《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》42 転移トラップ1

何の予告もなく、アニスはいきなり転移させられた。もしかしたら、何かにれたり、どこかを踏んだ所為だったのかもしれないが、彼にはそれはわからなかった。

そして、その転移先は水の中だった。

パニックになりながら、アニスは、真っ暗な水中を上に空気があることを信じて必死に水をかき、なんとか水上に顔を出すことが出來た。足はつかない。見回すと多くの木切れが水に浮いており。彼はそれになんとかつかまる。彼の周りには、いつもの仲間たちが罵ったり、いだりする聲がするので、見えないながらも、おそらく仲間たちが同じようになんとか木切れにつかまってい息を吐いていると思われた。

「これは何だ?落としか?みんな無事か?」

すぐ近くで、クランリーダーで、軽戦士のショウの聲がした。そちらのほうを見たが、真っ暗な闇だ。落ち著け、落ち著けと自分に言い聞かせる。彼はベルトポーチの中に明かりの魔道がある事を思い出し、手探りでそれを取り出すと、コマンドワードを唱えた。

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眩い明かりが點る。

そこは、おそらく大きな部屋の天井近くだと思われた。彼とおなじようにびしょぬれの仲間たち數人、木切れや様々なものにつかまり、水の中を浮かんでいるのが、明かりの中に浮かび上がった。

「アニス、助かった。みんな居るか?」

他にも何人かその明かりを目印にしたのか、水の中から顔を出す。

転移させられた部屋の中には、クランメンバーが全部で6人居たはずだが、居るのは4人だけだ。クランリーダーのショウ、斥候のクインシーとアレクシア。サブリーダーのエリオットとキャロル、魔法使いの2人が居ない。

「見てくるわ」

アレクシアが水の中に潛っていった。

「これはヤバイな。とりあえず、なんとか水から出れないか?」

ショウがあたりを見回す

クインシーが、壁のちょっとしたでこぼこに指をかけよじ登り、なんとか出っ張り部分にこしをかけることができたようだ。フックを打ち込みロープを固定すると、他のみなにロープを垂らす。そうやって、殘る2人はなんとか水の中から這い上がることができた。

アレクシアが水から顔を出した。首を振っている。

「くそっ。何も見えない。アニスさん、悪いけどその魔道を貸して頂戴」

アニスはアレクシアに明かりの魔道を渡した。彼は代わりに自分のバックパックを渡し、再び水の中に潛る。4人の周りは再び暗くなった。

「寒い」

初夏とはいえ、地下はひんやりと寒く、水に濡れた服は容赦なく溫を奪う。とは言え、乾いた服や布切れがあるわけでもないので、皆自分のをこすりながら寒さに耐える。

「參ったな。これは地下水か?水が冷たい。転移トラップにひっかかったのか」

「そうみたいだね。まいったよ。いつものリュックも水の中で落としちまった」

明かりと共に、大きな水音がした。アレクシアだ。1人ローブ姿の男を連れている。エリオットだった。

「まだ、はまだあたたかいけど、息をしてない」

ショウたちが総出で引き上げる。

『治癒(キュアウーンズ)』

『治療(キュアディシーズ)』

ショウとクインシーが引き上げ、アニスが続けざまに呪文を唱えた。

ごふっとエリオットが息を吹き返した。

「あとは、キャロルね」

そこまで見屆けて、アレクシアは再び水の中に潛って行った。

「エリオット、大丈夫か?」

そう言いながら、殘された3人はエリオットのをこする。それぐらいしか、溫める方法がないのだ。

暗闇の中、お互いの息遣いだけが聞こえた。

「す、すまん。俺は死んだのか?ここはどこだ」

エリオットがようやく聲を出した。

「わからねぇ、たぶん跡の地下だ。水の中に転移させられたみたいだ」

「そう……か。ありがとう。寒いな」

「禮はアレクシアに言ってくれ。まだキャロルが見つからなくて水の中を探してる」

(ライト)』

エリオットは明かりの呪文を唱えた。あたりが照らされる。

改めて見ると、彼らが居るのは、おそらく天井を支える梁のようなところで、力をれていれば乗っていられるが、油斷をすると落ちてしまいそうだった。部屋の大きさは一辺が30mはあり、そこまでは見通せた。

クインシーが、水を舐める。

「この水は綺麗じゃねぇけど、飲んだらすぐ死ぬというわけでも無さそうだ。しかし、照明道もないし、魔法とアニスの魔道が頼りか」

皆持ちを確認し始めた。バックパックを持ち込めたのは、ショウ、クインシー、アレクシアで、食料は合わせても6人で分けると1日分にも満たない量だった。

「地図やメモを描くにも道も何もない。ロープが30mほどか」

所持品の確認をしていると、アレクシアが震えながら水から上がってきた。

「だめ。泳ぐと余計水が濁って視界がほとんど無いし、明かりもほとんど助けにならないの。キャロルは見つからないわ。もっと探したいけど、が冷えてかない。転移されてないことを祈るしかないわ」

「この部屋はどうなってる?」

「大一辺が30mぐらいの四角い部屋。水の深さは3mぐらいだけど、床が何箇所か崩れて、さらに下の階にもつながってる。たぶん私たちは、その下の階から來たみたい。下の階は鉄格子の部屋みたいだけど、危険すぎて詳しくは見れなかった。東西南北がわからないけど、仮にこっちを北とすると、東と西方向に出り口があって廊下がびてる。でも、廊下は完全に水の中で空気がなくて、どれぐらいびてるかまではまだ調べきれてないの」

アレクシアはそう答えた。

「おそらく、ここは、あの跡の地下のどこかだ。エリオット、念話呪文はどうだ?」

「いや、通じないな。距離の可能もあるが、跡の場合、階が異なると通じないことも多い。なんとも言えないな」

「地下水がってるところを見ると、俺達が居たところからさらに深いところである可能は高い。上からの捜索を待つという選択肢もあるが、そちらは時間がかかるだろう。できれば自力出を図りたいと思う。みんなそれで良いか?」

クランリーダーのショウがその場に居る4人に尋ねた。みんな無言でうなずく。

「本來なら全員で行きたいところだが、ロープが30mしかないし、水の中では余計力が失われる。俺とアレクシア、アニスとクインシーがそれぞれ組になって代で道を探ることにする。エリオットは泳げないから拠點で見張りだ。組は代で休憩をとるが、エリオットは休憩はとれないと思ってくれ。出するまでの辛抱だ」

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