《魔力ゼロの最強魔師〜やはりお前らの魔理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】》―07― 店主

によって作られた炎と現実の炎は全く異なる存在。

その事実に直面した俺はうなっていた。

意味わからんな。

俺が今まで読んできた魔導書にはそんなこと一切書かれていなかった。

それどころか魔というのは現実の理現象を理解するところから始まる。

火、風、水、土それぞれの元素を深く理解することで魔を扱えるようになる。

だから、現実の火と魔によってもたらされる火は同じもののはずだ。

なにか俺は重要なことを見落としているのか?

例えば俺が行ってきた実験がそもそも間違っているとか。

考えを巡らせてみるが、特に思いつかない。

「あぁーっ!」

イライラして頭をかきむしった。

こんなときは頭をリフレッシュさせるためにも俺が一番好きなところに行こう。

「よぉ、アベル。久しぶりだな!」

そういって出迎えてくれたのはこの店の店主であるガナンさんだ。

俺がやってきたのは本屋である。

「店主、新しい魔導書を仕れてないか?」

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「またいつもの魔導書か。えっと……この辺だな」

何冊かの魔導書が目にる。

タイトルはこんなじだ。

『土魔の応用。金屬の錬編』

『挿絵つき! 猿でもできるポーションの作り方』

『新説。これが雷の正

ふむ、雷の新しい説がでてきたのか。

俺は興味のあった一冊をパラパラとめくる。

雷。火の元素の一種と考えられているが、その正はよくわかっていない。

神の正だという人もいれば、あれこそが魂だと主張する人もいる。俺からするとどっちの理論も拠に乏しいと言わざるを得ない。

俺自、真理に辿り著く過程として、雷の正を突き詰める必要があると考えている。

「あまり読む価値ないなこれは」

今まで唱えられてきた説を言い方を変えて新説だと主張しているような容だ、これは。

殘念に思いつつ俺は本を元に戻す。

「なんだ、アベルのお眼鏡に適う本はなかったか」

ふと見ると店主が立っていた。

「殘念ながら、そうですね」

「と、そうだ。アベルが來たら是非見せようと思っていた本があったんだ」

それは大変興味深いな。

店主が持ってきてくれる本はなんだろう、とワクワクしながら待った。

「これなんだけどよ。古代語で書かれていて、アベルじゃないとなんの本かすらわかんないんだよ」

「古代語ですか……。隨分と古い本ですね」

率直な想を述べる。

古代語で書かれているってことはなくとも千年前に書かれた本だ。

けど、保存方法がよかったのだろう。

容はしっかり読めるな。

「こんな貴重そうな本、どうしたんですか?」

「ああ、俺の知り合いが古い倉庫から見つけたらしくてよ。値打ちもんじゃないかってことで俺のとこに持ってきたんだよ。けど、古代語で書かれているから俺でもなんの本かわかんねぇ。だからアベルに見てしかったんだ。お前古代語も読めるはずだろ。もしこれが原書シリーズの魔導書だったら相當の値打ちがつくはずだ」

俺も原書シリーズの魔導書は一冊だけ持っている。

あれは偶然手にれることができた貴重なだ。

俺はその本のタイトルを読み上げる。

「『科學の原理』」

なんだ? 科學って。

俺はその言葉を聞いたことがない。

ただなくともこれは、

「魔導書ではないですね」

「なんだぁ。魔導書じゃなかったかー」

店主はがっくりとうなだれる。

対して俺は妙な騒ぎを覚えていた。

俺は丁寧にページをめくっていく。

そしてあるページで目をとめた。

『――これらの実験の結果から火の元素は存在しないことがわかる』

火の元素は存在しないだと?

待て、どういうことだ。

魔導書と矛盾しているじゃないか。

それに実験だと。

俺は自己流で様々な実験をしてきたが、千年前にすでに似たような実験が行われてきたというだろうか。

わからないことが多いが、ひとまずこの本は一読する必要があるな。

「店主。この本借りてもいいですか? 中を読めば貴重な本だと判明するかもしれないので」

「ああ、いいぞ。ぜひ、その本の容を教えてくれ」

普通なら貴重かもしれない本を他人に貸すなんてあり得ないことかもしれないが、店主は俺を信頼してくれているのか了承してくれる。

まぁ、俺はこの本屋に小さい頃から通っているからな。

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