《魔力ゼロの最強魔師〜やはりお前らの魔理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】》―42― 霊域
「で、的になにをすればいいんだ?」
を顕にしたミレイアを無視して、そう尋ねる。
「そ、そうですね。10人以上の生徒を私の元に持ってきてほしいんですよ。もちろん殺さない狀態で」
「つまり、このチーム戦。優勝すればいいんだな」
「ええ、そうなります」
俄然、やる気が湧いてくるな。
正直、今回のチーム戦、退學に近づく最下位にさえならなきゃいいと思っていたが、考えを改めよう。
狙うは優勝だな。
「なら、ひとまずこの作戦を功させないとな」
といって、俺は砦のほうを見る。
木々が伐採された辺りの中心に〈土の壁《ティエラ・ムロ》〉により四方が取り込まれた砦があった。
木々を伐採したのは、近づいた者を判別できるように見渡しをよくするため。
「そろそろ1チームぐらいやってきてもいいと思うが」
というのも、木々を伐採するさい散々魔を放ったので音が鳴り響いてしまったのだ。
音が響けば、そこにチームがいることぐらいすぐにバレる。
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今のところ、自分たち以外では音が鳴った形跡はない。
ならば、他のチーム同士がすでに戦っている、ということもないのだろう。
「私は自分の持ち場に戻りますね」
そう言って、ミレイアは自分の持ち場に戻ろうとする。
そのときだ。
ドンッ、と音が鳴り響いた。
方角は、ビクトルが見張っている位置。
「敵襲ですね」
即座にミレイアが反応する。
ここからだと砦が視界の邪魔をして、なにが起きているか見えない。
俺とミレイアは森からでないように砦を中心に円を描くように移する。
ドカンッ、とまた立て続けに音がなる。
今度はなんの音か判別がつく。
砦が破魔で破壊されていた。
砦を木っ端微塵にするつもりだろう。
「これはどういうことでしょう……?」
ミレイアが疑問を口にする。
なにに対しての疑問なのか、俺もすぐに察しがつく。
「ふははははははっ、砦の中ではなく外に潛んでいたのか。なるほど、劣等生が劣等生らしく策を弄したというわけか」
男にしては甲高いが聲が響く。
すでに砦は半壊しており、中には誰もいないことに気がついたのだろう。
そして、男の近くにはビクトルが橫たわっていた。
どうやら奇襲には失敗したらしい。
だが、これを見てしまうと、作戦に失敗するのは當然としか言いようがない。
「だが、殘念であったな。こちらのほうが一枚上手のようだ」
自ありげな男の聲が聞こえる。
「してやられたな」
俺は思ったことを口にした。
俺たちの作戦は完全に失敗した。
それも向こうの作戦のほうが、優秀だったせいだ。
というのも、目の前には総勢12名の生徒がいた。
つまり、俺たち以外の3つのチーム全員が集結していた。
「見ればわかるだろう。俺たちはお前らを確実に蹴落とすために、一時的なチームを組んだ」
リーダーらしき男が聲を張り詰めてぶ。
「なぁ、チーム同士が手を組むって反則じゃないのか?」
「いえ、殘念ながらルール上、反則ではないですね。恐らく、この戦いが始まるまえに彼らは手を組んでいたんでしょう」
最下位になれば退學の可能がまる。
ならば、確実に最下位にならないためにはどうすればいいのか?
他の3チームが手を組み、一つのチームを蹴落とす。
確かに、最も合理的な手段ではあるな。
そして蹴落とすチームに俺たちが選ばれたのは、俺たちが落ちこぼれの集まりだと客観的に評価されたからだろう。
俺たちを確実に落させて、最下位になる心配がなくなってから、彼らはお互いに爭い始めるのだろう。
「もう、君たちに勝ちがないってことはもうわかっただろう。大人しくでてきたらどうかな?」
森に潛んでいる俺たちに向かって男はそうんだ。
「どうしましょうか?」
ミレイアが俺にたずねてくる。
「むしろ好都合じゃないか?」
「え?」
「あいつら全員を生贄にするんだろ。なら、ああやって集まってくれてよかったじゃないか。探す手間が省けた」
「ですが、あれだけの人數。どうやって相手をすれば……」
「お前ならできるだろう、ミレイア。偽神の力であれば、あれだけの人數でも容易く制圧できるはずだ」
「ですが、偽神の力を誰かに見られるわけにいきません」
「なにを言っているんだ、お前は? あいつらを生贄に捧げるんだろ? なら偽神の力を見られたところで、なにも問題がないだろ」
「……っ、ええそうですね」
ミレイアは一度頷く。
だが、その目はどこか反抗的にも見えた。
「アベルくんは平気なんですか?」
「なにが?」
「誰かを犠牲にするってことがですよ。もしアベルくんに正義があるならば、私のことを止めると思うんですけど……」
「正義? それは実在しないものだろう。俺に限らず、どこにも存在しないと思うがな」
「いえ、そんなことはありません。正義は存在しますよ」
そうか、と俺はミレイアの話を聞き流す。
正義に関しての話はあまり関心がもてないな。
「それでやらないのか?」
「やるしか私には選択肢がありませんので。ただ、アベルくんにはがっかりしました」
なんで文句を言われなきゃいけないんだよ。
まぁ、こいつが俺に止めてもらいたいってことはわかっているが、選ぶ相手を間違え過ぎだ。
「どうやら諦めてくれたようですね。助かりました。これで探す手間が省けましたよ。ミレイアくんと魔力ゼロのアベルくん。おっと、もう一人いると思いましたが、それはどこにいるんでしょう」
男の言葉に目もくれずミレイアはこう口にした。
「〈霊域解放〉」
瞬間、世界が塗り替えられる。
「おぉ……」
と、俺は嘆の聲をあげる。
また、この霊域を見られるのか。
「おい、なにが起きた……!?」
「なんだ、これっ」
「お前ら大丈夫か!?」
「うわぁああああああ」
複數の悲鳴が木霊する。
他の生徒たちも同様に巻き込まれていた。
「靜かにしてください」
そうミレイアが言葉を発すると同時。
生徒たちのに複數の切れ込みが発生する。
そして、瞬きしたときには全員のはバラバラに砕けていた。
「すごいな」
思わず俺はそう口にする。
「それで、生贄にするにはどうするんだ?」
「……そうですね。魂を取り込むには、魂を純粋な魔力に変換する必要があります。ただ、殺すだけではと魂が分離するだけなので、一手間加える必要があるんですよ」
「その一手間ってのは、どうしたらいいんだ?」
「別にそう難しいことではありません。というのも、そのために偽神の力があるようなものですから」
そう説明を加えながら、ミレイアは一人の生徒の元に寄る。
そして――
「〈魂を魔力に変換(コンヴァシオン)〉」
魔法陣を展開する。
ふと、ミレイアの様子がおかしいことに気がつく。
魔法陣を展開したものの、なにも起きていなかった。
「い、嫌です。こんなこと……。もうしたくありません」
ミレイアの手はガタガタと震えていた。
「アベルくん、お願いですっ。私を、どうか殺してくださいっ!」
それは悲痛なびだった。
そうか、と俺は呟きつつ魔石に力を込める。
「〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉」
そして、俺は躊躇なく、ミレイアの心臓を狙って〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉を放った。
しぶきが舞う。
ミレイアはを吐きながらグチャリ、と後方へとを倒した。
「続きが気になる」って方は下より【★★★★★】いただけると幸いです。
一章の終わりまでは毎日更新する予定です。
よろしくお願いします。
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