俺は新しいガラス瓶を用意し、中に火のついたろうそくをれ蓋をする。

當然、火は燃え続けたあと、短時間で消えた。

昨日の実験で証明した通り、ガラス瓶の中の空気が減っているはずだ。

そして、今やった工程をもう一度繰り返そうと、俺はもう１つのろうそくに火をつける。

それをガラス瓶の蓋を開けて、中にれる。

ボシュッ、と火が一瞬で消える。

てっきりちょっとの間ぐらいは火がつくかと思ったが、予想が外れて一瞬で火は消えた。

一回目の燃焼でガラス瓶の中の空気が消費されたせいで、二回目は火を全く維持ができなかったというわけか。

しかし、ガラス瓶を見る限りまだ空気はあるな。

なんですぐ火が消えたんだ？

俺は悩んだ。

もしかして、燃焼に必要な空気とそうでない空気の２種類があるのではないだろうか？

仮説を立ててみる。

しかし、魔導書には空気に種類があるなんてことはどこにも書かれていなかった。

謎が深まるばかりだ。

「ねぇ、なにしてんの？」

妹が話しかけてくる。

「見てわからないか？　魔の実験だよ」

「はぁ？　どこにも魔使ってないじゃない」

ふむ、やはり理解してもらえないか。

まぁ、いい。

「力は回復したのか？」

「まぁ、したけど」

「それじゃあ、このガラス瓶の中に〈火の弾(ファイア・ボール)〉を作ってくれ」

俺はさきほどプロセルが〈火の弾(ファイア・ボール)〉を維持し続けていた方のガラス瓶を指し示す。

俺の予想ではガラス瓶の中は燃焼に必要な空気が減っているため〈火の弾(ファイア・ボール)〉は作れないはず。

「〈火の弾(ファイア・ボール)〉」

妹はなんの不自由もなく〈火の弾(ファイア・ボール)〉を唱えた。

閉されたガラス瓶の中では〈火の弾(ファイア・ボール)〉が輝き続ける。

あれ？　予想が外れた。

「なぁ、さっきより〈火の弾(ファイア・ボール)〉を維持するのが難しいとかないか？」

「別に。変わらないけど」

プロセルは投げやりなじで答える。

「ねぇ、消してもいい？」

「ああ、いいけど」

プロセルは〈火の弾(ファイア・ボール)〉を消した。

「なぁ、もう一つお願いをしていいか？」

「これで最後にしてよね……」

「ありがとう。今度はこっちのガラス瓶の中に〈火の弾(ファイア・ボール)〉を作ってくれ」

俺が指し示したガラス瓶はさきほどろうそくの火をれていたほうのだ。

さっきろうそくをれるときに蓋を一瞬だけあけたが、それ以降は閉めたままなので、このガラス瓶の中は燃焼に必要な空気がないはずだ。

「〈火の弾(ファイア・ボール)〉」

なんら問題なくガラス瓶の中に〈火の弾(ファイア・ボール)〉が現れた。

は？　どういうことだ。

俺はが震える思いをした。

今度は〈火の弾(ファイア・ボール)〉を消してもらい、もう一度ガラス瓶の中にろうそくの火をいれる。

やはり、ボシュッ、と火は消えた。

今度はさっき、プロセルに〈火の弾(ファイア・ボール)〉をずっと維持してもらったほうのガラス瓶の中にろうそくの火をいれる。

このガラス瓶には、まだ一度もろうそくの火はれていない。

今度は問題なく火は輝き続けた。

これから導き出されること。

火に空気が必要。

だが、〈火の弾(ファイア・ボール)〉に空気は必要ない。

つまり、魔で作られた火と現実の火は全くの別ということだ。

それから俺は〈火の弾(ファイア・ボール)〉以外の火の魔がどうなっているのか検証を進めた。

例えば〈発火しろ(エンセンディド)〉。

対象を燃やす魔だが、この場合空気が必要なのかどうなのか？

結果、〈発火しろ(エンセンディド)〉で作られた火も空気は必要なかった。

「ねぇ、もういい。疲れたんだけど」

妹が怒り気味にそう言う。

「ありがとう。俺はもう帰るよ」

そう言って、俺は荷を手にして立ち上がる。

俺はショックをけていた。

〈火の弾(ファイア・ボール)〉を魔を用いないで再現できないかとずっと実験をしてきた。

それが、もしかしたら不可能なんじゃないかという現実に直面したからだ。