《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第28話 【実家SIDE】メルキスの父、神的に限界まで追いつめられる
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「ここは、どこだ……?」
メルキスの父ザッハークは、不思議な空間にいた。
室とも野外ともはっきりしない場所。足元もどこかふわふわしていた。意識もなんだかぼんやりしている。
「ごきげんよう、ザッハークさん♡ 突然ですが、こちらの男に見覚えはありませんかー?」
どこからともなく現れて、ザッハークに甘ったるい聲で話しかけてきたのは、王國憲兵団団長のジュリアンだ。手には、趣味兼仕事で使うムチを握っている。
そして、ジュリアンの隣には魔族の男が立っている。
「フフフ。実は我々魔族は、ザッハーク伯爵と手を組んで人類を滅ぼそうとしていたのですよ」
「まぁ! ザッハークさんったら悪い人♡ お仕置きが必要ですわね♡」
ジュリアンが手にしたムチをスパァン! としならせる。
「ち、違うのだ! そいつが勝手にでっち上げているだけだ! 俺は魔族などと手を組んだりなどしていな――」
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「ザッハーク伯爵は私とともに、メルキスの村に洗脳したレインボードラゴンや品種改良したコカトリスを差し向けました。いずれ人類の90%も共に滅ぼそう、と約束しました。フフフ。とんでもない悪黨ですよ、ザッハーク伯爵は」
「き、貴様ぁ!!」
「あらヤダ、人類を滅ぼそうとするなんて重罪じゃないですかザッハーク伯爵♡ これはどんな罰を下しましょう、國王陛下?」
どこからともなく、豪奢な裝にを包んだ國王が姿を現す。
「決まっておるであろう! 処刑じゃ処刑! 誰か、処刑臺を持ってまいれ!」
「その言葉、お待ちしていました! さぁザッハーク伯爵! スパーンと行きますよ!」
元気に返事をしたのは、処刑が大好きな王國憲兵団副団長のイリヤ。どこからか、うっきうきで処刑臺を運んでくる。
「う、うわああああぁ!」
ザッハークは走って逃げ出す。その前に、沢山の人影が立ちはだかる。メルキスの村の冒険者たちだ。
「どけえええええぇ!」
ザッハークは剣を抜き、渾の力で斬りかかる。しかし、冒険者はそれを笑いながら指でつまんで止める。
「馬鹿な……!」
ザッハークは愕然とする。
「おっさん、オレと遊ぼうよー!」
今度は、メルキスの村にいた子供が剣でザッハークに斬りかかる。ザッハークは、渾の力で防する。衝撃で、ザッハークは剣を落としそうになる。それほどの威力だった。
「おっさん、【剣聖】のギフトを持ってくるくせに全然強くないな! わかった、オレに合わせて手加減してくれてるんだろ? 優しいな!」
ザッハークは全力だった。それでも、メルキスの村の子供相手に防戦一方で手も足も出なかった。何度か斬り合った後、ザッハークは剣を叩き落とされる。
「この俺が、子供に負けた……!?」
心が折れて立ち上がれなくなったザッハークを、冒険者たちが擔いで、処刑臺へと運ぶ。ザッハークはどうすることもできず、処刑臺に拘束される。
「お久しぶりです、父上」
ザッハークの処刑臺の前に、いつの間にかメルキスが立っていた。
「貴様……一何をしに……!」
「決まっているでしょう。父上を処刑しに來たのですよ」
そう言ってメルキスは殘忍に笑う。
「よくも僕を辺境の村に追放して、村に植魔法使いや盜賊やドラゴンや品種改良コカトリスを送り込んでくれましたね。許しませんよ父上……! 僕のことを”ハズレギフト持ち”と呼んだ恨み、今ここで晴らさせてもらいます!」
メルキスは剣を抜く。
「うわああああああああああぁ!!」
そこで、ザッハークは目を覚ました。
「ハァ、ハァ……夢か……!」
ザッハークは自室のベッドの上にいた。汗で寢巻がぐっしょりとっている。
「俺は神的に追い詰められているのか……! 最悪だ……! なぜ俺がこんな目に遭わねばならんのだ……!」
窓の外を見ると、もう日が昇り始めている。悪夢の続きを観るのも嫌なので、ザッハークはいつもより早く寢室を出ることにした。
「おはようございますザッハーク伯爵。どうしました、顔が優れませんよ?」
応接間では、いつものように魔族の男がザッハークが起きるのを待っていた。
「うるさい。これもすべて、メルキスのせいだ。メルキスさえいなければ……! メルキスさえいなければ……!!」
実際は、メルキスに頭を下げるのが嫌で無理やり連れ戻すため、刺客を送り込んだザッハークのせいである。さらに言えば、そもそもの原因は、『見た魔法を全てコピーできる』力を持つギフト【源魔法】を頭ごなしに『ハズレギフト』と決めつけ、追放したことにある。
だが、ザッハークの頭には自分が悪いという考えは一切なかった。
「何なのだ、あの村人達とメルキスの異常な戦闘力は……! どうやったらあそこまで強力な剣技や魔法が使えるようになるのだ……」
コカトリスの群れを村に差し向けたときのことを、ザッハークは思い返していた。ドラゴンに匹敵する格の超巨大コカトリスの腳をあっさり斬り落とし、蒼の炎で一瞬で焼き盡くした。
あの魔法を自分に向けられたらと思うと、ザッハークはそれだけで震えあがる。
「コカトリスを差し向けた時に、俺は姿を見られた……! メルキスは、同世代の中で頭一つ抜けて剣技が出來たが、同じくらい頭がいい。これまで村に差し向けた刺客が俺によるものだともう気付いているに違いない……! 終わりだ、俺はもう終わりだ……! 今にメルキスがあの異常に強い村人を引き連れてここへやってくる……! そしてあの蒼い炎で俺を屋敷ごと焼き払うはずだ……」
ザッハークは頭を抱えて震えだす。
「フフフ。その心配はありませんよ、伯爵。あと數日で、我々の新しい戦力が用意できます」
「新しい戦力だと……? 馬鹿を言え、例の品種改良コカトリスでさえ、奴らには手も足も出なかったのだ! 今更貴様らが新しい戦力とやらを差し向けても、大して奴らにダメージを與えることなど出來なかろう!」
「これまでは、奴らのことを”たかが小さな田舎の村”としてしか認識していなかったため、戦力を派遣させる許可が下りなかったためです。言ったでしょう、生き殘りの魔族は私だけではないと。前回は私1人が持つ戦力の、それもほんの一部しか使うことしかできませんでした。しかし次は違う。この國の殲滅を擔當する魔族全員が持つ力を、全て注ぐことができます」
魔族の男は、不敵に笑う。
「王都に真っ向から攻めって、攻め落とすことができるだけのモンスターの群れを我々は有しています。本來であれば、來るべきタイミングで王都を落とすために使用する予定のモンスターですが、あの村の脅威は見逃せない。王都を先に落としたとしても、消耗したところをあの村の連中とメルキスに奪還される可能が有ります。ならば、先にあの村を落とし、我々の戦力を増やしたほうが得策でしょう」
ザッハークは、魔族の男がうっかりこぼした『戦力を増やし』という言葉を聞き逃さなかった。
(メルキスの村の土地を手にれることで、魔族は戦力を増幅することができるということか……? まぁ、俺には関係のない話だ。余計な詮索はしないさ)
「ここまで來たのだ、俺も出し惜しみなどしないさ。俺にもまだ1つだけ、奧の手がある。俺がコネクションを持っている幻の暗殺者集団に依頼を出して、魔族がるモンスターの襲撃に合わせて暗殺させよう」
「素晴らしい! ぜひとも我らの悲願を達させましょう」
魔族の男が笑う。
一方で、ザッハークは
(しかし、これまで俺たちは何度も失敗している……ここで失敗すれば、今度こそ後がない……!)
という不安をぬぐえずにいた。
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