《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》376 マートの懸念
コリーンがエバとアレクシアに付き添われて部屋を出て行こうとするところに、ワイアットがやってきた。どこから走ってきたのかかなり息を切らしている。
出ていく彼をちらりと橫目で見ながら、彼はマートの足元に跪く。
「救出ありがとうございました」
「ああ、とりあえず2人はなんとかな」
マートは彼に聞いた容についてワイアットに説明した。そして橫に魔法のドアノブを経由して行けるように設定したことを告げた。
「なるほど、それではジュディ様にお願いして転移門を開いて頂くことは可能になったのですね。では蠻族討伐隊全員に出準備を……」
「そいつはちょっと気が早すぎる。それも相手は巨人500だぞ。生半可な人數じゃねぇ。こっちにどれだけ被害が出るか考えて言ってるのかよ? まぁ、座りな」
マートは首を振るとワイアットに立ち上がって席に座るように勧めた。自分も一つ椅子をとると座る。
「とりあえず殘りの8人の捜索をしないといけねぇ。他は後回しだ」
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ワイアットは頷くと跪いた姿勢から一度立ち上がり、両足をそろえて椅子に座りなおした。
「第2次調査メンバーは既に待機しています。転移門をすぐに開いて頂くことは可能でしょうか?」
マートはジュディをちらりと見る。彼は頷いた。
「転移門は可能だ。あとコリーンが調べてきたの報があるからあとでアレクシアに説明してもらおう。だが、その連中は7人の捜索に絞ってくれ」
「7人? 8人ではないのですか?」
「ワイアット、アンソニーだが、俺は生きてる可能もあるんじゃねぇかと思うんだ」
「はい。あいつは悪運の強い奴です。高い建から落ちても死なずに助かったと子供の頃の話を聞いたことがあります。あいつもうまく助かって、そのまま蠻族に見つからないようにを隠したのかも……」
彼は自分にそう言い聞かせるように大きな聲でそう言って頷いた。
「いや、それなら良いんだが……。あくまで可能の問題だけどよ、蠻族に記憶奪取された可能もあるかと思ってな。もし落下して死んでたとしても、蘇生呪文をつかって無理やり生き返らせ、記憶を奪取するってことも考えられなくない。となると、蠻族討伐隊の拠點報や仲間同士の符丁、ほかに潛調査してる連中の報まで蠻族にバレてる可能があるんだ」
ワイアットは顔を強張らせた。
「お嬢も気になったからアンソニーは魔法の素質について訊ねてたんだろ? 蘇生呪文を使える蠻族がここにいる可能は高い。嵐の巨人(ストームジャイアント)だって一度蘇生してるからな。記憶奪取は呪魔法の中でも★5が必要な難易度の高い呪文だが、ここは蠻族の本拠地、居ないとは言い切れない」
ジュディは橫で軽く頷いた。
「はい、その通りです。それについては至急対策をとります」
「割れ目の底は比較的警備が緩い……コリーンの話ではそうだったが、罠の可能も當然否定できねぇ。まずは7人の捜索を頼む。アンソニーの調査については俺が」
ジュディとシェリーが驚いた聲を上げ、マートの方を見る。
「わかってる、無理はしねぇって。だが調査はさせてくれ」
2人は顔を見合わせた。そしてお互いの顔をじっと見て、なにか諦めた様子で首を軽く振る。
「貓(キャット)は人の命がかかってると思ったらどうせ引かないでしょ。わかったわ。毎日帰ってきて報告してきてね。それが條件」
ジュディはそう言った。シェリーもしぶしぶといった表だ。
「わかった。そうする」
「それと、これは試作品ですけど、もし使えるのなら……」
そう言うと、ジュディは何もない空中から小さな棒杖(ワンド)を取り出した。
「これは転移追跡(トレーステレポート)の魔道」
「おおお?!」
マートはおもわず聲を上げてそれをけ取った。
「鎧にサイズ調整ができるように魔法を組み込むのと同じ技を使っているの。もちろん魔法の矢を使う魔道も參考にしているわ。ただし、オプションとして指定できたのは対象だけなので、対象が移した先の座標についてはこの棒杖(ワンド)の先に1瞬浮かび上がるだけだから、それを見て覚えておいてもらう必要があるわ。有効距離は30m」
「すぐにその座標とやらは出るのか?」
マートは以前ジュディが使った時の事を思い出しながら言った。あのときはかなり長い間両手を上げていた気がしたのだ。
「座標から行き先を特定するアナライズに時間がかかるのよ、そこは私がアレンジして無理やり発させてるところだから……」
「なにかよくわからねぇが、わかった。とりあえずちょっと行ってくる。お嬢も一緒に來て転移門を開けるように転移先登録だけしといてくれよ」
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