《魔力ゼロの最強魔師〜やはりお前らの魔理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】》―37― 作戦會議

放課後。

授業の終わりと同時。

ミレイアが立ち上がると、シエナの席に即座に向かった。

前回、話しかけようとしたときには、すでに教室にいなかったことがあったので、その反省を踏まえた上での行だろう。

「あの、シエナちゃんしお話したいんだけど……」

「ん」

俺が向かった頃には、ミレイアがすでに話しかけていたが、前回同様シエナの反応がどうにも薄い。

「今度あるチーム戦。シエナちゃんにもぜひ、協力してほしいと思っているんですが」

「ん、わかった」

そうシエナが頷くと、教室を出ようと歩き出す。

どうやらシエナの中では會話が終わったものと見なされたらしい。

教室を出ていってしまったシエナを見て、俺は言う。

「どうやらコミュニケーションがひどく苦手らしいな」

「まるであなたみたいですね」

「……ふむ」

ミレイアの的をた発言に俺は心していた。確かに俺も會話が苦手だ。

「それで、どうしましょうか?」

「まだ諦めるのは早い。追ってみるべきだろ」

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そんなわけで俺たちはシエナの後を追った。

「あ、あのシエナちゃんっ!」

廊下に出ると、シエナはすぐに見つかった。

「ん」

と、自分の名前に気がついたシエナは振り向く。

「その協力してくれるのはありがたいんですが、できれば報の共有もしたくて。というのも、他の生徒たちだとチームごとに集まって作戦を立てたりしているんですよ。できればシエナちゃんともそういうことができれば、と思っているんですが」

と、ミレイアが説得するためにまくし立てる。

作戦會議か。

他の生徒たちはそんなことをしているのか。初めて知った。

「ん、わかった」

意外にもあっさりと彼は頷いた。

「それじゃあ、このあと一緒に學食に行きませんか?」

「ん」

と、彼はついていく意思を示す。

「あの、アベルくんにお願いがあるんですが?」

「なんだ?」

ミレイアが俺のほうを向いてそう口にする。

「ビクトルくんを呼んできてほしいんですが……。恐らく、そろそろ目覚めている頃だと思うので」

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「ああ、わかった」

「それじゃあ、私たちは先に食堂に向かっていますね」

そういうわけで俺は一人で保健室に向かった。

すでに目覚めたビクトルが保健室から離れてすでにいない、という懸念はあったが、とりあえず保健室に向かう。

「なっ」

ちょうどビクトルが保健室から出てくるところに出くわした。

「怪我はもう大丈夫なのか?」

「元々大した怪我じゃなかったんだよ」

邪険な態度ではあるが、會話ができるようになったのは大きな進歩か。

「それで、これからチームで作戦會議を開くんだが、もちろん參加するよな?」

「チッ」

舌打ちされるが、

「そういう約束だったしな」

と、協力する意思を示してもらえた。

「だが、勘違いすんなよ。あれはお前が卑怯な手を使ったせいで俺が負けたからであって、決して俺の実力がお前より劣っているわけじゃないからな」

「そうか」

確かに不意をつくことで楽に勝たせてもらえたからな。

否定するつもりはない。

「ひとまず協力してもらえるようでよかったよ」

「二人とも遅いです」

食堂につくと、し不満げなミレイアの姿があった。

ここには寄り道せずまっすぐ向かったので、遅いと言われても正直困るんだが。

「おかげで寢ちゃいました」

見ると、ミレイアの肩に寄り掛かるようにシエナが隣に座っていた。

そのシエナといえば、ぐっすりと気持ち良さそうに寢ている。

「起こせばいいだろ」

「すでに何度も起こそうとしてるんですが、中々起きてくれそうになくて」

「そんなやつがいて、協力なんてできんのかよ」

ビクトルが毒を吐く。

「あ、ビクトルくんも來てくれたんですね。ありがとうございます。すごく助かります!」

「あ、あぁ……」

ミレイアの屈託ない笑顔を見たせいか、ビクトルがたじろぐ。

ミレイアのもう一つの顔を知っている俺としては、この笑顔も演技しているんだろうか、とか余計なことを考えてしまうのだが。

「それじゃあ、作戦會議を始めましょうか」

俺たちが席に座るとミレイアがそう口にした。

作戦會議を始めるのはいいが、そもそもチーム戦ってこと以外的なルールを俺は知らない。

先生の話、全く聞いてなかったからな。

「なぁ、ミレイア。まずルールについておさらいしてほしいんだが」

「そうですね、その方が作戦も立てやすいでしょうし、わかりました」

よしっ、これで自然な流れで説明するじに持っていくことができた。

「まず、クラスごとにチーム戦が行われます。試合は四組ごと。計一六人です。一位になることで評価ポイントが三點り、上位のクラスに編できる可能があがります。逆に最下位をとると評価ポイントがマイナス三點になり、降格、私たちDクラスの場合は退學ですが、その可能がぐっと近づきます」

「ん……?」

今、俺の知らない単語がでてきたぞ。

評価ポイント? 一位だと三點? なんだそれ?

最下位になったら、退學になるという話はミレイアから聞いていたが、評価ポイントの存在は今、初めて知ったな。

「どうかしましたか? アベルくん」

俺が訝しげな表をしていたことをミレイアがづいたようで、そう話を振ってくる。

「いや、評価ポイントってなんだったかな、と思って」

「先生が説明していましたけど、聞いていなかったんですか?」

「いや、聞いてはいたが、忘れたというかな」

まぁ、本當は全部聞いてなかったけど。

「はぁ」とわざとらしいため息をついてから、ミレイアは評価ポイントについて説明を始めた。

「私たち生徒は評価ポイントを持っているんですよ。Dクラスなら10ポイント、Cクラスなら30ポイントというふうに。そして、勝負に勝ったり負けたりすることで、そのポイントは変していきます。もし、評価ポイントが0を下回れば退學。逆に、20ポイント以上になればCクラスに昇格です」

「なるほど」

つまり、今回のチーム戦で最下位になれば、マイナス三點引かれることになるから、最初が10ポイントだから、引かれて7ポイントになるわけだ。

ちなみに、ミレイアの説明によると、それぞれのクラスの最初の持ち點はこんなじだ。

Aクラス70ポイント、Bクラスは50ポイント、Cクラスは40ポイント、Dクラスは10ポイント。

それぞれのクラスの生徒、最初にこれらのポイントを與えられる。

そのポイントから10點増えることで、上のクラスに昇格になり、10點減ったら下のクラスに降格になる。

俺たちDクラスの場合、最初は10ポイントで、20ポイントに達すればCクラスに昇格、0ポイントを下回れば、退學ってわけだな。

「しょうもないことに時間かけやがって」

評価ポイントの話を終えたミレイアに対し、ビクトルが文句を口にする。

「文句なら、話を聞いていなかったアベルくんに言ってください」

「あ、あぁ、悪かったな」

と、謝罪すると、ビクトルは「ちっ」と舌打ちをした。やっぱじ悪いやつだな。

ひとまず目標としては最下位を避けるっていったところか。

上のクラスにれたら、退學の可能が減るってのは大きな利點だが、目標としてすえるのはいささかハードルが高い気がする。

まぁ、まだ肝心のルールを聞けてないので、考えるのはそれからか。

「それで、本題ですが、ルールはいたってシンプルです。制限時間に敵を倒したらポイントが一點り、そのポイントが高い順に順位が決められます。制限時間は八時間。また試合中は決められたフィールドを出ることは許されません。あとは、一度倒されて落と判斷された生徒は試合への復帰は許されません」

と、一通りルールの概要を説明し終える。

落した場合のペナルティとか特にないのか?」

「ないですね。たとえ、チーム全員がやられたとしても、それまでに倒した數がそのままポイントに反映されます」

ならば生き殘ることに特化して逃げ続けるといった作戦はあまり意味がないか。

序盤からき回り、いかに敵を索敵して効率よく倒すか、といったことが求められるな。

落の基準ってのはなんだ?」

「戦闘不能と判斷されたかどうかですね。気絶したら落ってことでいいと思いますよ」

「もし、同じポイントのチームが複數あった場合は順位はどうなるんだ?」

「確か、そのポイントに達したのが早かったチームのほうが順位が上になるはずです」

「ちなみに、対戦相手や戦うフィールドは事前にわからないのか?」

「対戦相手は前日に告知されます。ただ、報がないので対策は立てづらいですよね。あと、フィールドに関しては直前までわかりません。事前に教えると罠をしかけたりできるので、それを防ぐためみたいです」

「なるほどな」

一通り説明を聞いた俺はそう頷く。

「それで二人はなにか作戦とかありますでしょうか?」

ミレイアはビクトルと俺にそう尋ねる。

特に思いつかなかった俺は黙っていた。

ビクトルも同様なのか、なにも話さないでいる。

「それじゃあ、私のほうから提案いいですか?」

「ああ、ぜひ頼む」

「それではえっと、恐らくどのチームも一目散に他のチームを倒すべく、試合開始と同時にき回ると思うんですよね」

それは俺も同じ考えだ。

上位になるには他のチームをいかにたくさん倒すかが重要となる。

そのためには他のチームに標的をとられる前に、先に倒す必要がある。のんびりしていたら、すでに多くの生徒が落しておりポイントの稼ぎようがない、なんてこともあり得るからだ。

「そして、どのチームもチームごとに行すると思われます。分散するメリットがありませんし。ですので、重要なのはいかに敵を索敵するか。そして、不意をつく形で強襲できれば、敵チームを一人倒すのは難しくないはず。一人でも倒せれば、四対三となり人數有利になりますし、人數が有利になれば、敵チームを全滅させることもそう難しくないはずです」

「フィールドって広いのか?」

「ええ、詳細は伏せられていますが、広いとおっしゃっていました。制限時間が八時間と長いのもフィールドの広さを考慮されてのことだと思います」

フィールドが広い。

ならば、敵チームを見つけるのも一苦労だ。

なら、一番重要なのは索敵といっても過言ではないな。

「索敵が重要なのはわかった。だが、的にどうやって索敵するんだ?」

「そうですね、索敵する方法としてあげられるのは魔力知と音による索敵です。一応聞きますが、できる方はいたりしませんよね……?」

「んなこと、できるわけねぇだろ」

ビクトルが不満げにそう口にする。

どちらの魔も上級のスキルが必要だ。

上級生を含めた生徒たちのなかでもそんな蕓當ができる人なんて、數人いるんだろうかと思うぐらいには難しい技だ。

「すまんが俺もできないな」

「いえ、すみません。流石に期待しすぎました。次に考えられる索敵方法は浮遊ですかね。空から偵察できれば、相當有利にことが運びます」

浮遊なら俺はできるな。

だが、學院ではあまり高度な魔は使わないと決めている。

なので、ここはできないフリをするのが得策だろう。

「それで、アベルくんにお願いしたいと思っているんですが……」

と、ミレイアが俺の方を見てそう提案した。

「待て」

的に俺はそう口にする。

「なぜ、俺が索敵をすることになっている」

「だって、アベルくん空飛べますよね?」

「そんなこと、俺は一度も言った覚えがないが」

「でも、験のとき空飛んでいましたよね」

確かに、妹のプロセルと試合したとき空を飛んだな。

「見ていたのか……?」

確かにあのとき他の験生たちも會場にいた。

だが、ほとんど生徒が不合格となる試験だ。合格した生徒に見られる可能は低いだろう、と楽観視していたが。

「いえ、直接は見てはいません。ですが噂では聞いていたので。あのプロセルさん相手に善戦した生徒がいる。しかも、その生徒は中學を出ていないらしいって。流石に聞いたときは噓だと思いましたが、アベルくんなら、できてもおかしくないのかもって思い直しまして……」

あのプロセルって……プロセルはやはり有名なのか? まぁ、それはいいとして。

直接見られていないのなら、いくらでも誤魔化しようが効くな。

「お前、空飛べんのか……」

ビクトルが驚いた顔で俺を見ている。

浮遊は魔師にとって、それなりに高度な魔だからな。驚かれるのも無理はない。

とにかく、浮遊できると思われるのは困る。

異端とバレないためにも、それに繋がりそうな報は極力隠したい。

いや、同じ異端であるミレイア相手ならバレても大丈夫なのか? とはいえ、ここにはビクトルもいる以上、この場では否定しておくに限るか。

「誤解だ。確かにプロセルとは戦った。その際、攻撃を避けるため高く跳躍してな。恐らく、それが大げさに伝わったのだろう。結局、プロセルには歯も立たなかったしな」

「そ、そうだったんですね。す、すみません、勝手に勘違いして」

「わかってくれたなら、別に大丈夫だ」

「ビクトルくんも飛ぶのは難しいですよね」

「チッ、無理に決まっているだろ」

「なら、水魔法で作ったレンズで遠くを観察するぐらいしかないですね」

その方法なら、基礎魔を習得した生徒なら難しくないだろう。

「戦う場所って遮蔽のない開けた場所なのか?」

「學院の敷地のどこかといっていましたので、恐らく木々が生い茂って森とかだと思いますよ」

なら、レンズのみでは索敵は難しいだろうな。

「索敵するより、見つからない方に力をれたほうがいいかもな」

「それですと、負ける可能は低くなるかもしれませんが、勝つこともできなくなります」

そうか、試合はいかに多く敵を倒すかが重要だ。

最後まで生き殘っても、敵を一人も倒せなかったら最下位だ。

「なら、見つかることを前提にいたらいい」

「どういうことでしょう?」

ミレイアが首を傾げる。

それから、俺は自分の考えを口にした。

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