地面に落ちた魔王パラナッシュの首が消えて、から新しい頭部が生えてくる。

『おのれぇ！！！！　人間風が、よくもやってくれたなぁ！！！』

魔王パラナッシュの地響きを起こすような怒號が響く。そして、怒りを込めた拳を振り下ろしてくる。

だがそれは、僕の目にはあまりに遅く映る。拳を回避し、ついでに腕に斬撃を見舞う。斬られた魔王パラナッシュの腕が宙を舞った。

そして、再び首を斬り落とす。

『おのれ、またしても！！』

魔王パラナッシュのの燈りは、殘り８個となる。魔王パラナッシュは、さっきまでとは打って変わって両腕でガードを固めた。

『首さえ斬らせなければ、貴様の攻撃速度より我がの再生速度が勝る。貴様の能力強化魔法は魔力燃費が良いようだが、それでもいつかは魔力が切れる。フハハハハハ、貴様に勝ち目など初めからなかったのだ！』

確かにその通りだ。僕はさっきのカストルとの戦いの最中掛けられた”マナドレイン”によって、魔力をほとんど奪われている。能力強化魔法を維持するだけでもあと１０分、攻撃魔法は數回しか使えない程度の魔力しかない。

『哀れな人間よ。貴様に我が奧義を見せてやる』

魔王パラナッシュは、ガードを固めたまま魔法を起する。巨大な魔法陣が魔王パラナッシュの頭上に出現した。

『闘技場ごと吹き飛ばしてくれる。最上級暗黒魔法“ダークメテオ”！』

魔法陣からは、確かに會場ごと破壊するだけの魔力をじる。魔法が発すれば、余波で會場付近の住民も數多く死ぬだろう。そんなことはさせない。

「魔法融合発。植魔法”グローアップ”と呪詛魔法”マナドレイン”を融合！　”拘束と吸の仙樹”！」

魔王パラナッシュの足元から樹木が飛び出し、急長する。樹の幹が魔王パラナッシュのを飲み込み、締め上げていく。そして、樹木が魔力を吸い取る。

『グアアアアアアアアァ！！』

魔力がなくなったことで魔王パラナッシュが発しようとしていた魔法陣が消滅した。魔王パラナッシュのの燈りがまた1つ消える。殘るは７つ。

仙樹の枝の1つに、小さな赤い果実が実って、落ちる。魔王パラナッシュから吸い上げた魔力を凝した実だ。

キャッチしてかじると、僕のに魔力が漲る。これで僕はまた魔法を使った戦闘ができるようになった。

『おのれ人間、我をここまで怒らせたのは貴様が初め――』

「魔法融合。火屬魔法“ファイアーボール”と暗黒魔法“ダークメテオ”を融合。“業火と夜闇の流星群”」

辺りが闇に包まれ、天から眩い尾を引いて流星が飛來する。その數、およそ１０００。轟音と共に、１発が大砲以上の破壊力を誇る流星が魔王パラナッシュに降り注ぐ。

『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ！！』

魔法の効果が終了し、辺りにが戻る。闘技場のステージは、もはや原型をとどめないほど崩壊して深い深いが開いていた。

『人間、なぜ貴様がこれほどまでに強大な力を……！？』

地の底から、背中に羽を生やした魔王パラナッシュが飛び上がってくる。の燈りは、殘り1つになっていた。何度か死んで、生き返るたびに流星群を食らって死んだのだろう。

『だが、頭の回転では我の方が一枚上手だったな！』

魔王パラナッシュは崩壊を免れた客席に降り立つ。そして、逃げ遅れた若いを巨大な手で捕まえる。

「キャアアアアァ！」

『さぁ攻撃してみろ。貴様がいた瞬間、我はこのを握り潰すぞ』

魔王パラナッシュが口を歪めて笑う。

『３００年前の戦いもそうだった。強い人間ほど、弱者をいたわり、庇い、死んでいく。愚かなことだ！　さぁ人間、攻撃できるものならしてみるがいい。その瞬間このの命が――』

「よし、攻撃しよう」

『何だと！？』

魔王パラナッシュは気づいていないが、実は魔王パラナッシュが今握っているのはではない。丸太だ。

僕は一部始終を見ていた。

機転を利かせたカエデが、一般に変裝してあえて観客席に殘る。しかも、魔王パラナッシュの視界にりやすい場所に。

そして、魔王パラナッシュに摑まれた瞬間”忍法変わりの”で丸太とれ替わり、拳から出。安全な場所へ退避していった。

魔王パラナッシュは、人質が丸太とれ替わっていることに気付いていない。

『フハハハハハ、さぁ人間。このの命が惜しければさっさと剣を捨てて降伏するのだ！』

魔王パラナッシュは、勝ち誇ったような顔をしている。