《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》45 跡地下出1
ようやく地下水のある階層から抜け出て、次の階層に上がることができたマートは、すこしは歩けるようになったショウたちを、比較的安全そうな部屋に案した。というのも、階層が変わると、念話が通じることがあるから試したいという話を聞いていたからだった。
「ジョブも苦労してそうだからな、念話が通じれば、しは気楽になるだろう」
そう言いながら、5人は、お互い助け合いながら魔法のドアノブをくぐり、跡地下に戻った。クインシーとアレクシアは、分になっているのか、彼らなりに安全確認をしていた。
エリオットは、しばらく目を閉じ、呪文を唱えた。
『念話(テレパシー)』
みんな固唾を呑んで、その様子を見守る。
・・・
「おお、通じたぞ。ジョブのやつ、泣きだしおった」
しばらく黙っていたエリオットが、ニヤニヤしながら、そう言いだした。
「くくく、あいつはあれで、泣き上戸だからな。しかし心配をかけた。マートが食料を持ってきてくれたからこっちは大丈夫だと言ってやってくれ。それと、キャロルの件もな。あいつにはが居たはずだ」
「ああ、わかった。俺たちの狀況も伝えているが、まだろくに歩けないと言っておいた。貓(キャット)はよくやってくれた、今度、娘の作ったクッキーを食わせてやるってさ」
みな、視線を合わせながら、嬉しそうだ。
「あと、5人は休んでても良いが、貓(キャット)には周囲を調べてもらってくれだと」
「ち、人使いが荒いな。まぁ、いいさ。わかったと言っておいてくれ」
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マートが5人を殘し、さらに廊下を進むと、そこには、2のゾンビが居た。たしか、救出のために地下探索を続けるサブリーダーのジョブは地下3階でゾンビやスケルトンが大量にいると言っていたのを思い出した。念話が通じるということは、それと同じ階層ということになる。
ゾンビを倒すには、炎か或いは神が聖別した武や聖水を使う必要があるのだが、彼にはその手段がない。
ただ、ゾンビやスケルトンの覚はかなり鈍いというのは、良く知られていることであり、素早く背後を移すれば、彼らの目をかいくぐって出口に向かうのは不可能ではない。とは言え、複數であれば、その分危険は増すし、ゾンビたちは普通の魔と違い溫がなく、彼の得意の知覚能力の一つ、赤外線による知覚が使えないので、その分注意が必要だった。
真っ暗な廊下で、マートはすこし考え込んだが、退治ではなく、死角を進むことにした。下手をして騒ぎになって、他のゾンビやスケルトンが集まってこないとも限らない。それはできれば避けたかった。
彼は、慎重に歩みを進め、時には途中の部屋に逃げ込んだり、場合によっては、飛行スキルをつかって天井近くに潛んだりして他にも出てきたゾンビやスケルトンをやり過ごしながら、探索を進めた。そうやって進んでいく途中、すこし広く、天井も吹き抜けになった大広間があり、そこに禍々しいものを見つけたのだった。
それは、祭壇というべきものなのかもしれないが、聖なるものという雰囲気は全くなく、むしろ不快を掻きたてるものだった。その周りには、ゾンビやスケルトンが10以上、何をするわけでもなく佇んでおり、數の死が転がっている。じっと見ていると、その祭壇の上に、まるで中から浮かび出たかのようにゾンビが寢た狀態で現れ、そのうち、立ち上がると、奧にびている通路のほうに進んでいった。
“魔剣、あれは何だ?”
“アンデッドを生み出したように見えるな”
“ということは、あれがあるとゾンビやスケルトンがどんどん増えてくってことか”
“ということじゃろうな”
“それは…壊す方法はないのか?いつまでたっても帰れねぇじゃねぇか”
“殲滅速度の問題じゃな。どれぐらいの頻度でゾンビが生まれるのか、どれぐらいの速度でゾンビをたおすことができるのか”
マートはそのまま5、6分は様子を見ていただろうか。その間に2目のゾンビは生まれなかった。
“湧いたゾンビは向こうに行くみたいだな。ジョブたちが向こうで戦ってるからその補充ってことか”
“そういうことかもしれぬし、違うかもしれぬ”
“んーあの祭壇をなんとかしないと、合流は難しい気がするな。一旦もどって相談するか。あと1日ぐらいあれば、ショウさんたちもある程度はけるようになるだろう。姐さんの回復魔法もあるしな”
“うむ。まだ、そなた1人で、ゾンビやスケルトンを全部倒して祭壇を壊すというのは、危険じゃろうな。連絡もついておるんじゃから、急ぐ必要はないじゃろう”
読んでいただいてありがとうございます。
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