《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》69 ニーナのモンスター後始末

“ゴブリン集落一つだけなら、大丈夫かとおもったけど、マンティコアか”

“ん?どうした?”

“痕跡が見つかると、騒ぎになるかなと思ってね”

“そうじゃの”

ニーナは、マンティコアの死骸に近づき、その尾の先から滴っていた緑を指に採り、舌先でチロッと舐める。

“なにをするのじゃ?”

“貴重な毒のサンプルだからね。大丈夫だよ。刺されるわけじゃないし、量はわかってる”

“なんと……”

“魔剣さんは、魔獣に関してはあまり知らないんだね。呪については知ってるのに”

“敵が使うものとして呪やスキルは知っておるが、生態まではな。だが、どうして、そなたはそれほど知っておるのだ?”

“マンティコアとしての記憶もあるから”

“なんじゃと?”

“そりゃそうでしょ。僕は元々マンティコアの前世記憶だったんだよ?その前世記憶をベースにして、進化のためのエネルギーとそれに付隨してマートたちの記憶が混ぜ合わさり、この人型に宿ってニーナになったんだ”

“そういうことか”

“魔剣さんの知はどんな風に作られたのさ?”

“そこまでの魔法知識は與えられておらん”

“人造人間(ホムンクルス)の類はその時代にはなかったのかい?”

“人間を作り出すというのは忌とされておったが、例外はあったようだ。じゃが、どうなんじゃろうな。そういうのはそなたを作り出したあのウルフガングとかいう教授に聞いてくれ”

“まぁ、いいさ。自分の毒を長させるために、毒の耐を得るためにしづつ毒を摂取するっていうのは、ある程度知があって毒を特とする魔には良くある話なんだ。あと、死霊は知ってるかい?マートは使いたくないって言ってたけど”

“ああ、だが、それもしなら...じゃな。そなたと話をしていると自信がなくなってくるわい”

“一応おしえておくれよ。僕は全く知らないんだ”

“ならば……儂の知っている話では、死霊には生作という2つの技がある。生というのは、アンデッドを作り出すという技じゃな。方法としては、何も無いところから怨念を集めてアンデッドを作り出すやり方と、死をアンデッド化するやり方の二通りあったはずじゃ。そして、作というのは、作ったアンデッドを呼び出したり、戻したり、命令をしたりという技じゃ。先に言っておくが、呼び出したり、戻したりというのが何処からかというのは儂は知らん”

“マートのステータスカードには、生の欄にスケルトン 6 とか ゴースト 1とか書かれてたけど?”

“それは、おそらく呼び出し可能なアンデッドじゃろう”

“ふぅん。死霊作というのは素養とかがあるみたいなんだよ。それは?”

“そこまでは知らぬ”

ニーナは、マンティコアの死骸に近づいた。

『死霊:(クリエイト・)生(アンデッド)』

マンティコアの巨大な死がぼやけて消えて行くと同時に黒いもやのようなものが出た。そして、その黒いもやはニーナのに吸い込まれる。魔剣は呪いのときを思い出してし焦った様子で尋ねる。

“またか?大丈夫か?”

“ああ、大丈夫。問題ない。マンティコアゾンビが出來たよ”

かないとかはないのか?”

“それはないみたいだな”

ニーナはなにかうんうんと頷きながら、そう答え、ゴブリンの死に近づく。

『死霊:(クリエイト・)生(アンデッド)』

今度はゴブリンの死が消え、黒いもやとなって、再びニーナのに吸い込まれた。

“どうなのじゃ? 苦しくなったりとかもないのか?”

『死霊:(コントロール・)作(アンデッド)』 ≪いでよ、ゾンビ≫

ニーナのから、今度は黒いもやのようなものがあふれ出し、足元に固まった。そのもやが晴れると、そこにはゴブリンのゾンビが居た。傷跡などは倒されたときと同じだ。太の下でそのゾンビは苦しみ始める。

『死霊:(コントロール・)作(アンデッド)』 ≪戻れ、ゾンビ≫

ゾンビは再び黒いもやとなってニーナのに吸い込まれた。

“ゾンビが太の下では生きられないのを忘れていたよ。でも、まぁ大判った。丁度いい。ゴブリンの死のうち使えそうなのはこれで、回収しておこう。そうすれば、ここの集落を人間が発見しても、あまり警戒したりはしないだろう”

“ニーナ……”

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