《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第29話 【源魔法】は人類の最後の切り札だった

「よーし、完だ!」

村の住宅街に、新しい家が完した。キャト族の皆さん用の家だ。

「ありがとうございますニャ! 新參者のボク達に、新しく家を建ててもらえるなんてありがたすぎますニャ!」

子供程度しか長がないキャト族に合わせて、天井は低くしてある。そのため、他の家よりもかなり背が低い。

「これまで人間用の家を借りて住んでいたことはあるのですが、広すぎて落ち著かなかったのですニャ!」

「わざわざボク達に合わせて家を設計してくれて、ありがとうなのニャ!」

「それからもう一つ、キャト族の皆さんがモンスターの素材を売りに行ってくれている間に用意したものがあります」

僕はキャト族を畑に案する。

「こ、これは――! マタタビニャーーーー!!」

キャト族の皆さんが、目にもとまらぬ速度でマタタビ畑にダイヴする。

「キャト族はマタタビが大好きと聞いて、植魔法”グローアップ”で生やしてみました」

「ありがとうございますニャ! その通り、ボク達はマタタビが大好きなのニャ!」

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「マタタビがこんなに沢山! 幸せなのニャ!」

「しかもこれまでみたどのマタタビよりも質がいいのニャ! きっと領主様の魔法の腕がいいからなのニャ! ありがとうなのニャ!」

マタタビの上でひっくり返ってをくねらせたり寢転がったりして、キャト族の皆さんはとても幸せそうだ。その姿を見ていると、こちらも幸せになってくる。

――その時だった。

『メルキス、聞こえますか。メルキス』

頭の中に、荘厳なの聲が響く

「あれ、ここは――?」

いつの間にか、僕は全く見知らぬ場所に立っていた。

見たことのない、大理石で作られた白亜の神殿に僕は立っていた。

『メルキス。聞こえていますか、メルキス』

神殿の最奧に、それはいた。

黃金の輝きを放つその神々しい姿は、聖書の挿絵や教會のステンドグラスに描かれているものより、遙かにしく、迫力がある。

「まさか、神アルカディアス様……?」

アルカディアス様は、無言で頷いて肯定する。

『メルキス。今私は神界から貴方に思念を送っています。しかし、この方法で貴方と話をできる時間はごくわずか。手短に伝えます。貴方の使命と、今この村に迫っている脅威について』

神アルカディアス様の聲が荘厳に響く。

『貴方に授けたギフト【源魔法】。これは、【勇者】をも超える人類の切り札です』

神アルカディアス様の口から、とんでもない事実が明かされる。

『【源魔法】の適合者が生まれるのを、私は300年待っていました。今の人類で、【源魔法】を持つ資格があるのは、素質と清らかな心を持つ貴方しかいません。メルキス、貴方は300年に一度の逸材であり、人類の最後の希なのです。今はまだ、【源魔法】の力を10%も引き出せていませんが、長すれば勇者を遙かに超える力を持ちます』

「じゅ、10%未満ですか!? 既にこんなに強力なのに!?」

信じられない。

『【源魔法】は、貴方が長すると共に長します。そして今、この村に”魔族”の脅威が迫っています』

「魔族が……? そんな、魔族は300年前の大戦で、【勇者】のギフトを持つ人類の英雄が全て倒したはずでは……!」

『いいえ。300年前、【勇者】は確かに魔族を追い詰めましたが、あと一歩のところで敗北したのです。そして、生き殘った魔族はひっそりと力をつけ、人類を殲滅する計畫を進めています』

衝撃の事実だった。

300年前、【勇者】が魔族を絶滅させたというのは、子供のころから何度も教えられてきた常識だった。それが今、覆されたのだ。

『【勇者】では魔族に勝てない。そう考えて、私は【勇者】を超えるギフトである【源魔法】を生み出し、扱う資格のある者の誕生をずっと待っていました。メルキス、貴方が魔族を今度こそ倒すのです』

僕が魔族を倒す……。

『この村の地下深くには、膨大な魔力が眠る”龍脈”が眠っています。魔族はそれを狙い、この村を襲ってきています。魔族が龍脈を使って何を企んでいるかは不明ですが、絶対に阻止しなければいけません』

「分かりました、人類のためにも、必ず魔族から村を守って見せます」

僕がそういうと、神アルカディアス様は安心したように微笑む。

『それから最後に。貴方は、父ザッハークについて大きな誤解をしています。貴方の父は――』

「はい、分かっています。父は、僕がハズレギフト持ちだから追放したのではないくらい!』

『え? いやちが――』

「父上は、僕の修行のために、そして魔族の狙いがこの村にあることを見抜いて僕をこの村に送り込んだのですよね!」

『だからちが――』

「父上は、ずっと前から魔族の企みも見抜いていたのですね。そして、僕をこの村に送り込む事で、僕の修行と魔族の企みの阻止、この2つを同時に行う。流石です、父上! 以前から凄いことは知っていましたが、こんなに凄かったなんて!」

『メルキス、私の話を聞――ああ、もう時間が無くなっちゃったじゃない!』

そこで、神アルカディアス様のと神殿がき通っていって、消滅する。神アルカディアス様との會話の時間が切れたらしい。

僕は、村の元居た場所に立っていた。

マタタビ畑では、キャト族の皆さんがくつろいでいる。村はさっきと何も変わらず、平和そのものだ。

しかし、今の僕には分かる。かつてないほどの脅威が、今まさに村に迫っている気配がある。

「敵襲です! 全員戦闘準備をして、正門に集まってください!」

僕は抜剣して走り出す。

「俺には何の気配もじられねぇけど――領主サマが言うなら間違いねぇぜ!」

「今日こそ沢山活躍して、領主様の負擔を減らすぞー!」

「わ、私もドラゴン形態に戻って、できる限りお手伝いしますぅ」

正門にたどり著くと、まさにモンスターが村に攻め込んでくるところだった。スライムとゴブリンの大群が、地面を埋め盡くしている。數百、いや數千はいるだろう。

「なんだこの數は……!?」

しかも、森の奧からドンドン出てくる。モンスターの群れの終わりが見えないほどだ。見えているのは小型モンスターばかりだが、奧にはどんなモンスターが潛んでいるかわからない。

「これは、全力を出さないといけないですね!」

僕の前に、魔法陣が出現。そして、熱風とともに眩い火球が出てくる。

「発、”ファイアーボール”!」

”ズッッッドオオォォン――ッ!!”

火球がモンスターの群れの中心に著弾。百近いモンスターを巻き込んで破し、跡形もなく消し飛ばす。

こうして、村最大の戦いが始まった。

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