お待たせいたしました。

ツイッターでの予告ではタイトルを『第52話 謎の島』としていましたが、『第52話 謎の陸地』と変えました。ご了解ください。

魔空が快晴の空を飛んでいた。そのはそろそろ夏をじさせる抜けるような青だ。

その下には海が広がっていた。點々と島が浮かんでいる。ずんぐりとした銀の機の上部前方にある縦席には鱗(スネーク)が座っていた。

大きな窓のある部分には左右の窓際にゆったりめの一人掛けの席が進行方向にむかって８列が並んでいた。左側の席には前からマート、ジュディ、モーゼル、右側の席にはネストル、シェリーが座っていた。皆のんびりと景を眺めている様子であったが、ジュディは時折呪文を唱え、ネストルは時折何かを羊皮紙にメモをしている。

やがて島と呼ぶにはかなり広い陸地がみえてきた。高い所から何度か旋回するとようやくその陸地の形が見えてきた。おそらくアレクサンダー伯爵領ぐらいはありそうである。嵐の巨人(ストームジャイアント)を倒した巨大な島、最近は中央にある大きな山の火口には巨大な湖があることから火山湖島と呼ぶようになったあの島よりさらに広い。橫長にしたひし形を南北に２つ並べたような形で２つの山脈がすこし傾いて南北にびていた。

「転移追跡(トレーステレポート)の呪文が指した座標にだいぶ近づいてきたわ。この陸地の北の方かしらね」

ジュディはマートの席の背もたれを摑んで立ち上がった。かなり早口でかなり興している様子だ。

「この広さからすると捜索にはかなり時間がかかりそうですね。ある程度は魔空から目星をつけたいところです」

ネストルは山脈の形を羊皮紙に描きいれながらそう答える。

「得意の叡智スキルでぱぱっとわからねぇのかよ？」

鼻歌じりに縦していた鱗(スネーク)が縦席から大きな聲を出した。

「もちろん試してみました。殘念ながら今の狀態では報がなすぎてあまり的な報が得られなかったのですよ。なにか巨大で窓のない跡かなにかの中に居ることはわかりましたが、どこなのかはまだはっきりしていません。もうし報を集めて條件を絞らないといけません」

モーゼルは左右の窓を行ったり來たりしながら景を眺めている。

「霜の巨人(フロストジャイアント)が居るってことは蠻族は住んでるんだよね。人間は居ないのかな？」

「居るのが普通だと思います。獅子頭島からここまで、點々と島々が連なっていました。それほど近いわけではありませんが、天気の良い日に高いところに登ればお互いの島影は見えたでしょう。お互い流があるのが自然でしょう」

彼の問いにネストルが答えた。獅子頭島というのは南西にありリザードマンと現地の島民とが戦っていた島のことだ。南西の島と呼ばれていたのだが、名前がないと不便だというので島の形がその大きく口を開けた獅子のあたまに見えることからマートがそう名付けたのだった。

「どうであろうな。蠻族と人間が両方居たとしても相手には霜の巨人(フロストジャイアント)が居たということであろう。人間側としてはかなり不利な戦いではないか？　マート殿のような英雄が居ればまた話は別だが、同じような英雄が他に居るとは思えぬ」

そこまで言ってシェリーはじっと島を眺めた。一目で島全の姿がはっきりと見える。

「東側の短い方の山脈の尾に沿って、何かあるな。北の方だ。銀で丸いのが點々と……」

マートが指さした。皆が魔空の明な窓に顔をつける様なじでその指さす方をじっと見る。

「普通の巖じゃないの？　あ、いまった。遠くてよくわからないけど、ほんと、何かありそう」

魔空は徐々に高度を下げそちらの方に近づいていった。皆片側の窓に集まってじっとその方向を見る。マートが指さしたそれは大小様々な大きさの球だった。直徑５００メートルほどのものから直徑２０メートルほどのものまで、いずれも表面は銀で鏡のようにっている。そのようなものが尾に沿って３０キロ程の長さに渡って點々と數えきれないほど並んでいるのだ。まだ距離は遠いので玩のようだ。

「座標からすると、タヒルトって巨人が転移したのはあの球のある尾のあたりね」

「ということはあまり近づくのは危険だな。鱗(スネーク)、あそこは遠回りするようにして島全を先に見よう。さらに高度を下げて海岸線に沿って移してくれ」

ジュディの説明にマートは慌てた様子でそう指示を出した。魔空はふわりと方向を変える。そしてさらに海岸線に沿って飛行を続けた。１００キロほど南下したころだろうかシェリーが何かに気が付いた様子で島の東側のほぼ真ん中、灣になっているあたりを指さした。

「あれは集落ではないか？」

皆が揃って窓にり付くようにしてそれを見た。海岸沿いに末な小屋のようにみえるものがいくつか並んでいた。人間のものか蠻族のものかははっきりしない。

「鱗(スネーク)、あまり近づくなよ」

「ああ、わかってる」

魔空はすこし海側に進路を変えた。

「どうする？　集落があるのならそっちで報収集したほうが早いのかしら？」

ジュディはマートに尋ねた。彼はし考え込んだ。

「あの集落が霜の巨人(フロストジャイアント)の息がかかってねぇとも限らねぇ。慎重にいかねぇとだめだ。２手にわかれて、ひとまずあの集落に何が居るかは俺だけで探らせてくれねぇか？　殘りはこのまま空からの調査を継続するってのはどうだ」

ジュディとシェリー、モーゼルの３人は顔を見合わせる。しばらく考えた後、ジュディが口を開いた。

「わかったわ。でも念のためにマートは連絡要員としてモーゼルを連れて行ってくれない？　集落の外まででいいの。本當は私かシェリーが行きたいところだけど、私たちだと離れたところで隠れてても何かに見つかって騒ぎになる可能があるでしょ。その點、彼なら変形スキルで巖や木などに姿を変えて姿を隠すこともできるし、魔法も使える。マートと彼が念話で繋がってれば私たちも安心できるでしょ」

「俺が集落に近づく間、モーゼルを１人で居させるのは不安なんだがなぁ……。まぁ念話がつながるから狀況はわかるか……」

マートは複雑な顔をしてジュディの顔を見たが、しぶしぶといった様子でうなづいた。

「モーゼル、よろしく頼むわね。貓(キャット)が危険なことをしそうになったら止めてあげてね」

「わかりましたー。任せてください」

モーゼルはにっこりと微笑む。

「安全そうな場所を探して貓(キャット)たちを降ろしましょう。できれば転移門を開けそうな場所も確認しておきたいわ」

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