《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》79 継続調査1
2020.9.21 マジックバック → マジックバッグ
2020.10.6 一等→1等
2020.10.8 二等→2等
調査にって3日たち、マートたちはすでに蠻族の居住地をいくつか見つけ、ライナス卿たちには報告を済ませていた。
今日もおそらく調査隊の騎士たちは、このヘイクス城塞都市に駐留している騎士たちと協力して討伐に向かっているはずだが、マートたちは、最初に言っていたとおり討伐は調査隊に任せ、居住地や通路の捜索作業を続けていた。
「アレクシア殿は料理が上手なのだな」
晝休憩、シェリーがアレクシアの作ったサンドイッチを頬張りながら言った。
「ああ、旨いよな。たぶん、ソースの加減が良いんだろうな」
マートもシェリーの言葉に頷いた。
「良い材料をマートさんが手してくださるおかげです。パンにしても、ベーコンにしても街では売ってなかったのに」
「マジックバッグがあるからな。3人なら贅沢しなければ1月分ぐらいは大丈夫だ」
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「うむ、おかげで荷は著替えぐらいで済んでいるしな。非常に助かっているぞ。洗濯もアレクシア殿がしてくれているので、普段より快適なぐらいだ」
「シェリーは、騎士爵なのだから、家に帰れば召使ぐらいはいるんだろう?」
「いや、騎士爵といっても私は2等騎士だから、領地があるわけでもないし、召使を雇うほど給金が貰えるわけでもない。花都ジョンソンの城近くで部屋を借りていて、そこから毎日城に出仕している。家には年に1度か2度帰るぐらいだな」
「なるほどな。ランス卿が仕えないかって言ってくれたんだが、やっぱり斷ってよかったな」
マートがそういうと、シェリーは怪訝そうな表を浮かべた。
「何を言ってるのだ。騎士といえば名譽な事だぞ。それも、マート殿であればすぐに1等騎士になって、どこかの村を領地にもらい、それを代々け継ぐことが出來るようになるだろう。素晴らしいことではないか。斷ってよかったというのは……」
「あ、いや、すまん。言い方が悪かった。俺はやっぱり自由が好きだからな。毎日出仕するとかはとても無理だ。ランス卿にもそう言って斷ったんだ」
マートはそういって、シェリーをなだめた。
「ふむ、そうか…。殘念だが、たしかにマート殿に騎士の暮らしは似合わぬかもしれぬな。私はこのシンプルな生き方が好きだし、それ以外では生きて行けないだろうがな」
「それにしては、討伐に加わらなくてよかったのか?あちらのほうが、功績を上げられると思うぜ?シェリーは暴れるのが好きなんじゃないのか?」
「ふふん、これはこれで良いのだ。第一、調査中に手ごわいのがでたら困るであろう?」
シェリーはにやにやとしてそう答えた。
そんな話をしながら、晝食を食べ終え、次のエリアに調査に向かおうと準備をしていると、數の蠻族がマートたちがいるあたりに近づいてきていた。
「たぶんオーガだ。4かな。こっちに向かってきてる」
「早速か。4なら大丈夫だろうがどうする?」
「ああ、潰しておこう。いつものようにシェリーが馬で突撃。俺とアレクシアが退路を斷つじで」
シェリーは自分の馬に飛び乗り、マートが指差した方向にゆっくりと馬を走らせ始める。マートは剣、アレクシアは弓を持ってその後ろを進み始めたが、オーガ達の姿が見え、マートが違和をじ取った。
「ちょっと待った、真ん中の2がでかい。普通のオーガじゃねぇ」
「なんだ…と?まさか、オーガナイト?」
オーガナイトというのは、オーガの進化であり、の大きいオーガよりさらに一回り大きい個のことだ。當然戦闘能力はオーガより上になる。3人は50mほどの距離を殘して立ち止まった。
「マート殿、どうする?」
「こっちを見てる。逃げるにしては、俺とアレクシアが徒歩だから厳しいか。シェリー、どう思う?」
「はは、こんなところでオーガナイトとはな。いや、騎士としては、なかなかが沸く狀況だ。私が囮になろう。その間に2人は逃げよ」
シェリーは決死の狀況だと考えているようだった。マートは頭を巡らせた。魔法のドアノブを使えば一時的に逃れられるかもしれないが、そのドアノブはここに殘る。オーガナイトがドアノブを見つければ結局同じことになってしまう。戦い好き(バトルホリック)なニーナなら、私が1とか言いそうだが、魔獣スキルは出來れば隠しておきたいところだし、そもそも俺はそんなギリギリな戦いは好きじゃない。シェリーなら1はいけるだろう。その間の足止めさえできればいいのだ。
マートは泉の霊(ナイアド)ウェイヴィの言葉を思い出した。
-霊魔法では、例えば、水を作ったり、水の上を歩く、水の中で呼吸するといったことね。あとは、寒さに耐えたり、氷を作ったりもできるけれど、それ以上は、あなたがどんな事を願うか次第
マートは、左腕の文様にれた。
“ウェイヴィ、氷で相手を閉じ込めたりはできるのか?”
“あれほど大きいと、全というのは難しいかな。腳や手を封じこめたりはできると思う。でも、力づくで、それを解いたりというのはあるかもしれない”
“頭は?”
“頭は普通抵抗されやすいものだけど...オーガナイトじゃなくオーガぐらいなら出來そうね”
“あともう一つ、氷をカギ爪替わりに使ったり、盾みたいに腕を護ったりできるか?”
“氷だけじゃなくて水も使うことになるけど、可能よ”
“いろいろ頼むぜ。ウェイヴィ”
左腕の文様から指を離したマートは、にやりと笑った。
「シェリー、そう悲観しなくても大丈夫だ。左のオーガナイトとオーガ2は俺とアレクシアで足止めする。その間に右のオーガナイトを何とかしてくれるか?」
シェリーはそう聞くと、一度大きく息を吸い、マートにあわせるようににっこりと笑った。
「ふふん、當たり前だ。1だけならなんとかして見せよう。出來るだけ早く片付けるから、その間、無理はするなよ」
シェリーの目はオーガナイトを見つめたままだ。
「わかった。アレクシアも良いな。まずは弓で牽制だ」
「はい」
シェリーは馬で、マートは徒歩のまま、オーガ達に向かって走り始めた。
【強化(ボディブースト)】
『防護(プロテクション)』
『氷の籠手(アイス ガントレット)』
マートは、スキルは発聲せずに、そして、魔法は二つとも発聲して使った。最初の防護呪文は神聖魔法。黃緑のが3人をうすく覆った。いつもはアニスが使ってくれるので、今回が初披になる。彼が使えるとは予想もしていなかったのか、シェリーとアレクシアは驚いた様子だった。そして、次の霊呪文で彼自の両腕は明のに覆われ、拳には氷の棘の様なものが生える。
「まだ、これからだ」
『氷結(アイス フリージング)』
マートの霊呪文にオーガナイトの右手が凍った。それとほぼ同時に2のオーガの足元にアレクシアの放った矢が突き刺さる。
オーガ2はたたらを踏み、一歩遅れた。オーガナイトたちとシェリー、マートが差する。
馬上のシェリーの槍が右側のオーガナイトに襲い掛かる。オーガナイトは左手に持った盾でそれをいなす。その衝撃にシェリーは馬上から飛ばされそうになったが、なんとか踏みとどまった。馬が嘶き、後足で立つ。その馬をオーガナイトは右手の剣で斬った。だが、凍った右手では致命傷にならず、馬はの辺りからを流しながら興して嘶を上げた。
左側のオーガナイトは、マートに剣で切りかかったが、同じように凍った右手では思うように攻撃できず、彼は左手の氷の籠手で簡単に跳ね返す。強化を行ったその衝撃を予想していなかったオーガナイトは勢を崩した。
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