《魔力ゼロの最強魔師〜やはりお前らの魔理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】》―62― 弾丸

翌日の放課後。

俺は早速、シエナに接を図ろうとした。

「いないな」

教室を見回すがどこにもシエナの姿が見當たらない。

もう帰ってしまったのだろうか?

困ったな。

これでは今日の予定が総崩れだ。

と、そのとき一人の生徒が視界にった。

そういえば、この生徒もチーム戦のときあの場にいた生徒だ。

こいつが俺の部屋に置き手紙を置いた犯人とは思えないが、一応聲をかけておくに越したことはないだろう。

「おい」

「なんだよ?」

聲をかけただけなのに、その生徒は俺に対し睨みをきかせてくる。

そんなに俺のことが嫌いかね。

聲をかけたのはビクトル・フォルネーゼ。チーム戦のとき、同じチームとして戦った仲だ。

ビクトル自はすぐに気絶したので、あまり役に立たなかったが。

ビクトルもあの場にいた一人ではあるため、置き手紙を置いた犯人の可能がゼロではないと思い聲をかけてみた次第なわけだが。

しつきあってくれないか?」

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「なぜ、俺がお前につきあわなくてはいけないんだ」

確かに、仲がいい間柄でもないのに、つきあってもらうのはしおかしな気がするな。

「ふむ、新しい魔を開発しようと思っているんだが、第三者の意見がしいと思ってな。どうだ、興味はないか?」

これから新しい魔を開発するのは本當の話だ。

だから、それを提示すれば興味を示してくれるだろうか、と思ってみたわけだが。

「ちっ、それでなにをすればいいんだよ」

意外にもビクトルは乗り気のようだった。

「なんだよ?」

俺が驚いていることに気がついたのか、ビクトルがそう口にする。

「てっきり、斷られると思ったからな」

「お前の言う新しい魔に興味があるだけだ。悪いか?」

いや、別に悪くはないが。

ホントなにを考えているのかよくわからんやつだな。

それから俺はビクトルと共にある目的地に向かっていた。

向かった先は鍛冶屋だ。

「昨日、注文したのはできているか」

「おう、今持ってくるからし待っていろ」

鍛冶屋の店主に話しかけると店主は奧へと引っ込んだ。

「ほいよ、これでいいか」

「あぁ、問題ないな」

見た限り欠陥らしいところは見當たらない。

「しかし、変わった注文だから作るのに苦労したよ」

「それでも一日で仕上げるなんて腕がいいんだな」

「まぁな、それだけが俺の自慢だからな」

鍛冶屋は笑いながら、そう答えた。

「おい、それはなんだ?」

という質問をしたのは一連のやり取りを見ていたビクトルだった。

「魔銃というんだよ」

「魔銃? 聞いたことがねぇな」

「そりゃ、俺が作った言葉だからな。當然だろ」

ビクトルが疑問を口にしたのも無理はない。俺が新しく作った魔導だからな。

仕組みは一般的な銃よりも単純で、銃口と持ち手にもなっている弾倉しかない。

一般的な拳銃ならあるはずの、引き金や撃鉄なんかは取り払われている。

その代わり、引き金の箇所に魔石が取り付けられている。

的な機構を使って弾丸を飛ばす仕組みになっているのだ。

「それと、鉄くずもしいんだったよな。できる限り集めたが足りそうか?」

「いえ、これだけもらえたら、十分ですよ」

大きな麻袋の中を覗くと、そこには大量の鉄くずがはいっていた。

思ったよりもたくさんもらえたな。

鍛冶屋に頼んでよかった。

「鉄くずをこれだけ集めてどうするんだよ?」

「魔の実験に使うんですよ」

鍛冶屋を出た俺はビクトルと遠くまで見渡される原っぱに來ていた。

「それでなにを始めるんだ?」

鉄くずがった麻袋を地面に置くと、ピクトルがそう訪ねる。

俺がなにをするのか、興味はあるらしい。

「まぁ、見ていろ」と口にしてから、俺は呪文を唱える。

「〈磁力作(マグネティカ)〉」

すると、大量の鉄くずは宙の一點に集まっていく。

「おい、なんだこの魔は!?」

ビクトルのやつ、普通に驚いているな。俺が異端者だと知っていたら、この反応はわざとらしすぎるか。

「驚くのはまだ早いぞ」と言いながら、俺はさらに魔を重ねていく。

「〈熱作(カロー)〉」

鉄くずの熱を作することで溶解させる。溶解させた狀態であれば、好きなように鉄を形させることができる。

まずは、鉄くずだったのを凝させて、一つの鉄の塊にしていく。そこから、さらに俺の好みの形へと変形させていく。

そして、形が決まったら、再び〈熱作(カロー)〉を使って、鉄を冷やしていく。

「なにを作ったんだ?」

「魔銃に使う弾丸だよ」

そう言って、俺はたった今作った弾丸をビクトルに見せた。

本來の弾丸には火薬が込められているが、今作ってみせた弾丸はただの鉄の塊だ。

とはいえ、問題はない。

俺は弾丸を魔銃に裝填し、銃口を遠くの木に當たるよう狙いを定める。

その上で、再び呪文を唱える。

「〈熱作(カロー)〉」

本來、銃というのは火薬を使って気を膨張させることで、弾丸を出させる武だ。

であれば、火薬が擔っていた役割を魔に置き換えれば、こうように弾丸を飛ばすことができる。

そんなわけで、銃口からは勢いよく弾丸が飛び出し、遠くの木にぶち當たる。

功だな」

魔銃を使えば、わずかな魔力量を消費するのみで殺傷できるな。

銃がこうして廃れてしまったのが理解できない程度には、使いやすい武だな。

「ビクトルも使ってみるか?」

「いいのか?」

興味深げにビクトルが見ていたので、銃を手渡す。

「どうやって使うんだよ」

「弾丸の後ろ辺りにある空気の溫度を上げるんだよ」

「溫度あげるってことは火の元素をればいいのか?」

「まぁ、そういうことだな」

科學的には、熱は分子の運だが、原初シリーズを信じている彼らにとって、熱というのは火の元素の一つの形態って認識だ。

だから、火の塊は出せても熱だけを生み出すのは、彼らにとって苦難なことに違いない。

だから、ビクトルは弾丸を出するのに手こずっていた。

「よしっ、どうだ。俺でもできだぞ」

魔銃からうまく銃弾を出させることに功できたビクトルが満足そうな表をしていた。

とはいえ、無駄な魔構築のせいで、威力は俺のに比べれば弱まっているし、魔力の消費も無駄に多い。

まぁ、そのことを指摘するつもりはないが。

「気にったなら、やるぞ」

「いらん。普通に魔を使ったほうが効率が良さそうだ」

ビクトルは俺に魔銃を投げ渡す。

まぁ、ビクトルの言っていることはそう間違ってもいないか。

わざわざこんな魔銃を使わずとも、魔で人を殺傷するのは可能だ。

それに、この魔銃は弾丸がないと使うことができないという弱點もあるしな。

まぁ、俺にとって、この魔銃は、今開発に取り掛かっている魔の前段階のようなものなんだけどな。

ともかく半日ほど、ビクトルと過ごしてみたが、置き手紙を部屋に殘した犯人ではなさそうだとじた。

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