パーカー家には先祖代々継承してきた正不明の金屬の箱というのがあった。異変があった時のためにという言い伝えがありつつも開け方のわからないものだった。マートは臣従の申し出のあった直後にリディアからその箱を見せてもらったのだが、その箱にはピール王國の古代文字で単純に保守責任者　パーカー家の証とかいてあり、パーカー家のを引くリディアのみが可能な特別な開け方もきちんと書いてあった。箱は伝わっていたが、古代の言葉は徐々に廃れて當時庶民の言葉であった現代の言葉にれ替わってしまい、その説明が読めなくなっていただけだったのだ。ピール王國の文字が読める魔剣に説明をうけ、リディアはその中にっている分証と書かれたタグを手にれていたのだ。

「分証でずが？」

アマンダに並んで前に出ようとしていたリディアが首にかけるチェーンに通したそのタグを手に取った。

「ああ、守護(ガーディアン)ゴーレムならそのタグを持つ者が命令できるはずだ。なんせ保守責任者だからな」

「なにど命令を？」

“『Subitis subsisto auctoritas ordinis sustentationem（保守権限者命令　急停止）』と伝えてみよ”

魔剣から伝わった言葉をマートは大聲でリディアに伝える。その聲が聞こえたのか霜の巨人(フロストジャイアント)が愕然とした顔をしていた。

「ギャヒヒヒッ、ギャヒ！……（保守権限者だと？　まさか、その言葉遣いはこの島の……？　そうか、そなたはパーカー家の生き殘りということか、この島の元領主は元々はこの跡の保守権限を持っていたというのかっ）」

「Subitis subsisto auctoritas ordinis sustentationem ！！」

リディアは早口でタグを掲げてマートの言われた通りにぶ。途端に守護(ガーディアン)ゴーレムが作を止めた。自らの周囲に現れた守護(ガーディアン)ゴーレムと戦い始めていた騎士や従士、蠻族討伐隊の戦士たちは戸いながら周囲をきょろきょろと見まわした。

“『Redi ad hangar（格納庫に帰還せよ）』じゃ”

魔剣の念話を伝えたマートの言葉をリディアはそのまま同じようにぶ。守護(ガーディアン)ゴーレムは次々と姿を消し始めた。

「Subitis occurrit. Subeuntes eliminate！（急事態発生。侵者を排除せよ！）　Subitis occurrit. Subeuntes eliminate！（急事態発生。侵者を排除せよ！）」

霜の巨人(フロストジャイアント)が何度もぶが何の反応も起きない。

「よし、霜の巨人(フロストジャイアント)の策はつぶれたぞ。一気に行けっ」

マートがぶ。それとほぼ同時に、騎士団と蠻族討伐隊を引き連れたシェリーが馬にり、目の前の丘巨人(ヒルジャイアント)たちを剣で切り伏せながら霜の巨人(フロストジャイアント)の背後に現れた。

「聖剣の騎士　シェリー推參っ　霜の巨人(フロストジャイアント)よ。そなたの命運は盡きた。覚悟せよ！」

霜の巨人(フロストジャイアント)は周囲を見回した。アマンダたちに対抗するように手許に率いていた海の巨人(シージャイアント)と山の巨人(マウントジャイアント)は前線に投したばかりで、手許には丘巨人(ヒルジャイアント)とゴブリンしか殘っていない。

霜の巨人(フロストジャイアント)はくるりと回転し、背後に迫るシェリーの一団に目を向けた。くわっと目を見開く。

「ギャヒヒヒッ、ギャヒ、ギャヒー……（儂が相手をしてやろう。小めっ）」

霜の巨人(フロストジャイアント)はそう言って脇に立てかけてあった巨大な槍を手に取った。そしてそのままシェリーたちの一団に向かって走り出した。

「やったじゃないか、リディア。さっさと海の巨人(シージャイアント)や山の巨人(マウントジャイアント)を片付けるよ。皆も手を貸しとくれ」

アマンダが大聲でぶ。混狀態に陥っていた蠻族討伐隊、騎士団も落ち著きを取り戻す。そしてアマンダとリディアを先頭に海の巨人(シージャイアント)と山の巨人(マウントジャイアント)を迎え撃つ陣形を組んだ。

ガツンッ

先頭を走っていた海の巨人(シージャイアント)のこん棒がアマンダの矛と錯する。長差は倍以上だが、アマンダは力では負けていない。ギリギリと力比べとなった。

その橫でリディアが盾を放り出して剣を両手で肩に擔ぐようにして持つ。そのまま真っすぐに山の巨人(マウントジャイアント)に向けて走った。

「ぶらぁーーーーーーーー」

大きな聲を上げながら彼は地面を蹴って飛び上がった。普通の人間では考えられない高さだ。山の巨人(マウントジャイアント)の顔とほぼ同じところまでいく。

「どっぜいっ」

＜破剣＞ 直剣闘技 --- 裝甲無効技

彼は大きくび、をひねって一瞬エビぞりになる。そして反をつけて巨人の肩口から大きく下まで斬り下ろした。山の巨人(マウントジャイアント)は手に持ったこん棒で防ごうとしたが、リディアの剣はそれでは止まらない。

「ギャヒー！！」

しぶきを上げて巨はそのまま後ろに倒れ込んだ。

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