《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》09 異変

「今日は疲れたな。結局ゴブリン退治は3回か」

夜営の準備をしながら、ジェシーがそう呟いた。

「ああ、そうだな。去年はこんなに襲撃はなかったと思うんだがな」

グランヴィルがそう応えた。

「あーあ、これから夜営か。夜にはゴブリン出ないでくれよ」

フランキーがそう呟く。

「なぁ、あんたの魔法ってすげぇな」

マートが、フランキーにそう言い、彼は上機嫌になった。

「ああ、に付けるまで苦労したんだ」

「魔學院とかいうのに行ったのか?金がかかるんだろうなぁ」

「いや、俺は師匠が居てな。10歳のときにステータスカードを取得したら素養が4もあるってわかったんで、親父が頼み込んで弟子にしてもらったのさ。弟子りだから、たいして金はかかんなかったが、雑用ばっかりずっとやらされてた。呪文を教えてもらったのは最近さ。まだ★は2つだがな。そのうち、4つまで修行してみせる」

「3匹同時に撃ってたけど、そういうのって何匹にでも撃てるのか?」

「いや、★が1なら1匹、2なら4匹に撃てるんだ。3なら9匹まで撃てるんだ。すげえだろ?」

「4匹同時か、すげぇ」

「ちょっと薪がねぇな。ぎりぎりじゃね?」

その橫でクインシーがそんな事を言った。

「雨で寒いからさ、昨日の晩、結構使ったみたいだよ」

ジェシーがそう応える。

「そうか、明日の晝間移しながらでもし集めないとだな」

クインシーはそう呟いた。

「ほら、そろそろ晩飯ができたってさ。早く貰ってきな」

夜営地を見回っていたアニスが戻ってきて彼らにそう言った。みな木の椀を片手にけ取りに向かう。

「メシを喰ったら、さっさと寢るんだよ。今日はおしゃべりはなしだ。しでも寢て疲れを取るんだ。わかったね」

「あいよ、姐さん」

護衛連中は、そんなことを喋りながら、木の下で雨をしのぎ、代で眠りにつくのだった。

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次の日も朝からは雨が降り、どんよりと曇っており、かすかに靄がかかっていた。

「スティーブ、ここは、主街道の一つで、モンスターなんて、滅多に出るもんじゃない。なのに、昨日は日中に3回、夜にも3回、ゴブリンと戦う羽目になったんだ。どう考えてもおかしいじゃないか。護衛連中に怪我人は出てないけどさ、みんなあまり眠れてない」

護衛旅行3日目の朝、アニスは警備隊長であるスティーブにそう言った。

「そんな事を言われても、俺にどうしろって言うんだ。ゴブリンの知り合いは俺には居ない。おかしいって言っても誰に聞けっていうんだ?」

「絶対に、何か有るよ。調査に誰かを先行させて、花都ジョンソンまで走らせるべきじゃないかって思うんだ。花都ジョンソンが遠すぎるというのなら、今日の野営地まででもいい。何か異変が起こっていないか調査すべきだよ。あと、代でもいいから護衛を馬車に乗せて仮眠をとらせてやっておくれよ」

「どれもだめだ、護衛の人數がへっちまう。ゴブリンはし増えてるかもしれないが、あと1泊すれば明後日の夜には花都ジョンソンに著く。それまで頑張ってくれ」

「でもさ……」

「わかった、わかった、報酬をし上積みするようフィンレイ様に掛け合ってやる。それで良いだろう」

「……」

マートたちは重い足を引きずりながら、馬車の橫を歩き始めた。昨日の夜のゴブリンの襲撃には、毎回全員が起こされる羽目になり、結局2時間も寢ていない狀態だった。それからまた10時間ほど歩き続けると考えると、気持ちも暗かった。

「ほら、みんな、あと2日だよ。今日が踏ん張りどころさ。明後日は花都のすぐそばだからきっとゴブリンも減るだろうよ」

アニスはそう言ってみんなを勵ました。

「アニス、今回の依頼は楽な依頼って言ってなかったか?」

マートがそう尋ねる。

「ああ、何かが変なんだよ。ゴブリンがこんなに出るなんておかしいんだ。でもまぁ、もうちょっと頑張っておくれよ」

「雨で、全然気配が摑めないんだよな。ちょっと半日ぐらい周りを回ってきてもいいか?」

「そう思うんだけどね、スティーブに卻下されちまった。だめだよ」

「アニス、薪が底を盡きそうなんだ。道中拾えたら頼む」

クインシーがそう言った。

「わかったよ。でも、このあたりは無さそうだねぇ。夜営地についたら、ちょっと回ってくるよ」

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