暗闇の中、マートは巖場を丹念に調べていた。

地面にはところどころ黒い染みが殘っており、何か重たいものをずるずるとかしたような痕跡もある。コリーンが巖壁を下って割れ目の底にたどり著いたあたり、大量の痕を見たと言っていた場所である。

マートは何かを確信したように大きく頷いた。蠻族や、魔ではない人間の匂いをじ取ったのだ。そして彼は付近にあった足跡らしきものを追跡し始めた。その足跡は巨人のつくった巨大な建の付近までびている。それを見てマートはを噛んだ。巖に隠れて近づくにも限界がありこれ以上は見つかる可能が高い。その時、頭上をゴブリンメイジがすぅっと飛行して近づいてきた。慌てて巖に姿を隠し、息を殺してそいつが通り過ぎていくのを待った。

飛行しているゴブリンメイジ……マートははっと気が付いた。ゴブリンメイジが飛んでいるのは飛行呪文のはずだ。ということはゴブリンメイジなら魔法知に引っかかっても不審には思われないかもしれない。彼は魔法知呪文をつかい、ゴブリンメイジがそれに反応してって見えるのを確認した。大丈夫、問題なさそうだ。彼はさっそく変呪文で先程飛行していったばかりのゴブリンメイジに化けた。そのり合は飛行呪文をつかったゴブリンメイジとよく似ていた。彼は頷き、何食わぬ顔で飛行スキルで宙に浮かんだ。これなら他からみられてもただのゴブリンメイジが警戒飛行をしているとしか見えないだろう。彼は追跡を再開したのだった。

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「ウギャギャ、ギャギャウ……（腹減った、メシ足りない）」

「ギャウギャギャ、ギャギャ……（人間、味そうな匂い、食いたい）」

「ウウギャ、ウギャ……（イクトルソ様に叱られる、ダメ）」

ゴブリン同士のそういった會話が聞こえてきたのは追跡を初めておよそ３０分ほどした頃だった。人間の匂い……アンソニーだろうか？　その聲のした場所を中心に付近一帯を探した。そしてようやく半地下となった檻のようなものとその中に居る人間を見つけたのだった。

檻にれられた人間は３人、服は剝ぎ取られぼろ布をに巻き付けを寄せ合って寒さに震えていた。男２人に１人、同じ檻にれられていた。そのうち男１人の様子はおかしい。なにか子供のように寒い寒いとブツブツ言い、他の２人が懸命になだめている様子だった。

その様子がおかしい男は金髪碧眼で長は１ｍ９０㎝ほどだろうか。特徴からするとアンソニーと一致していた。檻の近くにはゴブリンが居て常に監視されている。強引に襲えば倒せない數ではないが、それをすると確実に蠻族たちは警戒態勢にってしまうだろう。行方不明は他に５人居る。すぐに助け出したい気持ちを抑えてマートゴブリンはその場から離れた。

ゴブリンメイジの姿のまま飛行してマートは一旦壁沿いの巖にまで戻った。周囲からみえないような窪みを探すと一旦変を解く。そして長距離通話用の魔道を取り出すとアレクシアと通話をつないだ。

「……というじのところに３人が捕まってるのを見つけた。３人の特徴は……」

マートが説明すると、向こう側ではほぉおおという大きな安堵のため息が聞こえた。別のすすり泣きのような聲も聞こえる。

「おい、大丈夫か？」

尋ねると、あわてて聲が返ってきた。

「いえ、申し訳ありません。大丈夫です。ありがとうございます。２人はおそらくあとから捜索に向かった２人組ですね。捜索隊にはその旨を連絡するようにします。３人の様子はどうですか？　急事態であれば３人の救出を、そうでなければ先に５人の捜索をしたいと思うのですが……」

アレクシアの聲はし震えているように聞こえた。顔見知りだったのかもしれない。

「わかった。寒さに震えているので気にはなるが、さきに他の５人の捜索を続けよう」

マートはそう言って通話を切ったのだった。