《魔力ゼロの最強魔師〜やはりお前らの魔理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】》―35― 

「おはようございます、アベルくん」

教室にるとミレイアが笑顔で出迎えくれる。

昨日はずっと怖い顔をしていたのにな。

「どっちがホントのお前なんだ?」

思わず聞いてみる。

「えっと、なんの話でしょうか?」

と、ミレイアは言いつつ、さり気なくスネを蹴ってくる。

普通に痛い。

目でミレイアに抗議をすると、すごい睨み返してきた。余計なことを喋るな、とでも言っているんだろう。

「その、アベルくんに相談したいことがありまして、チーム戦のことなんですけど」

「ああ、そういえばそんなのあったな」

異端のことばかり考えていて、そんなことあったの正直忘れていた。

「朝、二人に聲をかけたんですが、やっぱり協力的になってくれなくて」

「ぶっちゃけお前一人が戦えば、負けることはないんじゃないか」

昨日の異端の力に敵うやつなんてこの學院にはいないだろ。

「アベルくん、それ以上変なこと言ったら怒ります」

ミレイアの表から笑顔が消えていた。

すでに、怒っているだろ、というツッコミは野暮だろうから言わないでおく。つい、思ったことが口をついてでただけなのに。

「すまん」

「ホント気をつけてくださいね」

許してもらえたのか、ミレイアは快活そうな笑顔に戻った。

「それで、協力してもらうにはどうしたらいいですかね?」

「それは、強手段とか?」

晝休み。

まず、長髪の男の方に向かった。

こっちのほうが攻略が楽に思えたからだ。

「こいつの名前なんだっけ?」

「ビクトル・フォルネーゼくんですよ」

ミレイアに教えてもらう。

ああ、そういえばそんな名前だったな。

そのビクトルといえば、俺の存在に気がつくと「チッ」と舌打ちをしてきた。

やはり歓迎されていないみたいだ。

「不満かもしれないがチームでやっていく以上最低限の意思疎通をしてくれないと困るんだが」

そう言うと、ビクトルの眉がピクリとく。

一応、こっちの話は聞こえているらしい。

しかし、どうしたものか? このまま相手が黙ったままだと、なにも進まない。

今まで學校に通い、コミュニケーション能力を培っていた人なら、この狀況でもうまく渉することで事態を改善することができるのかもしれないが、あいにく俺は元引きこもりだ。

いい方法なんて思いつかない。

よし、強手段をとるか。

「そっちがその気なら、こっちにもやりようはある」

「アベルくん、なにをする気ですか?」

ミレイアが不安そうな目をする。

「〈氷の槍《フィエロ・ランザ》〉」

容赦なくビクトルに向かって魔を放った。

「ちょ、なにをしているんですか!?」

ミレイアの絶が響いたが気にしない。

「おい、てめぇなにしやがる……ッ」

〈氷の槍《フィエロ・ランザ》〉が直撃したんだろう。だらけにした左腕を抱えながらビクトルが噛み付く。

「やっと口を開いてくれたな」

「てめぇ殺すぞ」

「いいぞ相手してやるよ」

「ちょ、ちょっと待ってください!?」

せっかくやる気になったというのに、それに水を差すかのようにミレイアがそうんだ。

「どういうつもりなのか、もっと説明してください!」

「言うことを聞いてくれないなら、力でねじ伏せて言うことを聞かせる。渉の基本だろ」

「そんなの聞いたことありませんよ!」

ミレイアはなにかが不満なようで、抗議するが、

「お前だって、昨日俺のこと殺そうとしたのに、なにいい子ぶってんだよ」

と、周りには聞こえないよう配慮した聲量で俺はそう言った。

途端、ミレイアは走った目を見開き、一瞬だけ怖い顔をした。けど、俺の言っていることに一理あると思ったのか、これ以上抗議したら自分が墓を掘ることになりそうだと判斷したのか、詳細まではわからないが、ミレイアは元の表に戻って、こう口にした。

「やるのはいいですが、せめて外でやりましょう」

見ると、教室中にいた生徒たちが俺たちのことを凝視していた。

確かに、外でやりあったほうがよさそうだ。

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