《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》03 夢
彼は、荒野の丘の上で1人休んでいた。四肢には力が満ちていたが、空腹だった。四方は薄暗闇であるにもかかわらずはっきりと見渡せていた。遠くに水溜りが見え、そこで野生の馬の群れが水を飲んでいた。
彼は、立ち上がった。急に馬の群れのすぐ傍まで移した。まるで飛んでいるかのように。
彼はライオンのような前足で、馬の首を叩き、その衝撃で馬は吹っ飛び、橫倒しになって倒れた。
彼は前足についているかぎ爪で、馬の腹を割き、熱い臓に口をつけた。の臭いが口の中一杯に広がった。
命の味だ……。
・・・
・・
・
味わっている間に、意識が朦朧としてきた、マートとしての自分を思い出す。
-----
マートは口の中にまだの味がのこっているような不快をじて、顔をしかめながら目を覚ました。
「どうしたの?すごくうなされていたけど」
が、肩に布を一枚羽織っただけの格好で水を勧めた。
「ああ、ちょっとな、いつものことさ」
Advertisement
マートはい頃から、同じような夢を繰り返し見ていた。今朝のような臓をむさぼる夢ばかりではなく、草原を疾走したり、他の獣と戦ったりする夢なども多い。共通しているのは、自分が四足の獣のようにいているという點だ。子供の頃から貓(キャット)とよばれてからかわれたりもしていたが、こっそり自分は貓じゃなく、もしかしたらライオンか虎の生まれ変わりじゃないかと思っていた。
マートはを起こし、生ぬるい水をごくりと飲む。
ハリソンの親の店を出た後、マートはその足で裏町の酒場に行き、浴びるように酒を飲み騒いで楽しんだのだった。介抱してくれているは誰か全く思い出せない。
「ねぇ、貓(キャット)、マクギガンの街に來たときにはちゃんと寄ってよ?またサービスするからさぁ。昨日はたまたま出會えたからよかったけどさ」
「ああ、わかったよ」
「ほんと、わかってる?」
マートは思い出せないまま、服を著た。革の財布はちゃんとあった。中があまり減っていないことに首を傾げつつ、大銀貨を3枚取り出して、に渡す。
「くれるのかい?ありがと、貓(キャット)。今日は金があったんだね」
そこまで言われて、マートは前回、マクギガンの街に來た時もこののところに泊まったのを思い出した。たしか、場末の飲み屋で働くで、そのときは彼から聲をかけてきたのだった。
「たまには持ってるさ。昨日の酒場代、出してくれてたんだろ?マージョリー」
「名前、憶えててくれたんだ。うれしいよ」
マートは、マージョリーの住むアパートの一室を出て、屋臺でパンを買って朝食を済ませると、その足で冒険者ギルドに立ち寄ることにした。採取して、カバンの底に眠ったままのカタツムリが、こちらでも売れたらいいなと思ったからだ。隣街ではあるので、同じようなクエストがある可能は十分にあるはずだった。掲示板をチェックしたところ、果たしてカタツムリの採取クエストがボードには載っており、リリーの街と報酬は同じだった。
マートはギルドの採取品カウンターに向かった。朝遅くの時間帯なので、あまり人は居ない。すぐ番になった。
「採取クエストの買取を頼む。エンジシカクイカタツムリだ。普段はリリーの街を拠點にしているんだが、今日は偶々こっちの街に用事があったので、ここで買取をしてもらおうと思っている」
「わかりました。ステータスカードは有りますか?」
付の男は事務的なじでそう言った。ステータスカードというのは、文字通り、名前の他、自分のステータス(地位や能力)などが書かれた魔法のカードのことだ。冒険者ギルドの他、商業ギルドなどでも販売されている。噓が表示されることがないので、分証明として使う事が出來、複數の街で活する冒険者はもちろん、街の有力者などでも持っている者は多い。ただし、魔力をめたアイテムであるので、決して安いものではなく、値段は金貨1枚だ。
マートも冒険者ギルドでの地位がランクCに上がった頃から必要だなと思ってはいたのだが、その金貨1枚という費用を捻出するのが難しく先延ばしにしていたものだ。
「お持ちじゃないんですか?それでしたら、もちろん買取額が変わる訳ではありませんが、今回の採取クエストでの、冒険者ギルドへの貢獻ポイントは加算されません。今回の採取クエストはせっかくの高額クエストですから、報酬を生かして、この機會にステータスカードを手されてはいかがですか?ステータスカードを見れば、魔法の素質などがあれば、それも判りますし、そのカードでお金を預かったりすることもできます。高額の護衛クエストではステータスカードによる分証明が必須ですよ」
採取品カウンターの男は言葉巧みに勧めてきた。まぁ、冒険者ギルドにとっては金貨一枚という商品だ。できれば売りたいのだろう。
「魔法の素質なんてあっても、勉強する気にはなれねぇしな」
「勉強して取得するのは真理魔法だけですよ。神聖魔法は神との対話ですし、霊魔法は霊との対話です」
マートはその説明にふむふむと頷いた。
「ただし、神殿に勤めたり、師匠についたりといった修行が必要なのは同じですが」
修行なんて今更自分で務まるとは思えなかったが、ステータスカードについては、どのみち必要になると彼は考えた。そして今、懐は暖かいが、明日にはどうなっているかわからないというのは自分でもよくわかっていた。
「よし、買うか」
読んで頂いてありがとうございます。
無職転生 - 蛇足編 -
『無職転生-異世界行ったら本気出す-』の番外編。 ビヘイリル王國での戦いに勝利したルーデウス・グレイラット。 彼はこの先なにを思い、なにを為すのか……。 ※本編を読んでいない方への配慮を考えて書いてはおりません。興味あるけど本編を読んでいない、という方は、本編を先に読むことを強くおすすめします。 本編はこちら:http://ncode.syosetu.com/n9669bk/
8 72【書籍化】碧玉の男裝香療師は、ふしぎな癒やし術で宮廷醫官になりました。(web版)
【カドカワBOOKS様より2022.11.10発売】 ※毎週、火、金更新 ▼書籍版は、登場人物やストーリーが増え、また時系列にも多少の差異があります。 どちらを読んでも楽しめるかと思いますが、二章以降は、書籍版のストーリーを踏襲したものになりますので、ご注意くださいませ。 下民の少女「月英」には秘密があった。秘密がバレたら粛正されてしまう。 だから彼女はひっそりと邑の片隅で、生きるために男裝をして姿を偽り、目立たぬように暮らしていた。 しかし、彼女の持つ「特別な術」に興味を持った皇太子に、無理矢理宮廷醫官に任じられてしまう! 自分以外全て男の中で、月英は姿も秘密も隠しながら任官された「三ヶ月」を生き抜く。 下民だからと侮られ、醫術の仕えない醫官としてのけ者にされ、それでも彼女の頑張りは少しずつ周囲を巻き込んで変えていく。 しかし、やっと居場所が出來たと思ったのも束の間――皇太子に秘密がバレてしまい!? あまつさえ、女だと気付かれる始末。 しかし色戀細胞死滅主人公は手強い。 皇太子のアピールも虛しく、主人公は今日も自分の野望の為に、不思議な術で周囲を巻き込む。
8 165氷炎騎士の騎校生活(スクールライフ)
最強の騎士の父と最強の魔術師の母との間に生まれた、最強の『固有魔法(オウン)』をもつ 東山 秋風は 「この世で俺が1番強い」と思い込んでいた。しかし、両親にすすめられ入學した ”國立騎魔士アカデミー” でその現実は覆される。 主人公の成長を描いた、學園戀愛ファンタジー⁈ 初投稿なんで、誤字とか多いかもです ご了承ください
8 194白雪姫の継母に転生してしまいましたが、これって悪役令嬢ものですか?
主人公のソシエは森で気を失っているたところを若き王に助けられる。王はソシエを見初めて結婚を申し込むが、ソシエには記憶がなかった。 一方、ミラーと名乗る魔法使いがソシエに耳打ちする。「あなたは私の魔術の師匠です。すべては王に取り入るための策略だったのに、覚えていないのですか? まあいい、これでこの國は私たちのものです」 王がソシエを気に入ったのも、魔法の効果らしいが……。 王には前妻の殘した一人娘がいた。その名はスノーホワイト。どうもここは白雪姫の世界らしい。
8 103スクールクエスト!
主人公、延永守恒が通う學園には変わった部活が存在する。 その名も、人事部。 この部活は県內入りたい部活ランキング20年連続第1位であり、入部條件はただ一つ、人を助ける覚悟を持った人。 そんな人事部に『姉の七光り』でうっかり副部長に抜擢された守恒は絶え間なく続くスクールクエストの中で何を想うのか!? 王道學園ラブコメディー!! バトルもあるよ!
8 83初心者がVRMMOをやります(仮)
親の頭があまりにも固いため、ゲームはおろか攜帯すらもっていない美玖(みく)。このたびめでたく高校一年生になりましたので、今まで母方祖母に預かっていてもらったお金でVRMMORPGをやることに決めました。 ただ、周囲との兼ね合い上、メジャーなものはやりたくない。親の目を盜んですることになるから、ヘッドギアは小さなもの。そして月額料金は発生せず、必要に応じて課金するもの、と色々條件を絞ったら、「TabTapS!」というゲームにたどり著いた。 ただ、このゲーム初心者がやるにはかなり厳しいもので……
8 198