《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》388 跡調査
「くほっ……やった、でも、きっつ」
カウンターとしてまともにけた當たりのダメージが大きかったのか、ニーナはその場に座り込んだ。
「大丈夫か? 癒しの水を飲んどくか? それか治癒?」
「ううん、それ、どっちも僕には効かないみたいなんだよね。食べたり飲んだりはできるのにさ……。でも往還してもらってしばらくしたら回復するだろうから大丈夫だよ」
「そういえば、そうだったな」
そうやって話をしているとモーゼルがニーナに抱き著いた。
「マートもニーナもありがとー。ニーナ、ひさしぶりー」
「頑張ってるみたいだね、モーゼル」
「直接會えるのは久しぶりね、私、嬉しいっ」
顔をこすりつけるようにしているモーゼルの頭をニーナはすこし微笑みを浮かべながらでた。モーゼルの変形スキルの使い道などを教え指導したのはニーナだった。ニーナもマートの中でモーゼルを見ているはずではあるが、直接會うのはじが違うのだろう。再會を喜ぶ2人を置いてマートは部屋の中にあるものを見て回った。一番目立つのは羊皮紙を綴じたものだ。大量に部屋の端に積み上げられている。書かれている文字は彼には読めないピール王國の古代文字だった。
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“魔剣よ、何が書いてあるんだ?”
“魔道同士の通信……とかなんか、儂にもよくわからんな。なにか研究資料ではないか?”
“ふぅん、じゃぁ羊皮紙は全部、研究室に運び込んでバーナードとローラに調べてもらうか”
マートは他にめぼしいが何かないかを調べ始めた。しばらくしてモーゼルも手伝い始め、ニーナはダメージが辛そうなので往還しておく。
割れてしまっているガラスのケースといったガラクタに混じって、鎧の兜程の大きさの銀の球、おそらく素材と思われる金や銀の他にマートにはよくわからない金屬のインゴットや細く針金狀になったもの他、研究室にもあったような魔道をつくるためのパーツ、筆記用のインクの要らない魔道が大量にあった。また、それとは別に壁に埋め込まれた魔道がある。バーナードたちの居る研究室にあった青くるパネルに似たものだ。それがいくつか並んでいた。
「金屬のインゴットやパーツは後で調べるとして、パネルとこの銀の球は気になるな。それと守護(ガーディアン)ゴーレムはまたきだしたりしねぇのかも、どうなんだろうな」
マートがモーゼルとそんなことを話していると、魔剣が念話を送ってきた。
“どこかに守護(ガーディアン)ゴーレムを制するためのパネルがあるはずじゃ。可能が高いとすればその壁のパネルじゃが……そうじゃな、マートれてみよ、慎重にだぞ”
マートがれると、そのパネルも青白くった。いくつかのの枠に分けられ、その中にピール王國の古代文字が浮かんでいる。
“照明、空調、施錠、報、警備……、警備かの、その赤い枠のところをれて見よ”
その後もマートは魔剣に言われるがままにいくつかの作をおこなった。途中パネルの一點をみつめよ、喋りかけてみよなど、マートにとってはよくわからないものもあった。
“これは何の作だったんだ?”
“マートの顔と聲を憶えさせていたのじゃよ。これで、問題ないはずじゃが……ああ今の言語では命令は無理か”
パネルの赤い枠が何度か點燈したあと、また何か文字が出た。だが、すぐに別の文字も浮かんできた。
“エネルギーが足らぬようじゃ。魔石をパネルにれさせてみてくれぬか”
マートはマジックバッグから魔石を取り出してパネルにれさせた。魔力を吸収したのかすっと魔石は黒い砂にかわり、さらさらと床に落ちた。だが、まだ最後に浮かんだ文字は消えない。
“一つでは足りぬようじゃ。幾つ必要かわからぬがどうする? うまく行けばこの部屋の中の空調や照明などと共に警備裝置である守護(ガーディアン)ゴーレムもかすことが出來るようになる。逆に魔石を補充しなければ、すぐではなかろうが、そのうちにこの建自の強化が弱まって壊れるやもしれぬ”
マートはし考えたがマジックバッグから魔石をいくつか取り出した。
“貴重だが研究室で作れるからな。ここは出し惜しみをするところじゃないだろ”
順番にパネルにれさせていく。15個ぐらいまで魔石が砂にかわったところで、最後に浮かんだ文字が消えた。
“よし、問題ないようじゃ。マート、守護者よ(Custos)、再起せよ(Reboot)と言ってみよ”
「守護者よ(Custos)、再起せよ(Reboot)」
守護(ガーディアン)ゴーレムは一度カクンとなって、その後スムーズにき出した。マートの前に立ち、直立不の姿勢をとる。
“では、次にニーナたちに攻撃せぬように設定するぞ。|彼たち2人は私の友人だ《Duo ex eis sunt amici mei》保護せよ(Tuere)”
マートは言われるがままにゴーレムに様々な命令を伝えた。そのたびにゴーレムは了解(intelligo)と反応した。これでおそらく問題なさそうだ。
“ゴーレムはこの部屋から連れ出せるのか?”
“いや、ここの部屋のどこかから魔力の供給をけているはずじゃからの、部屋を出たらどれぐらい活できるか……”
“普通の魔道みてぇに魔石で直接補給できねぇのかよ”
“出來ぬはずじゃ。どこかに説明書のようなものがあると思うがの”
マートは羊皮紙の山を見て首を振った。あの中に埋もれているとするとかなり時間はかかりそうだ。
“それは後で調べてもらうことにしよう。この部屋があの山の尾に有った跡の一部だとして、なんのための跡なのか調べてもらうことが優先だ。この位置を確認するのと、あとはこのゴーレムがもう大丈夫というのなら、魔法のドアノブでつないで連中に來てもらうか”
“うむ、そうじゃの。じゃが、來客の設定を外してからかのう”
マートは魔剣に手伝ってもらって再びパネルを作してから、魔法のドアノブで研究所を呼び出したのだった。
「おう、がんばってるなー」
マートとモーゼルがバーナードをはじめ研究所の面々が作業している部屋にっていくと、彼等は一斉に顔を上げた。
「新しい跡が見つかったんだ。資料がたんまり殘ってる。ちょっと調べてしいんだが……」
「なんですと! わかりました」
マートの言葉に皆一斉に今やっている作業を手早く片付けると立ち上がる。何人かはもうすでに作業をしていた部屋の出口に向かおうとしていた。
「ちょっと待て、危険もあるから注意だけさせてくれ」
マートは早口で跡についての説明やゴーレムについて説明した。バーナードやローラを筆頭にみんな目を輝かせ、を乗り出して聞いている。
「おおお、なんと、ピール王國の資料が大量に……。それも作パネルも生きて……、ゴーレムですか……」
皆、興して早口だ。バーナードも口ひげをつまんで、せかせかと引っ張っている。
「蠻族の支配下に近いところだし、深海の底にあるものかもしれないので、転移や出り口の開閉についてはくれぐれも気をつけてくれ。じゃぁ調査を頼む」
最後にマートが注意事項をつけ足すとみな大きく頷き、走り出した。
「マート、皆興しすぎてる」
マートとモーゼルは顔を合わせて苦笑し、彼等の後をゆっくりと歩いて跡に戻ったのだった。
読んで頂いてありがとうございます。
ゴーレムへの命令はそれらしくと思ってラテン語を使っていますが、全く自信がありません。申し訳ありませんが、もし間違っていたら教えてください。
誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。
いいね、評価ポイント、想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。
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