンド！　これが最強の鶏料理です！！　いただきます！　味しい！！」

「馬鹿な、そんな反則的な……！？」

リリーさんが他の村人に張り合って謎の鶏料理を誕生させている。本當におが好きなんだな……。

村人達が楽しそうに鶏を食べているのを見ると、僕も嬉しくなってくる。

「こうして鶏を思う存分食べられるのも、新領主様のおかげです。新領主様最高ー！」

「領主サマバンザイだぜ！」

「ありがとう領主様～！」

村人のみんながお禮を言ってくれるのは、いまだに照れくさい。

鶏料理をたっぷり食べて腹が大分膨れたころ、広場の端の方で何かがぶつかる音が聞こえ始めた。

「どりゃあー！」

「なんの！」

村の冒険者たちが、模擬戦用武を使って戦っていた。

「お祭りの途中でも訓練ですか。みなさん、凄い努力家なんですね……」

「いや、俺たちは腹を空かせるためにをかしてるだけですぜ！」

「え？」

「こうしてをかせば腹が減る！　そしてまた鶏を味しく食べられる！　訓練はそのついでってわけです！」

そう言いながら冒険者さんたちは楽しそうに剣を振るう。

「なるほど、その手がありましたか……！」

話を聞いていたリリーさんが、その場でスクワットを始めた。村のみんなを回復魔法で治療していた時と同じくらい、真剣な顔をしている……！

「メルキス、私達も運しよう！」

と言いながら、マリエルが借りてきた訓練用の剣を振り下ろしてきた。

不意を突かれたがマリエルのパラメータは普通のの子程度なので、余裕でかわせる。『マリエル、王としてもっと節度をもった行を……』と言おうとして、僕はやめた。

せっかくのお祭りなのだ、僕も羽目を外して楽しもう。

「やったなこのー！」

ハンデとして僕は剣の代わりにフォークの柄を使って、マリエルとチャンバラを始める。當然、能力強化魔法は使わない。

「頑張れ領主様～！」

「マリエル様も負けないでー！」

村人達の聲援をけながら、僕とマリエルは何度も木製の剣とフォークをぶつけ、笑いあう。こんなふうにマリエルと思いっきり遊んだのは、一いつ以來だろう。

こうして、最高に楽しい夜は更けていった。

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