「リーダーたちが姿を消しておおよそ一週間になる。俺も魔師ギルドの連中と何度も打ち合わせを行い、様々な可能を検討した」

ジョブは続けた。

「まずは単純に落としに落ちたんじゃないかという説だが、この部屋には、拠點とするための資のった袋や個人の背負い袋も一部殘されていて、人だけが手に持っていたものと一緒に消えたというじなのだ。もちろん袋などは固定されているわけじゃない。６人が同時に落ちるということはかなり大がかりな落としということになるが、袋などが殘されているという事からその可能は低いと思われる。もちろん全く探していない訳じゃないが、落としらしきものも見つかっていない」

「次に、魔が現れて魅了やなにかの魔法などで６人がられたという説。これについては可能は０ではないが、全員を同時に魅了できるような魔など聞いたことがないし、もしそうだとしてもそれならなぜ連れ去ったのか理由がわからない。これも可能は低いんじゃないかと考えた」

「最後に、これが一番可能は高いと思われているのが、なんらかの魔法裝置によって、転移させられたという説だ。よくある転移トラップというやつだな。普通は部屋にったり、寶箱を開けたりといった際に発するものが多いのだが、可能として、どこかの床を踏んだり壁をったりという事が有り得るだろう」

「程な」

マートは頷いた。

「その可能に思い至った魔師ギルドは、魔法知の呪文を使ってその魔法裝置を探すことにした。だが、困ったことに魔法裝置が部屋の中に１０個以上あり、調査はたいして進んでいない。下手にると転移させられてしまうことになるからな」

そう言って、ジョブはため息をつく

「転移トラップというのは、同じ迷宮に転移させられる可能が高く、その先で囚われたりというのがほとんどだ。だが、ごくまれに転移先は意図されたものではなく、すでに設備の一部が老朽化や地震などで破壊されたりして、地下空に落下したというケースもあるらしい」

「そのため、殘ったクランメンバーは現在、リーダーたちが、同じ跡地下に転移させられていることを信じて跡地下の探索を行っている」

「今のところ、地下３階までは進んだ。だが、その階層にはゾンビやスケルトンが大量に発生していてな。探索作業は難航しているのが現狀だ」

そこまで話すと、大きく息を吸い込んだ。

「もう、一週間なんだ。俺はどうしたら良い？探索は魔師ギルドにも手伝ってもらって晝夜代で２４時間続けているが、メンバーもそろそろ限界だ。だが、まだ、さらに下がありそうなんだよ。元々俺はこういう頭を使うのが苦手なんだ」

「６人って、ショウさん、姐さんと、エリオットさん、クインシーと他誰だっけ？」

クランリーダーのショウとサブリーダーで魔法使いのエリオット、斥候のクインシーと目の前のジョブの４人はこの黒い鷲というクランの立ち上げメンバーで、長い間同じパーティを組んでいたメンバーだと聞いたことがある。年も４人とも同じぐらいだったはずだ。

アニスはもとより、ショウ、エリオット、クインシーの３人も、彼が所屬していた旅蕓人の一座が解散して、冒険者となり、クランにってからは、いろんな事を教えてくれ、世話になった恩人たちだった。

「キャロルとアレクシアだ」

キャロルは彼より２年ほど先輩で、たしか魔法使いだ。あまり一緒に冒険したりすることはなかったが、落ち著いた雰囲気のいい男だった。

アレクシアは斥候だったと思う。マートとほぼ同時期にったで、黒い短い髪で白い歯が印象的だった。

マートはすこし考え込んだが、軽く首を振り、明るい表を作った。

「なんだ、そんな事か。じゃぁ、俺がわざとトラップにかかろう」

「あ？いや、俺は言ったよな。転移先は致死のものがあるって」

「ああ、言った。大丈夫、俺は落ちない」

「落ちない訳ないだろう？」

「大丈夫だ。落ちないのさ。超が軽いのはあんたも知ってるだろ？」

「それはそうだが」

マートは、彼の耳元に口を寄せて、小さな聲で囁いた。

「最近、飛行の魔道を手にれたんだ。絶対緒だぜ」

「ほ、本當か？」

「な、安心だろ？」

マートはジョブにウィンクをして見せた。

「だから大丈夫なんだ。もし死ななかったら、落下先にはリーダーのショウさんや姐さんたちが居るんだろ。食料さえ余分に持っていけば生還できる。俺は水の霊魔法がつかえるようになった。水の心配もしなくて良い。だから、安心して、ゆっくり待ってな」

「そ……そうか。なるほど。それなら……」

一週間ほとんど眠らずに指揮を執っていたジョブは神的にかなり行き詰まっていたようで、マートの話に、すがりつくように納得した。

「転移トラップじゃなければ、また違う事を考えないといけないし、まずは作させてみようぜ」

マートはそう言った後、ジョブには聞こえないであろう小さな聲で続けて呟いた。

「姐さんたちには世話になったしな。一週間っていうのは、ほぼ限界に近いだろう。救う可能があるとすれば、これしかねぇ。それに決して分の悪い賭けってわけでもないさ」

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マートは、そうやってジョブを説得し、クランメンバーが消えてしまった部屋にった。

１０個あるという魔道を順番に見、可能が高いものから、ジョブには部屋の外に出てもらって確認することにした。

「一つ目」

そう言って、マートは魔道だという壁の飾りにれた。何も起こらない。

「ちがうようだな。次行くぜ」

マートも聲が張して震えている。

「二つ目」

何も起こらない。

「転移トラップじゃないのか？とりあえず次に行くぜ。三つ目」

何やらマートが知らない言葉がその場に流れ、ふわっと宙に浮くような覚があった。

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