《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第57話 國王陛下から直々に寶剣を賜る

僕はドラゴン形態になったナスターシャに乗り、父上をさらった魔族を追いかけている。

遠距離攻撃用の魔法を連し、魔族がるワイバーンを攻撃する。

「メルキス様、敵のワイバーンまで1キロ以上離れているのに當たり前のように魔法を命中させるんですね。凄いですぅ~」

「ああ。伯爵家にいた頃に、剣だけじゃなくて弓の訓練もしたからな。その経験が今活きている」

父上を傷つけないように、攻撃の狙いはワイバーンの上に乗っている魔族と、ワイバーンの羽に限定する。ワイバーンは羽にが開いたくらいでは即落下することはない。徐々に高度を落とし、不時著するくらいはできる。それなら父上も無事で済むはずだ。

僕は魔法攻撃を連するが、その全てがことごとくかわされてしまう。

ナスターシャは頑張って全力で飛んでくれているが、敵のワイバーンの方が速いので、ジワジワと引き離されていく。このままでは振り切られてしまう。

「だったら……!」

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僕は再び魔法を発し、ワイバーンがそれを回避する。

だが、それは僕の計畫のだ。徐々にワイバーンの回避が出來ないよう、何手も先を読んで追い込んでいく。

ワイバーンが無理な勢で回避し続け、ついに完全に勢を崩す。

「そこだ!」

回避できないワイバーンに、僕はありったけの攻撃魔法を放つ。

だが――

「何!? 防がれた!?」

突如、魔族が防魔法を発した。巨大な盾がワイバーン後方に出現し、僕の魔法を全て弾く。

「どうして、さっきまで全く防魔法なんて使ってなかったのに……!」

しかもあの防魔法、かなり頑丈だ。攻撃魔法を10発以上撃ち込んでようやく壊せる。しかし、壊したら即新しい盾が出現する。

「あのレベルの防魔法が使えるなら、なんでさっきは使わずに回避していたんだ……?」

最初からあの防魔法を使っていればもっと楽に僕の攻撃を防げたはずなのに。

「そうか、わかった! 最初のほうは余裕があったから、僕の攻撃をギリギリで回避して楽しんでいたんだ」

舐めた真似をしてくれるじゃないか……!

僕は怒りで拳を強く握る。

きっと魔族は父上とこんなやり取りをしていたに違いない。

『ほう、人間の分際でこの距離で攻撃を當ててくるか。ワッハッハ! 俺自慢の防魔法で弾き返してもいいが、それでは面白くない。いい機會だし、俺のワイバーン縦テクを見せてやるとしよう。せいぜい楽しませてくれよ、メルキス』

――――――――

『おっと、ワイバーンが完全に勢を崩してしまったな。もうこれ以上回避は出來そうにないな。遊びはここまでだ。防魔法、発! ……どうだ、俺がし本気を出したらお前の貧弱な攻撃など通用しないんだぜ? 次に會うときは、せいぜいもっと火力の高い魔法を用意しておくことだな! ワッハッハ!』

『ぐぬぬぬぬぬ……! メルキス、お前がもっと強ければ、こんな魔族ごときに俺は拐されずに済んだというのに……!』

こうしている間にも、徐々にワイバーンは遠ざかっていく。

「メルキス様、ごめんなさいこれ以上速くは飛べないですうぅ!」

ナスターシャが限界まで翼をかして頑張ってくれているが、それでも父上を運ぶワイバーンのほうが早く、どんどん差を広げられてしまう。

……そして、完全に振り切られた。

「魔族に逃げ切られた……! くそ、僕は自分の弱さが悔しい!」

「え、メルキス様は十分すぎるほど強いですよ!?」

「いや、僕はまだまだだ。もっともっと、あの魔族の盾を一撃で撃ち抜けるくらい強くならなくては……!」

魔族は、どれだけの數存在しているのか不明だ。もしかしたら、1つの國に匹敵するほどの頭數をそろえているかもしれない。

だとすれば、魔族1人に舐められる程度の火力しか出せないようでは話にならない。

「メルキス様がこれ以上強くなったら、一どうなってしまうのでしょう……?」

僕を乗せるナスターシャが不安そうにそう口にした。

「ナスターシャはよくやってくれた。ありがとう。ゆっくりで良いから、一度王都に戻ろう」

――――――――

――魔王パラナッシュを倒してから、數時間後。

王都での騒ぎはようやくおさまりつつある。

そして僕は、王城の謁見の間に呼ばれていた。僕は國王陛下に今回の事件の顛末を報告する。

――カストルが魔族にそそのかされて怪しげな力に手を染めてしまったこと

――そこを利用され、魔王復活の核にされてしまったこと

――僕が復活した魔王を倒し、カストルを助け出したこと

――父上が卑怯な魔族によって拐されてしまったこと

――そして、魔族を追ったが逃げ切られてしまったこと

「……わかった。まずはメルキス君、ご苦労であった。ザッハークが拐されてしまったことは殘念であったが、魔王復活による死者は無し。怪我人も無し。被害といえば闘技場が半壊したことくらいだが、その程度いくらでも直せよう。本當によくやった、メルキス君」

「ありがとうございます。勿無きお言葉です」

「そうだよ! メルキス大活躍だったんだよ! 凄いでしょパパ!」

マリエルがどこからかひょっこり出てきて、僕の背中をバシンバシン叩く。

「うむ。流石マリエルが結婚相手に選んだ男じゃ。見事な働きぶりであった!」

「え? 僕をマリエルの許嫁に選んだのは陛下では――?」

「おっと、そうであった! いかんいかん! 歳をとると、昔の記憶があやふやになってしまっての! ハッハッハ! ハッハッハ!」

「も、もうパパってば! ししししっかりしてよねねねねねね」

目の端でマリエルを盜み見ると、顔を真っ赤にして揺していた。実の父親の老化が始まっているのを見てしまったのだ。ショックをけるのも無理はない。

「では、順を追って褒を贈るとしよう。まずは、王都武闘大會の優勝賞品である“寶剣イングマール”だ」

僕は陛下から直々に、“寶剣イングマール”を賜る。剣士として、質の良い剣は何本でも集めたくなってしまう。僕は、浮ついてしまう心を抑え込むのに必死だった。

手にずっしりと重みが伝わってくる。ああ、幸せだ……!

「そして、復活した魔王パラナッシュを撃退した褒についてじゃ。王家の歴史の中でもこれほどの働きをしたものはほとんどおらぬ。なんでもしいものをいうが良い。王家が全力をつくしてお主の願いを葉えよう……と言っても、今はそれどころでは無かろう」

「はい。さらわれた父上のこと以外は、今は考えられません」

「ではまた、何かしいものを思いついたら言うとよい。いつまででも待っておるぞ」

陛下の気遣いが、今はとてもありがたい。

「そして1つだけ。ザッハークは必ず生きておる。心配などいらぬ。魔族がザッハークを殺そうとしているのであれば、とっくにそうしているじゃろう。ザッハークを拐したのは、何か生かしておく必要があるからじゃ」

「……確かに、その通りです」

自分でもあきれるほど、僕は冷靜さを欠いていた。こんな簡単なことに気付かないなんて。

「どのみち魔族との対決は避けられぬ。王國として、全力でザッハークと魔族の行方を追う。見つけ次第すぐに、メルキス君にも知らせよう。そして、気負うのも大事じゃが、割り切って休む時は休むのも大事じゃ。できることがないときは、頭を空にして休むとよい。そのほうが、大事な時に力を出せるというものじゃ」

「ありがとうございます、陛下」

陛下の言葉で、肩に乗っていた重いものがすっと降りたような、だいぶ楽な気分になれた。

「魔族との決戦はまたいずれ起こるじゃろう。その時は、また活躍してもらうぞ」

こうして僕達は、王都を離れ村に戻ったのだった。

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