《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》61 マリソンの初登城
ハリエット夫人に鍛えられ、しは禮儀作法がに付いたかのように見えたマート(偽名:マリソン)は翌々日の朝、ランス卿と共に、伯爵の一族の住むジョンソン城に登城することになった。登城とはいっても、ランス卿に付き従う4人の従士の1人としてであり、特に役割が與えられたりしているわけではなかった。
「マリソン、そなたは馴染みの商人、そなたの叔父のウォトキンがどうしてもというから連れて行くだけじゃからな。なにか失敗をしたら、即クビじゃ。判っておるな」
ランス卿はぎょろりと目を剝き、マート(偽名:マリソン)にそう警告した。彼はその演技にしらじらしさをじ、思わず笑いそうになったが、それを何とか堪えて下を向く。
「はい、承知いたしております。何卒お引き立てくださいますようお願い申し上げます」
彼は、遊詩人として覚えた騎士道語の一節を思い出しながらそう答えた。ハリエット夫人と二人のメイドにつきっきりで指導され、彼は演技をすればよいのだと気づいたのだった。そして、それ以來、喋るのが苦にならなくなっていた。英雄譚や語はかつての彼の得意分野だ。
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初めての登城であり、従士でもマートの正を知らないものも居るので、ランス卿はそう言ったのだったが、2日前とはまったく違うマートの変化した言いに、ほうと単純に心した。
花都ジョンソンの都市の中心部に建つジョンソン城は、広大な敷地を持ち、周囲は城壁に囲まれている。4方には防衛のための塔があって、城壁と繋がっており、一番大きな東側の門のところは巨大な見張り櫓と一化していた。
彼らの一行は、東門を馬車でくぐり、中庭にると馬車を降りた。城の衛士たちが、ランス卿を見て敬禮し、その中をランス卿とマートたち従士は、禮を返しながら中にって行った。
「失禮、ランス卿、従士の方で魔法を帯びていらっしゃる方が居られるようですが?」
灰のローブを著た男が立ちふさがるように前に立った。
「1人、霊魔法を使えるものが居る。すでに連絡をしているはずじゃが?」
「そのように申告はけておりますが、確認させていただきます。従士のマリソン殿」
「はい、こちらに」
マートは、そう言って一歩踏みでる。
「霊魔法の契約の文様と屆出がされておりますが、見せて頂けますか?」
マートは言われるがままに、左腕の水の波と黒い獅子の文様を見せる。
「これが、契約の証なのですか?」
「その通りです。証として水の生を行いますので、椀などお持ちいただけますか?」
「契約は水の霊なのですね」
そう言いながら、灰のローブを著た男の仲間が、木の椀を運んできたのでマートはけ取った。
「そうですね。水系統の霊魔法が使えます。契約霊は正確には泉の霊(ナイアド)となります」
『水生(クリエイトウォーター)』
マートはわざと言葉に出して、呪文で水を作り、それのった椀を灰のローブの男に返した。
その橫でランス卿がぎろりと灰のローブを著た男をにらんだ。
「これでよろしいでしょうか?」
マートがそう言って水のった椀を渡すと、ローブの男はひるんだ様子もなく涼しげにけ取った。
「結構です。お時間を取らせました」
確認は無事終わったらしい。
「なかなかしつこい。儂が連れてきた者が、伯爵家に害をすなどあるわけないではないか」
ランス卿は、不機嫌な様子でそう呟いた。
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ランス卿は城の與えられた部屋にった。彼は騎士団長を務めて居たが、怪我のため引退して、今は伯爵家の軍事顧問という役割となっているのだそうだ。
「儂はここで執務を執り行い、3刻もすれば下城することになる。マリソン、そなたは城が初めて故、どのようなものか気になるじゃろうが、城の中を歩き回ると衛兵が咎めたてるでな、極力この部屋で、わが仕事を見ておるがよい。立ち居振る舞いは、今日は見違えるほど良かったぞ。ハリエット夫人にも禮を申さねばならんな」
「ありがとうございます。わかりました」
おおよその城の警戒態勢はわかったし、これぐらいであれば忍び込むのは容易そうだが、問題は魔法裝置だなとか、そんなことをマートが考えていると、そこに訪問者があった。年の頃は二十才をすこし越えたぐらいだろうか、輝くような金髪と顔のつくりがジュディに良く似ている。2人の従者を連れていた。
「ランス卿、お邪魔するよ」
「セオドール様、よくいらっしゃいました」
「し教えてもらいたいことがあってね。八王史略の記述についてなんだが」
「もちろんかまいませんとも。どの部分ですかな?」
2人は、なにやら歴史書の中を話し合い始めたようだ。従者も一緒に話に參加し、それぞれの出來事や、用兵について、意義や裏の意味といった事柄を熱く言葉をわしている。ランス卿の言葉からすると、彼はジュディの兄、セオドールだと思われた。
マートは、窓の外を見るそぶりをしつつ、セオドールを監視していると思われる人影がないかそれとなく確認した。すると廊下の外や窓の下の庭あたりに、様子をうかがったりしている男がすくなくとも2人居たので、一応顔は憶えておいた。だが、その様子を見る限り、間諜というほどの技量を持っているわけではなく、どちらかというと、普通の従士や召使が立ち聞きをしているといったレベルのように思え、首をかしげたのだった。
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