《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》07 護衛依頼

「貓(キャット)、どこに行ってたんだよ。隊商の護衛だけど、花都ジョンソンまでっていうのが出てるんだ。行って見たいって言ってたろ?一緒に行こうよ」

スキルの検証を終えたマートが、拠點であるリリーの街に帰りつき、なじみの酒場でのんびりしていると、彼と同じような革鎧をに著けたがそう聲をかけてきた。彼の名はアニス。マートと同じ冒険(ク)者グ(ラ)ループ(ン)、黒い鷲のメンバーだ。長はマートと同じぐらいなので、としてはかなり背が高い方だろう。濃いめのブラウンの髪を短く切っているためか、男と見間違えられることもあるらしい。彼はまだ若いのだが、黒い鷲(クラン)の中の主要メンバーの1人で、マートがクランに會した時から面倒をみてくれた関係もあって、なにかと親切にしてくれるのだった。

「姐さん!もちろん行くよ。丁度もうすぐ花都ジョンソンの有名な花祭りだよな。それに行く連中の護衛かい?」

「ああ。雑貨商フィンレイさんところの花祭り用の商品の護衛さ。毎年馬車が10臺ぐらい出るんだ。黒い鷲(うち)からは4人行くことになってる。他にフリーで2、3人雇うって言ってたよ。去年も行ったんだけど、まだ、貓(キャット)はうちのクランにってない頃だったかね?」

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「ああ、まだ旅の一座が解散になったばかりで、1人でやってた頃だろ。へぇ、花都か、楽しみだな。出発は?」

「明後日早朝だよ。花都までは、だいたい5日。食事は朝晩、隊商分作るときに一緒に作ってくれるらしい。余分に食べたきゃその分用意しろってさ。ちょっとした荷は馬車に積んでもらえる。向こうで1日か2日休んで、帰ってくるってじだね。後聞きたい事は何かあるかい?」

「報酬は幾らもらえるんだ?」

「ああ、貓(キャット)の取り分は、3金貨ってとこかね。街道だからそんな危険はないはずだから、割の良い仕事だろ」

「他のメンバーは?」

「ああ、斥候のクインシー、戦士のグランヴィル、あと、私とあんただよ。道中、グランヴィルにちょっとしごいてもらいな」

マートは、グランヴィルの筋を思いだして、あんなのにはなりたくないと考えた。

「あいつに?姐さんがいいな」

「私は一応リーダーってことになるからね。そんな暇は無いよ。あんたは、いつもサボりすぎだからね。それも仕事だと思ってがんばりな。これからは雨の季節だ。外套も忘れないようにしなよ」

マートはわかったとアニスに応えると、酒場を出、市場に向かった。明後日出発となると、準備できるのは當然今日か明日ということになる。

街の市場は相変わらず混雑していた。

「へい、いらっしゃい。いい七面鳥がったよ。オーブンでじっくり焼くと旨いよ」

「グラスゴーの海塩荷したよ。安くて苦味もない塩だよ」

「ファラステのじゃがいもはどうだい?蒸かすと腹持ちもいいよ」

口々に売り子たちが自分の商品をアピールする中で、マートはいろいろと商品を見比べながら、チーズ、塩気の強いベーコンの塊、カチカチの黒パン、海塩を一袋といったものを買い求めた。これらは予備の食料だ。買い求めた品をいつもの背負い袋に詰め込むと、次は武屋に向かう。ここリリーの街に武屋は2軒しかなく、それも隣り合っており、2つの店の店長は兄弟らしかった。兄の店は高級店でいい商品を扱っており、弟の店は大衆店で、そこそこの商品を扱っている。マートは迷うことなく弟の店にった。

「こんちわ」

マートが店にっていくと、奧からなにやら音がして、し待っていると背が低くずんぐりとした格の中年の親父が出てきた。彼はこの店の店主のルイジだ。

「お、貓(キャット)、この間の剣の修理代金を支払に來てくれたのか?」

ルイジは嬉しそうに言った。マートはあ…と聲を上げたが、「そ、そうさ」と続けた。

「えっと、いくらだっけ?」

「ああ、金貨2枚だよ」

彼はすっかり忘れていたらしい。だが、観念して隠しから財布を取り出して支払った。

「ありがとな。俺の目に狂いはなかった。うちの嫁さんが貓(キャット)はちゃんと払ってくれるか心配だとか言ってたが、ちゃんと払いに來たぜって言っとく」

「あ、ああ、當たり前さ。ところで、ちょっと弓を見せてほしいんだが」

「ああ、もちろん いいとも」

ルイジはいろんな弓を並べて説明をし始めた。

「弓には長さ1.5m~2mほどの長弓と1mほどの短弓がある。長弓のほうが、遠くまで矢が屆くし、威力も強い。でも、貓(キャット)のことだから、護衛か討伐依頼で使うんだよな。それなら取り回しを考えると短弓のほうが良いかもしれない。1.5mもあると結構邪魔になるからな。あとは、弓自の素材だが、一番はやっぱりイチイの木だ。ニレやトネリコあたりを使ってるのもあるが、どれも弾力があってい木ってのは共通してる。どれぐらいの強さの弓がいいかは筋力次第だから試してみるしかないが、數を撃ちたいのならあまり無理しない程度がお勧めだ」

「結構高いな」

マートは5金貨と値段のついた弓を見て言った。

「ああ、弓は素材の力がそのまま出るからな。良いものは高い」

「2金貨ぐらいで、手ごろなのはないか?」

「んー、猟師とかが使うのなら安いのがあるが、それだと鳥やウサギ相手ぐらいだぜ?あんたら冒険者だとある程度威力がないとだめだろ?」

「まぁ、そうなんだよな」

全財産を出せば買えない事もないけど、そこまでじゃないな。マートはそう考えて諦めることにした。

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