《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》393 亀石
「貓(キャット)、もうちょっとしたら夜が明けるわ。起きて」
寢ているマートの耳元でささやき、聲をかけたのはジュディだった。
「んんっ、もうし……」
「だめだ、マート殿、みんなで待つことにしようといったのはそなたではないか」
マートがゆっくりと目を開けると、すぐそばにいたのはジュディとシェリーの2人だった。亀石の左足のところに矢を挿したのは一昨日の晝間、昨日の明け方には誰も姿は現さなかったが、地図作を継続して行った後、夕方に確認した時に矢はなくなっていた。つまり今日の朝にはピピンという名の老人が姿を現す可能は高いということだった。
「わかった、わかった。今起きる……。しかし、これ、地味に辛れぇ……」
マートはゆっくりとを起こした。ここはローレライ城の一室、時間はまだ夜中の1時過ぎといったところか。転移門が使えることを生かして、危険を伴う可能のある夜営は行わずにローレライ城を拠點として朝にオーラフ島の西の森に出かけ、夜には帰るというやり方にしたのだ。問題は時差が約4時間ということで、オーラフ島で日が沈んでローレライ城に戻った時にはまだ夕方とも言えない時間、そしてオーラフ島で夜明け前というのはローレライ城ではまだ深夜であるということだった。
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「本當に調がおかしくなりそうね。しぐらい危険でも向こうで夜営をしたほうが良いんじゃないかしら」
「そうかもしれません」
ジュディとシェリーが頷きあっていた。3人が支度を整えて城の中庭まで降りてくると、そこには警備の衛兵の他に、アレクシア、エリオット、モーゼル、そしてアンソニーのチーム3人が既に待っていた。モーゼルは明らかにまだ寢足りなさそうな様子でふらふらしている。
「マート様、大丈夫ですか? 亀石のほうは別の者に行かせますか?」
アレクシアはかなり心配そうだ。
「いやぁ、なかなか寢れなくてな。でも、地図も昨日はかなり進んだから今日で完するだろう。ピピンとかいうのから良い報が得られたらいいんだがなぁ。どっちにしてもあと1日、なんとかなるさ」
マートの言葉にジュディも頷いた。
「西の森の地図は8割方出來上がったわ。見回った範囲に隠れた集落は見つからなかった。モンティが言ってた森に逃げ込んだ連中ってのもピピン以外にはみんな遭遇して話もできたけど、話はモンティと同じような狀況でパーカーという領主の集落を知っている者は誰もいない。……ピピンから何の手がかりもなかったらパーカーって領主は実在しない、追い詰められた人々の作り上げたただの空想って可能が極めて高くなる。そうよね」
「ああ、とはいえまだ2割は地図ができていない。可能はゼロじゃないさ。とりあえず亀石に向かうぞ。モーゼルも起きろよー」
「うんー」
モーゼルは目をつぶったまま頷いた。コリーンが苦笑いを浮かべてモーゼルのをった。彼はすこしだけ目を開けて何度も頷いている。
「では、転移門をひらくぞ」
エリオットがそう言って呪文を唱え始めた。ジュディが唱えないのは、彼が唱えて移した場合、急事態があっても30分は再詠唱時間(リキャストタイム)の制限があって戻れなくなってしまうからだ。長い詠唱を終え、エリオットが手をばした先の空間の景が歪み始めた。裂け目のようなものができ、そこからすこし明るくなり始めた森の中の景が見える。
「じゃぁ、行ってくる。アレクシア、留守は頼むな」
ローレライ城の中庭からオーラフ島の西の森へつながる転移門をマート、シェリー、ジュディ、モーゼル、アンソニー、ブレンダ、コリーンの7人は次々と潛り抜けていった。
オーラフ島は夜明け前、既に空が白みかけている。
「ん? 亀石のところにすでに誰か來てるな。それも5人だ」
1キロ程は離れているものの、マートにはすでに何かの気配がじ取れたらしい。コリーンも一瞬止まったが、軽く頷いている。
「そうですね。確かにその通りです」
マートたち一行は亀石のあるところまで、足を速める。
亀石のところで待っていたのは、年配の男が2人、そして若い男が2人、若いが1人だった。老人の姿はなかった。
「やぁ、おはよう。待たせたか?」
マートは特に警戒した様子を見せずに聲をかけた。若い男が一歩出る。
「ぞちらばローレライ侯爵よりの使者どお見げずる。われらばパーカー家に仕える者。話をざぜでいだだぎだい」
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