《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》380 霜の巨人
※火を使う描寫があります。ご注意ください。
マートが眠い目をりながら建の移ルートを再度確認して回っているうちに、夜明けが近づいてきた。本當は仮眠もとりたいが蠻族の拠點の中でさすがにそれをする度はない。どうやって騒ぎを起こすのか考えたが、やはり資を焼くのが一番だろう。本當は資を全部奪い取ればよいのかもしれないがそれほどの時間はとれない。そう判斷したマートは巨大な箱がたくさん並べられた部屋から、マジックバックにる分だけを確保した上でそこにネストルの開発した燃える水と土をれた壺を外からは見えないようにいくつか並べた。
これに火をつければ黒い煙を出しながらあっという間に燃え広がることになる。煙をあまり吸うとマートでも危険なので事前にフラターにお願いして新鮮な空気を呼吸できるようにお願いしておく。 1階で霜の巨人(フロストジャイアント)は見つけることができなかった。ということは2階か3階で寢ているのだろう。煙が上がってきたらさぞ慌てることだろう。
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“霜の巨人(フロストジャイアント)が下りてくる時を狙おうよ。不意を突ければ一発で首落とせるって……”
ニーナが唆してくる。階段はいくつかあるが主階段だと思われる箇所は1つ。霜の巨人(フロストジャイアント)はきっとそこを下りてくるだろう。だがマートは首を振った。そんなに簡単に倒せるのであれば毎回あれほど苦労していない。
“もぉーーー”
ニーナは焦れているようだが、マートとしては折れる気はなかった。そんな賭けに乗りたくはない。
“さすがに無理だろ。火をつけるぜ”
マートはそれぞれの壺の上に乗せた小さな蝋燭に順番に火をつけた。蝋燭が最後まで燃えると壺の中に火が移って発し、周囲に燃える水と土が飛び散ってあっという間に燃え広がる。壺はそういう仕組みになっていた。近くに居ると危ないのでマートはあわててその部屋を離れた。
しばらく待っていると、小さな発音が1つ、そして続けざまに発音が起こった。空気がびりびりと震える。そのうちに黒い煙が建の中に流れてきた。あっという間に天井近くは黒い煙で覆われた。上の方で巨人族が咳き込み、ぶ聲が聞こえてきた。
“主階段に行こうよ。様子を見るだけ……”
マートはニーナに急かされて主階段が見える位置にまで移した。階段を山の巨人(マウントジャイアント)や海の巨人(シージャイアント)、丘巨人(ヒルジャイアント)が口々にびながら駆けおりてきた。
「ギャヒヒヒ、ギャヒ……(いったい何が起こった? 敵か?)」
「ギャギャヒー、ギャーヒ……(ここは火の聖殿だぞ。ここで騒ぎが起きるとは)」
連中は口々にそう言っているが、霜の巨人(フロストジャイアント)の姿は一向に現れない。
「ヒギャ、ギャヒヒヒ……(イクソルト様に連絡を)」
「ヒー、ギャギャーヒ……(ダメだ。通信板も転移も止されてる)」
そうか、霜の巨人(フロストジャイアント)は今はここには居ないのか。通信板というのはなんだ?
“アマンダに預けてる長距離通信用の魔道ではないかのう。たしか蠻族が使ってたじゃろ”
魔剣がそう言って來た。そうかもしれない。
「ギャヒヒギャ……(そんな事を言っている場合ではない。この隙に襲撃されてこの聖殿が敵の手に落ちたらどうするのだダメだ。通信板はどこだ)」
「ギャヒーギャギャギャン……(通信板は人間どもが覗き見しているからと回収された)」
「ギャヒヒヒッ、ギャヒ……(では転移だ。こっちに居て転移ができるのは、タヒルトだけか)」
「ヒンギャ、ギャヒ……(魔法が使えるのは皆向こうだ。タヒルト、跳べ。跳んで異変を知らせよ)」
“なんだ、ここに居る巨人族はみんな魔法が使えないんだ。転移呪文を唱え始めてたらそいつを倒して、あとは皆殺しにしようよ。そうすりゃ救援もこないだろうし、魔法使えない普通の巨人が500ってだけだったら、ゾンビのレッサードラゴン出して混させりゃぁイケるよ。ここ巨人族どもを皆殺しにすれば、大打撃じゃないの?”
ニーナの過激な意見にマートは首を振る。それに乗る気はないらしい。
巨人族が一人進み出る。転移の呪文を詠唱し始めた。マートは周囲を見回した。そのタヒルトという名の巨人の出來るだけ近くにまで移し始める。
“何をしてるの? もう転移しちゃうよ”
マートはその階段の踴り場のすぐ橫。転移を唱えている巨人のすぐ傍にまでやってきた。ぶつぶつという詠唱が聞こえる。黒煙が階段を煙突替わりに這いあがっていく。多くの巨人が咳き込んでいた。そしてタヒルトと呼ばれる巨人が転移して去っていった。
“あーあ……”
ニーナのつぶやきを聞きながら、マートはマジックバッグから取り出した小さな棒杖(ワンド)を振った。
『転移追跡(トレーステレポート)』
小さな數字と文字の羅列がな棒杖(ワンド)の先に浮いた。
“やった、これが霜の巨人(フロストジャイアント)が悪だくみをしてる場所の座標だ。これさえ手にれば良いだろ。見つからねぇうちにさっさと帰るぞ”
“ねぇ、それって……?”
“この座標の場所に襲撃をかける。うまくいきゃぁ、嵐の巨人(ストームジャイアント)のときみたいに油斷したところを突けるぜ。30メートルなんてとても近づけねぇと思ってたがうまくいった。これで、決著をつけてやる”
“やったーっ”
マートはそのまま巨人たちには姿を見せぬまま、黒煙に紛れて建から逃れ出、そのまま魔法のドアノブを使ってローレライ城に戻ったのだった。
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