《魔力ゼロの最強魔師〜やはりお前らの魔理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】》―67― 波
教室にると異様な視線をじた。
どうやらミレイアの言っていた生徒たちが俺のことを噂しているという話は本當だったようだ。
まぁ、俺は気にせず空いていた席に座るけど。
「すぴー」
と、寢息が聞こえた。
振り向くと、隣の席にシエナが座っていた。彼はいつものごとく寢ている。
授業中、彼が起きている様子を見たことがない。授業をける気がないなら、學院に來なければいいのに、と思わないこともない。
授業以外になにか目的があって學院に來ているわけでもなさそうだし、正直なんで學院にいるのか不思議な存在だ。
まぁ、彼がどんな目的があろうと俺には関係ないだろうから、どうでもいいといえば、そうなんだが。
それから普段通り、授業が始まり、普段通り授業が終わった。
授業が終わる同時に、シエナはぬくっと起き上がり、教室を出ていこうとする。
俺も早く寮に帰りたいため、彼に続こうとした。
「あのぅ、アベルくん。ちょっとお時間よろしいですか~?」
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教室を出ると同時、話しかけられた。
そこにいたのは生徒會長だった。
「なんのようですか?」
「ついてきてほしい場所があるんですけど、構わないですか~?」
會長はいつも通りの笑顔でそう言う。
「すぐ済む用事ですか?」
「はい、すぐ終わると思います」
「わかりました。ついていけばいいんですよね」
會長にはお世話になっているし、すぐ済む用事ってことなら従ってもいいだろう。
「了承してくれて大変助かります~。それじぁ、行きましょうか」
會長がそう言いながら、俺の手に手をばそうとしてきた。
以前も、手を繋がれながら歩いた覚えがあるな、とか思いながら、彼の手をけ取ろうとして――
「〈土巨人の拳(ピューノ・ギガンテ)〉」
一瞬の出來事だった。
會長の真橫から、土でできた巨人の拳が毆りかかってきたのだ。何度か見たことがある魔だな、とかそんな呑気な考えが一瞬頭によぎる。
そして、その拳は容赦なく、會長を捻り潰す。
「アベル兄、逃げるよ」
そこにいたのは俺の妹、プロセルだった。
「プロセル、これはどういうことだ……!?」
なんで俺の妹が會長を攻撃した?
目の前の事態に頭の整理がつかない。
だが、俺の問いに答える前に、プロセルがく。
俺を抱きかかえ、窓を巨人の拳で割りながら外へ飛び出す。
そして、プロセルは地面から土の踏み臺を生し、その生された勢いを利用して、前へ前へと走り出す。
「おい、プロセル。説明してくれ」
あまりにも速いのでしゃべると噛みそうになるが、それでも言わずにはいられなかった。
「うるさい。今、説明とかしている暇ない」
彼は邪険な態度をとる。
いやいや、せめて説明してくれないことには、展開があまりにも唐突すぎてついていけないんだが。
いくらこの學院が魔戦を推奨しているとはいえ、さっきの不意をつくような攻撃は流石に卑怯だと思う。
攻撃をけた會長は重傷だろう。下手すれば、これをきっかけに停學なんてこともあるかもしれない。
「來たわ」
「なにが?」
答えを聞く前に、なんのことだかわかる。
大量の蛾。
それが後方から追いかけてきたのだ。
「あれって會長の魔?」
「恐らく、そうだな」
「やっぱり一撃では仕留めきれなかったか」
そう言って、妹は舌打ちする。なんか、妹が不良に見えてきた。お兄ちゃん、こんな子に育てた覚えはないぞ。
「〈石礫掃(グレイバ)〉」
そう言って、大量の石を噴して追ってきた蛾を撃ち落とそうとする。だが、あまりにも大量の蛾を前にしては、焼け石に水でしかなかった。
「蛾のくせに、なんでこうも速いのよ」
確かに、蛾は飛ぶ速度があまりに速くないイメージがある。なのに、追ってきている蛾のスピードはあまりにも高速だ。
「アベル兄、今から言うことを絶対に守って――」
プロセルはそう言いながら、立ち止まって俺を地面におろす。
「アベル兄は魔を一切使わないで」
「それはなぜだ?」
「アベル兄は今、異端者でないかと疑われているわ。心當たりはあるでしょ?」
「まぁ、それは……」
疑われる原因がたくさんあることは自覚しているつもりだ。
「會長があんたを連れて行こうとしたのは異端審問所よ」
異端審問所。それは異端かどうか裁判を行う場所のことだ。
「もし、あのまま連れて行かれたら、アベル兄は異端認定をけてそのまま死罪だったわ」
「は? そんな馬鹿な!?」
「だから、これ以上、疑われる原因を作らないように、アベル兄は魔を使わないで」
「それは、わかったが」
そう頷くも信じられない気持ちがどこかにあった。
まさか、會長が俺をそんな嵌めるような真似をするとは。
「まさか、あなたに邪魔されるとは思いませんでしたわ。プロセル・ギルバートさん」
ふと、見ると、大量の蛾が空中にとどまっていると思ったら、中から會長がでてきた。
さっき學院でプロセルの魔によって、毆られたはずなのに、どうやってここまで來たんだ?
しかも、見た限り怪我は見當たらないし。
まさか、蛾と一緒に會長自も空を飛んでいたのか? それか、會長が蛾に変していたとか……。
どっちが正解とも思えない。
正直、どんな魔を使えば、こんな蕓當ができるか見當すらつかないな。
「同じ名字なので、まさかと思っていましたが、ご兄妹だったりして~?」
「違うわ」
「……だったら、アベルくんを今すぐ、こちら引き渡してください」
「それは嫌」
「……そう、なら、こちらとしては手段を選ぶわけにはいかなくなりますね」
會長はそういって、両手を広げ大量の蛾をこちらに差し向けようとする。
戦ってでも、俺のことを奪う。
そういう意思が會長の目には宿っていた。
「あはっ、いいね。好戦的な人、私好き。全力で踏み潰すことができるから」
今度はプロセルがそう言って、2つの土できた巨大な拳を地面から生させた。
お互い全力で戦うつもりのようだ。
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