《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》37 ウィシャート渓谷の探索

2020.9.21 マジックバック → マジックバッグ

殘りのオークを求めて、マートは目撃されたリネット村付近を中心にウィシャート渓谷を歩き回った。冒険者が一人だけしか來なかったので不安を隠せなかった村人たちも、著いた早々に1匹を倒したおかげで信用してくれ、それからは彼の扱いも向上して、寢床も馬屋から村長の屋敷の客室に変わったのだった。

「じゃぁ、今日も見回ってくるわ。しかし、おかしいな、痕跡も殘ってたんだがな。みつからないと不安だな。とりあえず今日は北側の山地を中心に見てくる」

「よろしく頼むぞ。しかし、案は本當に要らんのか?」

「ああ、俺だけのほうが軽にけるからな」

村長にはそう説明して、マートは村を出た。途中、自警団らしい連中が手を振ってくれた。

“さっさと片付けないとな。今日は村の連中が見えなくなったら飛んで、上から探そう”

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魔獣系統のスキルである飛行を使い、彼はオークの姿を探して回ったのだが、晝を過ぎても手がかりもみつからなかった。

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“オークって、夜行だっけか?”

“いや、基本的には晝活していたはずじゃがな”

“だよな”

マートは首をかしげながらも、探索するエリアを広げていく。

“あれは何だ?”

マートはほぼ垂直に近い山の途中に四角いのようなものが5つほど規則的に並んでいるのを見つけた。近づいていくと、窓のようにも見える。下からはでこぼこの巖に隠れてほとんど見えないだろう。

さらに近づくと、そのは本當に窓であった。庇があり、木製と思われる窓戸が閉められているのだ。その窓戸はかなり老朽化しており、手でれると簡単に外れ、中は巖をどのようにしたのか刳りぬいてつくられた部屋だった。

マートは中にっていったが、その部屋はおそらく居住用だったのであろう、埃が積もって居たが、ベッドと機があり、機の上にはランプなども置かれ、綺麗に整頓されていた。

部屋には窓とは反対側に扉が一つあり、そこを開けると左右に廊下がびて、同じような扉がいくつか並んでいたが、右側の通路は巖が崩れ完全に塞がれており、そこから地下水がれて床に水たまりができていた。

“こいつは、なんだ?”

“巖を刳りぬいて作った何かの施設のようじゃの。砦かあるいは神殿やもしれぬ。片方の通路の先は崩れて塞がれておるな”

“何か、お寶が眠っているかも知れねぇな。調べてみよう”

マートは用心しながら、廊下を進み、扉を順番に開けていく。山に開いた窓がある部屋は、大きさの大小はあれど、彼が最初にり込んだのと同じ居住用の部屋らしかった。そして、その廊下をはさんで反対側にある扉は一つきりで、その扉を開けると、そこは一つの大きな部屋だったが、ほとんど空で、壊れかけた椅子や機、小さめの木箱がいくつかあっただけで、その木箱もカラカラに干からびたパンのようなものの欠片や空っぽの木樽がっていただけだった。

“なんだ、何もねぇのか?”

“放棄された廃墟みたいじゃの”

マートが機にあった引き出しを開けながら、すこしサイズに違和じた。

“ん?”

引き出しは二重になっていて、奧に隠しがあった。そこを探ると、小さなベルトポーチがっていた。

“なんだ、金でもってるかな?”

マートはそのベルトポーチのカバーを開けると、そこは真っ黒な空間が広がっていた。

“お、マジックバッグ?”

“そうみたいじゃの。何かっておるか?”

マートは恐る恐る手を突っ込む。すると、念話のようなものが伝わってきた。

:日記、魔道コンロ、ウィスキー5、グラス2、魔石31、金貨51、銀貨622、銅貨228”

“へぇ、マジックバッグというのはこういう風になってんのか、じゃぁ、試しに金貨を取り出してみるか”

マートがそう考えると、掌にい何かが乗った。そのまま手を取り出すと、そこには綺麗な金貨が乗っていた。

“初めてみる意匠だな、それもでかくないか?”

“それは、ピール王國の金貨じゃな。最近ピール王國の名前は聞かぬが”

“へぇ、銀貨と銅貨も同じか?”

マートは、順番に中にっているを取り出していった。グラスは、木製のカップではなく、高級なガラス製で、ウィスキーというのは、深緑のこれもガラス製の瓶にった酒だったが、強烈な匂いがした。

“ガラス製なんて、すごいな。王様でもこんなきれいなのは持ってねえだろうよ”

“そうなのか?火の霊に頼めば、溶かすことができるはずじゃが”

“魔道コンロというのは、なんだ?”

“料理に使うものじゃ。鍋でを煮たりするじゃろう?”

“へぇ、暖爐みたいなものか”

“まぁ、そんなものじゃ。鍋を上に置いて、ボタンを押すと、そのうち鍋が熱くなるのじゃ”

“魔道か。便利だな。あとは、日記か”

マートは、かなり太くなった巻のようなものを取り出し、拡げてみたが、彼には読めない文字だった。

“なんて書いてあるんだ?”

“ん?王國歴321年3月21日 今日はし頭が痛いので早めに帰って寢ることにする。パターン352から383は何もなし”

“最後のところはどういう意味だ?”

“さぁのう。最初からきちんと読んでみないとわからんの”

“まぁいいか、とりあえず頂いて帰ることにしよう。金貨と魔石はありがたいな。これで海辺の家の風呂がつかえるかもしれねぇ”

“そうじゃの”

マートは取り出したものを全てポーチ型のマジックバッグに戻し、そのマジックバッグを早速ベルトに通したのだった。

読んでいただいてありがとうございます。

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